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昨日(水曜日)発売の「ニューズウイーク日本版9・7」の記事を紹介する。
「ニューズウイーク」は、記事でも出てくるが、衆議院解散後に総選挙で小泉与党の勝利を切望したワシントン・ポストの関連子会社である。
その「ニューズウイーク」が、日本版ではあるが、小泉郵政民営化のまやかしをけっこう鋭くさらす記事を掲載した。
内容的に言えば、郵政民営化法案の成立を期す自民党・郵政資金の縮減をめざす民主党への批判であり、共産党・社民党・国民新党・新党日本へのエールともとれるものである。
総選挙の公示が行われ投票日まであと10日ばかりという時点でこういう記事を掲載した「ニューズウイーク」の真意は分からないが、共産党・社民党・国民新党・新党日本及び自民党内反対派は、郵政民営化に狂奔する小泉連合と郵政資金縮減のみならず郵政職員8万人削減を掲げる民主党を批判する理論的根拠としてこの記事を大いに活用することができる。
私ごときが同じようなことを書いても説得力はほとんどないが、米国の高級ニュース誌の看板にぶら下がった内容であれば新自由主義者・市場原理信奉者にもそれなりの説得力を持つはずである。
(新自由主義や市場原理は自分が利益を貪ることを正当化したりもっともらしく見せるための手段という人には効果がない(笑))
記事のタイトルは、ずばり、『小泉「郵政選挙」のまやかし』であり、サブタイトルとして、「衆院選:経済効果が期待できない民営化にかまけすぎれば、日本が沈む」である。
記事内容:
『 小泉純一郎首相が衆院を解散した翌週、ワシントン・ポスト紙は郵政選挙で小泉勝利を切望する社説を掲げた。それによれば、3兆ドルにものぼる郵貯資金のかなりの部分がバラ撒きの公共事業に使われている。この資金を民間に流せば日本の経済効率は向上する、という。
だが、日本をよく知る外国のエコノミストは、こうしゃ論調を一笑に付す。「郵政民営化に賛成だから支持、というのは建前」と、メリルリンチ日本証券のチーフエコノミスト、イェスパー・コールは言う。「民主党が勝つと、自衛隊はクリスマス前にイラクから帰ってきてしまう。そちらのほうが本音だ」
小泉は、9月11日の衆院選を「郵政選挙」と位置づける。郵政改革こそがあらゆる構造改革の入り口で、郵政民営化なくしては、日本経済の長期成長もないと言う。だが、それを額面通りに受け取る外国人投資家は少ない。
現に日経平均株価は、参議院で郵政民営化法案が否決され、衆院の即日解散が決まったあとも上がり続けている。HSBC証券のチーフエコノミスト、ピーター・モーガンはその理由を、「市場は郵政民営化をそれほど重視していない」からと、リポートのなかで分析している。
政官業癒着の資金源を断つ郵政民営化の政治的な異議は外国人投資家の大半が認めるところだ。だが今はむしろ、郵政選挙の名の下に、郵政民営化よりはるかに重要な経済課題が置き去りにされることへの危機感が高まっている。8月初め、政府と日銀は景気の「踊り場脱却」を宣言したが、「日本の将来が明るいとはとても言えない」と、コールは言う。
「官から民」は実現済み
そもそも、郵政民営化をすれば経済に大きなプラスになるという話は「神話」にすぎないと、モーガンは言う。理由はいくつもあるが、仮に郵貯・簡保の資金が「官から民へ」流れたとしても、超低金利下でさえ借り手がいない現状では、民間金融機関と貸し出し先に奪い合いになるだけだという、あぶれたお金が国債に向かう構造はなんら変わらない。
また民営化しなくても、01年4月の財政投融資制度改革で、郵貯の運用は自主運用に切り替わり、すでに民間に流れるようになっている。
《中略》
財投の規模も、ピークだった98年の43兆円から17兆円に減少した。これこそ「真に重要な改革だった」と、ワシントンのシンクタンク、米国債経済研究所のアダム・ポーゼン上級研究員は言う。「小泉は、政治的な理由からそれを言わないだけだ」
郵政改革が必要ないというわけではない。郵政公社はほうっておけばいずれは赤字に陥る見通しで、国民負担が生じることになる。だが今は、それより優先すべき課題がある。ドレスナー・クラインオート・ワッサースタイン証券の財政アナリスト、奥江勲二は、タイムリミット順に「医療改革、年金改革、郵政改革」をあげる。
《中略》
自己満足に陥った自民党
奥江の推定では、公費による医療保険への赤字補填額は年間3兆円。それが今後は毎年1兆円ずつ増えていく。保険料率の大幅な引き上げは避けられないという。そこに年金不安が重なれば、消費者は誰もお金を使わなくなる。
にもかかわらず、政府では景気対策に対する危機感が失われている。「自民党の政策責任者と話していると、自己満足に陥っているのではないかと心配になる」と、コールは言う。「ノーベル経済学賞でも期待しているかのような雰囲気だ」
確かに不良債権は減り、企業業績は回復し、失業率も差張った。
「だが実質GDP(国内総生産)の伸び率は鈍化しており、デフレも脱却していない」と、大阪大学のチャールズ・ホリオカ教授(経済学)は言う。
財政再建が強調されすぎていることにも、海外の専門家はそろって首をかしげる。巨額の財政赤字は好ましいことではないが、日本の金利は世界でも最低水準にあり、最優先で減らすほどの緊急性はない。むしろ、「歳出削減や増税は景気回復が本物になるまで延期することが大事」と、ホリオカは言う。「あまり早期にやってしまうと、再び不況に陥るおそれがある」
《後略》
千葉喜代子、デーナ・ルイス(東京)』