★阿修羅♪ > 議論21 > 815.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
『ウォール・ストリート・ジャーナルの皮算用(赤旗)』( http://www.asyura2.com/0505/senkyo13/msg/180.html )に対するコメントです。
=======================================================================================
ウォール・ストリート・ジャーナル紙やシティーグループはわかっていながらガセを書いているのだろうが、共産党機関紙アカハタがそれを鵜呑みにして郵政民営化反対のネタにしているのはいただけない。
【アカハタ記事引用】
「米金融機関シティーグループは、郵政民営化で郵便貯金と簡易保険が「民間の手に落ち」た場合、「三兆ドル」の郵貯・簡保資金の大部分が従来とは異なる市場に流れ込むと分析し、その行き先を試算しました。
米財務省証券(米国債)と欧州債券、日本と外国の株式が「大勝利」を収めるというのが、その結論。一方で、郵貯制度の恩恵に浴してきた日本の国債市場は「大敗北」を喫するとしています。
シティーグループは、郵貯・簡保の民営化によって、国債、地方債、社債を含む日本の債券市場から一兆三千七百五十億ドルが流出すると試算。投資家は有利な運用先を探すが、千二百七十億ドルは米国債へ、六百四十億ドルが欧州のユーロ債へ、五千二百十億ドルが日本の株式市場に向かうとみています。」
まず、誤解しているひともいるようだが、郵政金融資金340兆円(3兆ドル)というのは既に使われてしまっているお金で、民営化されても新たに何かで運用できるという性格のものではない。
340兆円というのは郵政資金の負債(預かり金)であり、普通国債・財投国債・財投資金預託金・その他公債・現預金という資産に転換されていることでバランスが保たれている。
(今後、財投資金預託金がゼロに向かい、その代わりに普通国債や財投国債が増加するという資産構成に変わっていく)
現預金(9兆円)はすぐに新たな運用に使える性質の資産だが、実際は払い戻し準備となっているから運用に使うことはできない。
郵政金融事業の資金がどう使われるかという問題は、現在の資金残高ではなく、今後新しく流入している資金に関してなのである。
(それも今後2、3年は郵政の資金残高は減少する見通しになっている。日本の経済状況とりわけ家計の金融収支を考えたとき、郵政金融事業の大きな資金が新たに流れ込むことはありえない)
既に使ってしまって現預金以外の資産になっている3兆ドル=330兆円がシティーグループが言うようなところに流れ込むためには、それに先んじて、郵政公社が資産として保有している国公債(以降国債として表現)を売却しなければならない。
(現金がないのだから換金性の高い資産を売却しなければ、米国債・ユーロ債さらには株式に投資することなんかできない)
郵政公社が保有国債を売却するためにはそれを買ってくれる相手が必要である。
銀行などの金融機関は、手元に残す現預金をできるだけ減らし利息が得られる貸し出しや国債引き受けに使っているから、郵政の国債売却に応じて購入できる金額はしれている。
(20兆円を超えるとも言われている“タンス預金”が国債消化を支える民間の最後の秘境だが、それは、いわくがあったり国家や銀行への不信がなせる行為だから出てくる可能性は極めて小さい)
郵政公社がなんとかして大量の国債を売却しようとしたら、基本的には日銀に買ってもらうしかない。
日銀が購入しないなかでの大量国債売却は「国債価格の大暴落」を引き起こし日本金融世界に壊滅的打撃を与えることになるから、郵政公社は自分のところの資産保全を考えただけでもそれを行うことができない。
郵政公社が額面で10兆円の国債を一気に売却しようとしたら、9兆円といった額面割れの金額でしか売れないだろう。
預かったお金である10兆円を使って購入した国債が9兆円でしか売れなければ大きな損失であり、預かり金の金額は変わらないのだから債務超過に陥る可能性だってある。
このようなことは実際に売ってみようとしなくてもわかっていることだから、日銀が買い取ってくれない限り、まともな頭を持つ郵政公社が大量の国債を売却することはない。
銀行など他の金融機関も、郵政公社が保有国債を大量に売却するという情報を察知したら、慌てふためき政府・金融庁にその阻止を直訴するために押しかけることになる。
(郵政公社が大量の国債を売却すれば国債価格が暴落し、銀行などの金融機関が保有する国債の資産価値も暴落するからである)
財務省だって、郵政公社の大量国債売却を見過ごすことはない。
ただでさえ日銀と連携しながらなんとか新規国債・借換国債の消化を達成しているのに、郵政公社の保有国債が追加的国債として市場に登場すれば、それをプラスした「国債サイクル」維持政策を採らなければならないからである。
このように書いてきたからといって郵政民営化に問題がないと言いたいわけではない。
その逆で、書いたことからわかるように、郵政金融事業は、日本の金融世界を壊滅させかねないほどの膨大な資産エネルギーを蓄えているのだから、それが“悪用”されるような余地を残してはならないのである。
日本の銀行や企業は、無自覚的にはそのような動きもしているが、日本経済を破壊するような策動を意識的に行うことはないと考えている。
しかし、己の利益だけを行動基準とする外国資本なら、より大きな利益を得るために郵政が抱える資産エネルギーの破壊力を利用した策動に走ることも考えられる。(考えられるというより、政府や政治家はそれを考えなければならない)
外資が「郵便貯金銀行」を動かして50兆円の国債を売りに出せば、国債価格は暴落し、メガバンクを含むほとんど銀行が債務超過に陥る可能性もある。
50兆円で足りなければさらに50兆円の国債を売り浴びせることもできるから、日本は未曾有の金融危機に突入することになる。
そのような策動で得られる利益は、好きな銀行を好きなだけ長銀のときと同じように超バーゲンセールで手に入れられるというものである。
同時に、銀行から借り入れをしてしのいでいるめぼしい企業を破格値で手に入れることもできる。
郵政の民営化そのものに反対だが、民営化案に電力・放送・通信などと同じ外資の持分規制さえないのは、お粗末を超えた売国行為である。