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NJさんの『“財政均衡”の重要性』( http://www.asyura2.com/0505/dispute21/msg/821.html )へのレスの続きです。
「経済力が衰退した将来の日本の姿」とは、新自由主義と市場競争原理に基づく「構造改革」路線がこのまま進んだときに想定できるもので、そのような事態に陥ることは合理的な政策で阻止することができます。
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【NJさん】
「もう一つ、郵貯が民営化されれば、ハゲタカが郵政を乗っ取る、というのは、郵貯資金で外国債を購入すること、ではなく、資金と別の、株式を上場したら、買い占められる、ということですよね?民営化すると、株を発行するんですか。銀行も、株式会社なんですか。何十兆円も持ってるのに、株式を売り出して資金を募集しなきゃいけないんですか。自己資本と預かり金は別ですか。株を上場しなきゃいい、というもんでもないんですか。」
[あっしら]
内閣が提出した法案の郵政民営化は、4分社化であるとしても、郵政の純資産を株式化することで行われます。
そして、郵政金融事業の2社はその株式が全部売却されることになっています。
株式会社にしたとしても、政府が株式の過半数を保有していれば“国有会社”ですから、郵政民営化でいろいろ言われている問題は防止できます。
民営化した郵政関連会社の株式を売却する目的は、建前なら、歳入を増やすことです。
しかし、売却金額が20兆円だとしても、郵政金融事業が毎年上げる利益が2兆円ならたった10年分でしかありません。
金の卵を生む鶏を金の卵10個分で売る選択と、鶏は持ち続けて金の卵を50個、100個と生ませる選択のどちらが得なのかということになります。
今後生む金の卵が10個以内であれば鶏は売ったほうが得と言えますが、11個以上生む見通しがあるのなら、鶏を持ち続けるほうが得です。
郵政金融事業を鶏だと考えるのなら、政府が持ち続けるほうが得です。
【NJさん】
「弱い企業は倒産しながらも、全体としては、貿易収支の上で、黒字を続けて来れた、ということを指しているのでしょうか。
何でも聞いてしまうのは、申し訳ないので、勉強してから、と思ったんですが、(一応これを読んできました。http://www.ryukoku.net/tmmazu/2005soturon/sakamoto.html)貿易収支と国際経常収支の違いがわかりません。物の移動による国際収支と、資本の移動を含む国際収支の違いですか?」
[あっしら]
国民経済にとってもっとも重要な国際収支の指標は、外からの貨幣的富の獲得や国内向け供給量の減少(利益増大とインフレ要因)を意味する「輸出」です。
貿易収支が黒字かどうかより、国民経済の好不況にダイレクトに影響する輸出の増減が重要だと考えています。
輸出の増加は、そのための供給活動に従事する人の増加ないしその供給活動に従事する人たちの給与アップ条件(原資の確保)につながります。
輸出の減少は、その逆に作用します。
この間の日本経済の変動は、基本的に、輸出の増減と財政投融資を含む財政支出の増減に影響されています。
それらの変動が家計の可処分所得や設備投資(民間固定資本形成)にも影響を与え、GDP全体の値を動かしているわけです。
輸出の減少と財政支出の減少が同時に起きると深刻な不況に陥り、両方が増加すればまあまあという状況になるというのがこの間の「デフレ不況」におけるの日本経済の特徴です。
(消費税アップや低中所得者増税は、マイナスの財政支出(歳入)という意味で財政支出の減少と考えることもできます)
輸入については、原材料であればそのある部分は輸出されるモノの生産にも使われるし、国内で魅力的なモノが供給されていない場合に所得に余裕がある家計の消費を促進する効果もあります。(輸入財の取り引きでも主に人件費の元となる付加価値が生み出されます。輸入価格よりも高い価格で売られていることがそれを意味します)
膨大な貿易収支黒字を計上するよりわずかな黒字水準にあるほうが、国内でお金が回るし、輸出の増加にも貢献します。
※ 国際収支について簡単な説明
資本元本の移動は国際資本収支で捉えられ、日本は基本的に赤字傾向にあります。
(ここ数年は、日本政府の“対米貢納”35兆円によるものだと思っていますが、資本収支も黒字です。これが緩やかな株高状況の動因です)
貿易収支:モノだけではなく、輸送やサービスも含む国際取り引きを計算したものです。
経常収支:貿易収支に加え、国際投資(資本移動)に伴って発生する所得(利息や配当:受け取りと支払い)の収支を考慮したものです。政府間の移転収支も含まれますが額はそれほど大きくありません。
経常収支は「貿易収支+所得収支」で構成されます。
所得収支プラス(果実受け取り)の元は、投資先国民経済の活動成果ですから、法人税や金融課税には影響しても、多数派勤労者の可処分所得の増加にはほとんど影響を与えません。
所得収支マイナス(果実支払い)の元は日本経済の活動成果ですから、所得収支の赤字は多数派勤労者の可処分所得増加を抑制する作用があります。
(貿易収支の黒字は国際決済資金の確保という点で重要ですが、その点であれば、経常収支レベルのほうがより意味があります。資本収支の黒字も国際決済資金の確保につながりますが、利息や配当の流出を伴うので安定性に欠けます)
【NJさん】
「デフレが国債償還を難しくしている。本来(?)想定されていたインフレが維持できていたなら今ごろかなり圧縮されていたはずの財投債や国債の政府債務残高が拡大する一方、しかもこの数年の支出額は、強いと言われている日本経済を病気にしかねないほどで、早く財政支出でない方法で経済が動き出さないと、来るべき供給力不足に陥ったとき、依然この財政支出をしなくてはお金が動かない、という状態では、これが元のインフレを起こす。年金給付のために赤字国債を増発する、とさらにインフレが強まる、という悪循環に陥り、遂には、外貨立て国債、国内に利益が落ちてこない状態での輸出(?)をしなければならなくなる。猶予は、近隣国家への多国籍企業他、多くの製造拠点転出による国内生産業の空洞化のスピード、就業人口の減少を見ると、あと数年だ、ということですか。」
[あっしら]
3%のインフレが10年間続けば、物価水準は1.34倍となり、名目GDPも基本的に1.34倍を超えます。
04年度の名目GDPは500兆円程度ですが、94年から3%のインフレが続いていれば、実質は同じでも700兆円近くの名目GDPになっていたはずです。
700兆円の名目GDPなら、税収は63兆円から70兆円になります。(税収は名目GDPの9%から10%というのが基本傾向)
(物価・GDP・賃金・税収がすべて1.34倍になるとイメージすればわかりやすい)
物価水準が1.34倍になるということは、10年前の債務が実質では74%の負担になり返済が楽になることを意味します。
また、名目金利が1.5%でもデフレが2%ですと実質金利は3.5%になりますが、インフレが3%ですと名目金利が4%であっても実質金利は1%です。
将来の供給力不足の問題ですが、政府債務残高そのものはあまり気にすることはないと考えています。
財政問題の基本は、政府債務残高ではなく、その時々のGDP(フロー)と財政の整合性です。
(これまでの書き込みでご理解いただけると思っていますが、過去の債務は終わったことなのです)
供給活動で支払われたお金(賃金)が200兆円で税収が25兆円なのに、社会保障関連の支出が増え財政支出全体が100兆円(赤字財政支出が75兆円)という状況を考えていただければと思います。
(人口に占める定年退職者や失業者(未就業者)の割合が高い社会です)
そして、供給活動から得られる所得と税収は変わらないのに、赤字財政支出が年々増える高齢者のために5%ずつ増えていけばインフレにつながります。
問題なのは、インフレが続くと社会保障関連の財政支出が5%では済まず、同じ生活水準を保証しようとするとインフレ分をさらに上乗せして赤字財政支出をしなければならないことです。
インフレだからそれを補填するために社会保障費を増額すると、それがインフレに拍車をかけ、さらに社会保障費の増額・・・という悪循環に入ります。
当然、物価変動は勤労者の生活にも影響を与えるので、同じ生活水準を保つだけの目的でも賃金の引上げが行われます。これが、さらにインフレに拍車をかけます。
供給力が増加していないのに社会保障関連の支出増加で総需要金額が増えれば、抑えが利かないインフレに向かっていくことになります。
(これは政治と直結するテーマなので、インフレを抑制するために赤字財政支出を縮小するという政策は採りづらい)
【NJさん】
「この巨額財政支出依存のまま、来るべき国内供給力が国内需要より落ち込む時を迎えた場合、ハイパーインフレを呼び、円安から、さらに外貨立て国債発行という国民生活窮乏を押してでも輸出を続けなければならない政策を採らざるを得なくなる、ということですね?」
[あっしら]
巨額赤字財政支出や巨額政府債務を問題視しているのではなく、供給活動に使われない“余剰通貨”が膨大にあり、そのために政府が借り入れをして代わりに使うという構造を問題視しています。
利益や余剰所得は自分の懐にしまい込み、政府がそれを借り入れてGDPを下支えしてくれることに期待するような経済社会と政治国家の関係性が将来の悲劇につながると考えています。
外貨建て国債の発行が多くなれば、その債務を返済するため、なんとかして貿易収支の黒字を確保しなければなりません。(利払いは所得収支の赤字要因ですから、外貨建て国債の発行が多くなれば、所得収支までが赤字に転落する可能性があります)
対外債務を履行するために貿易収支の黒字を確保しなければならない状況とは、国内で求められているものの供給を削ってでも外国が求めるものを生産しなければならないことを意味します。
(これもインフレ要因です)
【NJさん】
「『国際経常収支の黒字は10年後も維持されていると予測しますが、貿易収支は赤字に転化していると予測します。これは、日本国内の供給力が日本国内の需要を下回ってしまう「供給力不足」を意味します。』この一文の意味が、実はよく分らないのです。
供給力不足、とは、外国から原油、鉄鉱石、等の原材料を購入する資金力がなくなり、就労者数が足りなくなり、(仕事がない、のであって、失業率は増加したりしている状況ですか?)、生産拠点が日本にない、ということですか?」
[あっしら]
「供給力不足」の主たる原因は、日本企業の製造拠点海外移転です。
自分たち(優良企業)の利益は自分のものとし、失業者・生活困窮者・老人の生活保障やGDPの下支えは政府が借り入れで行い、その後始末は低中所得者から吸い上げたお金でやればいいという価値観や政策が続けば、デフレ不況はとどまることがありませんから、日本企業の製造拠点の海外への移動はさらに進むことになります。(中国や韓国などとの競争も、海外への移転を促進する要因です)
【NJさん】
「国民生活が窮乏する、とは、生活に必要な物資がない。あっても高すぎて買えない、ということですか。例えば、自給率の低下した食料品は高い輸入米と輸入小麦で作られ、鉛筆も売ってない、テレビは日本の企業の製品なのに、円安で高騰して買えない。付加価値の安いものは、とうに安い労働力で低価格が武器だった中国製品に市場を奪われ、国内産業は壊滅して、輸入品ばかりだからやっぱり値上がりした。というような、、、『国民生活が窮乏しても輸出を強いられる』とはどういうことでしょうか、、、」
[あっしら]
国民生活が窮乏するとは、実質所得が減少し、それまでの生活よりも物質条件が悪化することを意味します。
ここ7、8年の日本の姿でもあります。
歳入不足や債務履行を低中所得者からの吸い上げに依存すれば、当然のこととして国民多数派の生活は窮乏することになります。
今後さらに低中所得者からの吸い上げが増加すれば、窮乏化の度合いはさらに高まります。
「供給力不足」と「赤字財政支出」から生じるインフレの時代でも、生活保障はぎりぎりに抑えられるので窮乏化はより深刻になります。(低中所得者からの吸い上げはすぐに限界に達します)