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ミシェル・フーコーと権力論
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投稿者 縄文ビト 日時 2005 年 6 月 15 日 10:06:11: egUyw5BLxswRI
 

(回答先: 何も支持を得ていない権力は存立し得ない。 投稿者 ワヤクチャ 日時 2005 年 6 月 14 日 15:29:16)

ワヤクチャさんあなたの基盤としているミシェル・フーコーの権力論ですが、まだ多くの問題を抱えているみたいです。以下は別の方が書いた書評ですが書き込みを入れておきます。


「ミシェル・フーコーと権力論」要旨

1993年12月提出修士論文
                東京大学大学院法学政治学研究科
                        修士課程 早川 誠http://www.geocities.jp/collegelifecafe3666/masthes.htm 
フーコーの権力論が主体を抑圧せずに生成させるものであるとすれば、現代政治学の権力論との相違は明らかである。先述の通りゼロ・サム的権力観も権力を合意達成能力とする見方も主体を所与としている。フーコーの権力論はその所与の主体こそ権力によって形成されたのだと論じているのである。しかし、このように論じることでフーコーの権力論は自由論の領域に困難な問題を持ち込むこととなった。ゼロ・サム的権力観が恣意的権力からの解放の自由を、合意を旨とする権力観が権力の行使による自由を主張するのに対して、そもそも権力以前の主体を否定したフーコーには自由の基盤が存在しない。この問題に対し、権力の「外部」の存在をほのめかす論考もあるが、その議論の展開は不十分である。だが、「外部」を措定しない自由をフーコーは論じている。「抵抗」としての自由である。遍在する権力の作用を逆用して内部から常に抵抗し続けること。外部への解放を目指すのではなく、内部の態様の変化をもくろむこと。そのような常に「抵抗」し続ける姿勢がフーコーにとっての自由なのである。
 第3章ではこのような自由論の基礎となるべき方法論を扱う。「抵抗」としての自由の主張も、もしその主張の基礎である方法論自体が権力の作用を受けたものであるとすれば、曖昧な正当性を持つにすぎない、ということになる。この点に関して、「考古学」も「系譜学」も確固とした議論を提供しえなかった。「外部」を措定しようとする試みも説得力に欠けている。こうした中、晩年の研究領域である「倫理」の位置づけが問題となろう。彼のそれまでの研究領域を大きく遡り古典古代に目を向けたことは、方法論の基礎を提供するような非近代の理想的主体の発見を目指してのことだったのだろうか。しかし、フーコーは現代の問題の解答を過去に求めることはできないと言う。やはり古代ギリシア・ローマ哲学の主体も権力の作用を逃れることはなく、ただ現代の問題構成との類似性という点で彼の注目をひいたにすぎなかったのである。こうして、フーコーの権力論は彼の研究生活全域を覆い尽くしている。従って、彼の議論自身が権力作用を受けているのではないかという自己言及性の問題も、解決の糸口を見出だせないままであると言えよう。しかし、ポスト・モダンの議論の不毛性に対してしばしばなされる批判を鑑みれば、フーコーの議論はポスト・モダンの絶対化を回避して活力を維持することを可能にしているとも考えられる。この現代という時代、もし政治に創造力が求められているとするならば、フーコーの議論はあらゆる議論が目を向けるべき批判的参照点を形作っていると言うことが出来るであろう。


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