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小説 結城純一郎の晩夏
結城純一郎は漆黒の闇に溶けて眠っている。変更線の午前3時・・・朝はまだ来ない・・・首相官邸の寝室・・・
彼はうなされていた。悪夢のなかにいた・・・彼が若い頃、首を絞めて殺した新橋芸者小はんが暗黒に踊っている。
結城純一郎は悪夢から脱出するために叫び声をあげた・・・「うあああああおおおおおお・・・」全身からの叫び
声は現実に帰還するために必要な夜の儀式だった。眠らなくては・・・明日がもたない・・・911総選挙の告示
日は迫っていた。明日は広島に飛びホリエモンの応援演説が日程に組み込まれている。彼は部屋の電気をつけ、睡
眠薬の錠剤に手を出した。そして水差しからガラスコップにウーロン茶を入れた。
睡眠薬を飲んでも結城純一郎は眠に入ることはできなかった。本を読めば自然に眠くなるだろう・・・彼はベット
脇のイントレ引き出しから本を取り出した。アンダーグランド界で話題になっていた小説であると云われている。
結城純一郎は読み出した。時間は魔の日付変更線、永田町は漆黒の闇に没入している・・・
満腔1年1月17日、九段会館において国家生活党大会は華々しく開催されていた。報道各社スッタフがカメラ
とマイクをかまえる。異常な熱気が会場やロビーそして外にあふれている。大会は昼食休憩となった。会場から出
た片岡さつきはさっそくインタヴューを受けた。彼女は財務省国家生活党支部代議員だった。「日本の明日を語る
国家道の女性ここにあり」片岡さつきの映像は、すぐさま臣民のリビングに電波送信されるはずである。国家社会
主義の深淵をなし、臣民の心の琴をかき鳴らす情感はテレビによって創造される。居酒屋で批評を試みるインテリ
は新聞によって創造される。
ロビーに鳴り響くベルは、午後の部大会開始5分前の合図だった。片岡さつきは席に戻った。緞帳が上がる・・・
結城純一郎総裁が演壇に登場する。さっちゃん、彼の演説はどうしようもなく長いから眠らないでね、隣の席から北
海道の代議員である竹部が脂ぎった顔でそう言った。そして竹部は脂ぎった手を片岡さつきのスカートの上に置いた。
こんなとことで痴漢するなんて、ふざけないでよ! さつきは竹部の手に小指の爪を突き刺した。いたた・・・竹部
が歯軋りしながら、女の爪に刺された自分の手を見た。そして傷を癒そうと舌で舐めた。結城純一郎総裁の演説が始
まった・・・
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