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2005年9月19日 9:05am PT
遺体からの顔面移植手術、近く実施か(上)
AP通信
これから数週間のうちに、男性5人と女性7人がひそかにクリーブランド・クリニック(オハイオ州クリーブランド)を訪れ、世界のどこでも行なわれたことがない大がかりな手術を受けるための面接に臨むことになっている。
彼らは面接で、笑顔を見せたり、眉を上げたり、目を閉じたり、口を開けたりする。そして、マリア・シーミオノウ博士が彼らの頬骨や唇、鼻を調べる。シーミオノウ博士は彼らに、いちばんの望みは何か、そして最も恐れているのはどういう事態かを尋ねる。
そして、シーミオノウ博士はこう質問するだろう。「別人のような見た目になるのはいやですか?」
シーミオノウ博士が誰を選んだとしても、その人は究極のアイデンティティー(同一性)の危機に耐えねばならないからだ。
シーミオノウ博士は顔面移植を計画している。
これは、出演者が大変身を遂げるテレビ番組などではない。1人の医師が切り拓きつつある医療の新境地であり、この医師は自分が試みようとしていることを世間に理解してほしいと考えている。
その試みとは、やけどや事故などで容姿が大きく損なわれた人々に新たな人生を送るチャンスを与えることだ。現在でき得る最高の治療をもってしても、外見の点でも動きの点でも普通の皮膚とはかけ離れた、かさぶたのような醜い組織が顔に残ってしまう人が多い。
こうした人々はすでに、顔と結びついたアイデンティティーの感覚を失っている――顔面移植は、単に「皮膚という覆いを用意して」その中にアイデンティティーを収める行為にすぎないと、シーミオノウ博士は主張する。
シーミオノウ博士の支持者たちは、同博士の経験、慎重な計画、専門家チームによる支援体制、顔面移植の技術を完成させるために動物や何十もの献体で繰り返した予行演習などを強調する。
しかし、臓器移植のように生死にかかわる状況でやむなく行なわれる手術ではないことを考えると、顔面移植はあまりに危険が大きすぎるという批判の声もある。シーミオノウ博士に批判的な人々が描く最悪のシナリオは、恐ろしいシュールレアリスムの映像のようだ――移植した顔が拒絶反応ではがれ落ち、手術前より悪い状態に陥るというのだ。
こうした懸念から、フランスとイギリスでは最近、顔面移植の計画が中止になった。
それでも結局は、病院、医師、患者のすべてが挑戦しようという気になるだろう。病院と医師はすでに準備が整っているし、患者も近々決まる見通しだ。顔面移植の「同意書」には、前例のない手術でリスクも明らかでないため、医師らはインフォームド・コンセント[説明を受けたうえでの同意]が可能だとは考えていないとの記述がある。
患者候補に説明される同意書の内容は次のようなものだ。
まず患者の顔面を取り除き、組織のタイプ、年齢、性別、肌の色が一致する遺体から提供された顔を移植する。手術は8時間から10時間の予定で、10日から14日の入院を要する。
合併症として感染が起こり、移植された新しい顔が黒く変色する可能性もある。その場合は2度目の顔面移植を行なうか、皮膚移植によって顔を再構成する。拒絶反応を防ぐための薬を生涯にわたって服用しなければならず、薬の影響で腎障害やガンのリスクが高まる。
患者は移植手術の後で、後悔や失望、悲しみを感じたり、提供者への罪悪感に悩んだりするかもしれない。病院側では患者の身元が外部に漏れないよう努力するが、マスコミに嗅ぎつけられてしまう可能性は高い。
1人目の患者に関しては病院側が費用を負担するが、2人目以降の費用については決まっていない。
顔面の提供者の遺族に説明するための別の書類には、顔面移植を受けた患者が愛する故人と同じような顔になるわけではないと書かれている。顔つきは骨や筋肉によって作られるため、移植して別人の皮膚を骨や筋肉にかぶせても、患者の顔はむしろ損傷を受ける前の姿に近くなるはずだという。
冗談を言うときにまばたきする癖や、ほめられると赤面する癖など、表情を構成する細かい要素はすべて、脳や人格と結びついているもので、皮膚に埋め込まれているわけではない。
ただ、術後の顔が提供者と患者の見かけを組み合わせた雰囲気になることを示唆している研究もある。
提供者の傷は皮膚移植で整えられる予定だが、棺のふたは閉じたままにしておくべきだし、火葬することを考えるべきかもしれない。
クリーブランド・クリニックの研究は13人の委員からなる施設内審査委員会(IRB)によって管理されているが、顔面移植の承認を得るまでに1年以上を要した。シーミオノウ博士は、外科医、精神科医、ソーシャルワーカー、セラピスト、看護師、患者の権利を主張する人々を集め、臓器調達機関の『ライフバンク』と協力関係を築いた。同博士は、ライフバンクが顔の組織の獲得に協力してくれることを期待している。
IRBの副委員長を務めるアラン・リクティン博士によると、最初から全員がシーミオノウ博士に賛成していたわけではないという。シーミオノウ博士は議論を開始して数ヵ月がたったころ、患者になる可能性がある人々の写真を持ち込んだ。
リクティン博士は、写真の中の歪んだ顔を見て、「現在の最先端の技術をもってしても、こうした人々を助けられないこと」に衝撃を受けたと語る。そして、外科医や患者からチャンスを奪いたくないという気持ちを固めた。
IRBの決定は全員一致でなくても成立するが、最終的には全員が賛成した。
顔面移植ができていればと思うようなケースは6年前にもあった。ピットブル[闘犬用に品種改良されたブルドッグの1種]に襲われた2歳の男児がテキサス大学ダラス校に運ばれてきたときのことだ。
ダラス校の外科医たちは男児の顔の傷を再付着させようとしたが、成功しなかった。結局、28時間におよぶ血まみれの手術で5ヵ所の皮膚移植が行なわれた。男児の太ももの筋肉が口の周りに移植された。腹の一部の皮膚は顔の下部に使われ、前腕から切り取った2つの部分は唇と口になった。
当時テキサス大学ダラス校で研修医として働いていた、ウィスコンシン大学マディソン校のカーロール・グトウスキー助教授(形成・再建外科学)は、「この男児はもう普通に戻ることはできない」と話す。
こうした傷からの回復手術は、「1000回のメスで保たれる生」になることもある。背中や腕、尻、脚から皮膚を少しずつはがして必要な場所に移植する手術を、何十回も耐えなければならない患者がいる。一度に少量の皮膚しかはがせないのは、出血を少なくするためだ。
外科医は往々にして、数週間ごとに同じ部位に戻り、古い傷をまた開いて皮膚を再建する方法をとる。多くの患者が数年たっても手術を受けつづけている。一度の手術で1枚の皮膚を貼りつける顔面移植は、現行の方法より優れた解決策になる可能性がある。
(9/27に続く)
[日本語版:米井香織/高森郁哉]
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