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「Newsweek」日本版 2005.08.03号
温暖化防止に新たな挑戦
環境 地方と民間主導の積極的な取り組みでエネルギー政策が変わりはじめた
環境保護局(EPA)勤務の経験もある元米国務次官補のアイリーン・クローセンのところに面白い電誘があったのは、97年のこと。電語の主は、慈善財団のピュー慈善トラストの関係者。地球温暖化対策に資金を拠出したいのだが、どこに金を使えばいいのかという相談だった。
その相談に応じて示した青写真をもとに、98年にピュー気侯変動センターが設立されると、クローセンは所長に就任。以来、温室効果ガスの排出削減を訴え、政治機関、企業に対し、環境にやさしいエネルギー政策の導入を熱心に呼びかけてきた。地球温暖化の現状と望ましいエネルギー政策について、本誌アン・アンダーウッドがクローセンに聞いた。
*
──地球温暖化など起きていないと言う人もいるが。
筋金入りの懐疑派も一部にいるけれど、科学者の圧倒的多数は温暖化の事実を認めている。大統領の依頼を受けて全米科学アカデミーが作成した報告書も、温暖化の影響が生じる時期や場所、程度などでいくつか不明な点があるとしつつも、結論としては地球は温暖化しており、その原因は人間の活動にあり、事態はもっと悪化するだろうと述べている。
──わずか数度の気温変化が、本当にそれほど深刻な問題なのか。
地球の気温は、過去100年で0・5度ほど上昇した。北極地方のように、50年代以降だけで約2・5〜3度も気温が高くなった地域もある。その影響で、今世紀中にホッキョクグマが絶滅するおそれもある。アラスカ沖の海では、冷たい海水を好む魚が姿を消しはじめている。
──対策を取るべきだという裏づけになるデータはあるのか。
データを見るかぎり、何もしないでいるのは無責任だ。対策を取るためのコストは大きくないが手を打たない場合の潜在的な悪影響は計り知れない。
──新しいエネルギー政策を採用すれば、対策の一助になるのか。
エネルギー政策は、とりもなおさず温暖化対策でもある。温室効果ガスの最大の発生源は化石燃料だ。そこで、どこからエネルギーを得るかが問題になる。
現在、アメリカの電力の51%は石炭による火力発電。原子力が20%、天然ガスが16・5%、水力が7%、石油が3%。残りは、地熱発電や風力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギーだ。
──現実的には、エネルギー需要のどの程度までを再生可能エネルギーに頼れるのか。
2020年までに需要の10%というのが現実的な数字だ。努力を結集すれば、50年までに30%というところだ。画期的な技術革新がないかぎり、3分の1以上に増やすのはむずかしいだろう。ほとんどの再生可能エネルギーは、供給が安定しないからだ。
──では、原子力発電への依存を増やしたほうがいいのだろうか。
原子力にある程度頼らないと、二酸化炭素の排出をゼロにするのは不可能に近い。ただし、原子力はコストが高いし、放射性廃棄物の処理問題も解決できていない。国外では、核拡散の心配もある。
──今後もエネルギー需要のかなりの部分を石炭に頼るとすると、どうやって二酸化炭素の排出量を減らせばいいのか。
石炭のガス化を行えば、これまでよりクリーンに燃やせるようになるかもしれない。問題は、発電所の建設コストが高いこと。
放出される排出物から炭素を取り除く技術の開発も望まれる。二酸化炭素を排出すると税金を課されるノルウェーでは、すでにこれを実践している企業がある。
──温暖化対策では、政府より企業のほうが進んでいるのでは?
私たちの「ビジネス環境リーダーシップ評議会」には、39の企業が参加している。ほとんどは有力な多国籍企業だ。最近は途上国でも、環境にやさしいテクノロジーを求める声が高まっている。
──評議会はどのような活動をしているのか。
参加企業は言葉だけでなく、実際に行動する。いちばん意欲的な目標を掲げたのは、(総合化学メーカーの)デュポンだ。99年に設定した目標は、10年までに温室効果ガスの排出量を90年の水準から65%引き下げるというものだった。実際には、02年の段階で67%の削減に成功した。デュポンはエネルギー消費量を減らし、しかも業績を伸ばした。
どの企業も、排出量を削減してもコストは増えていない。温室効果ガスの排出を減らすことで、エネルギー効率が高まるからだ。
でも、私たちが最も重視しているのは政府レベルの対策。どういう法律が必要かを考えて、その原案を作成する。最善の法案ができるように、企業とも相談する。
──アメリカでは、中央より州の取り組みのほうが進んでいる?
州レベルでいろいろと興味深いことが行われている。たとえばカリフォルニア州は、自動車の温室効果ガス排出規制を導入しようとしている。自動車業界の抵抗でつぶされるおそれもあるが、もしこれが実現すれば、ニューヨークなどほかの州も後に続くとみられる。そうなれば、実質的に、自動車の温室効果ガス排出規制がほぼ全米で導入されることになる。
19の州と首都ワシントンは、再生可能エネルギーの導入を義務づける規定を設けた。たとえばモンタナ州では、10年までにすべてのエネルギーの10%を再生可能エネルギーに転換することを求める州法が州議会を通過した。
──市レヘルでも対策に乗り出しているようだ。
温室効果ガスの排出量を90年の水準から70%削滅するという京都議定書の目標を達成する意向を示した市は、165にのぼる。
──最近の米議会の動きには、意を強くした?
(6月に)上院で、市場べースでの温室効果ガス排出制限を義務化する立法を議会に求める決議が採択された。この決議に法的拘束力はないが、「義務」という文言を盛り込んだ決議案が可決されたことは心強い。
これをターニングポイントと呼べるかどうかはわからない。本当の変化が起きるには、新しい大統領が誕生し、下院の構成も変わらなければならないだろう。
それでも、私たちは新しい段階に入ろうとしている。議論のテーマは、温暖化対策を行うべきかどうかではなく、それをどのように行うかに移りはじめている。
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