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2003/05/1
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Azienda Agricole Mirasole e Montalbano
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http://www.japanitaly.com/jp/specialreportsbn/smomid_200305.html
今回訪れたのはミラノ市の南部オペラにあるロンバルディア州最大規模の米・酪農農家。といっても、驚くほどミラノの都心から近く、距離にしてものの10キロ、トラムでも30分かかるかかからないかといったところ。トラムは15番で終点間際のFiordalisoというショッピングセンター前で降り、そこから車で5分程だ。
農場総面積260ヘクタールの内訳は150haが水田、50haが乳牛の飼料用のとうもろこし畑、30haが大豆畑、そして30haが牧草地。酪農を経営するミラソーレ農場、そして米を作るモンタルバーノ農場の二つからなるのが、ミラソーレ&モンタルバーノ農場という名の所以だ。
ミラソーレ&モンタルバーノ農場があるポー平野はアルプス山脈の豊かな水資源に支えられたイタリアの主要稲作地帯。イタリアには、古くはギリシャ人を通じてローマ人に、そしてまたアラブ人の手によってシチリアに米がもたらされたが、16世紀頃には北部でも広い範囲で稲作が普及した。現在、イタリアの水田面積は21万5千ヘクタールにのぼり、生産される米の約三分の二が輸出される。パスタの国として知られるイタリアは、実は、ヨーロッパで主要な米の生産国なのだ。
農場の創業は二次大戦終了直後の1947年。農場の経営者ジョバンニ・フェデーリ氏の今は亡き父親、チェレステ・フェデーリ氏が20世紀初頭に建てられた大きな農家を買い取り、米づくりを始めた。現在はジョバンニ氏の指揮の元、長男ディエゴ氏が米と畑、次男アゴスティーノ氏が300頭の乳牛を飼育する酪農、そして長女ラウラさんが農場内のショップ、インターネット販売などを通じた消費者への直接販売にあたる。三代目に入った家族経営だ。
当農場の特徴は大規模経営と、高付加価値化だ。今日、イタリアの農業の現状は厳しい。材料費、人件費は年々上がる一方で、農産品の価格は横ばい。よって、生産規模の拡大、そして農産物の高付加価値化は、年々縮小するマージンをカバーする、生き残りのための戦略なのだ。
高付加価値化という点では、まず酪農では「高品質牛乳」の認証を取得。衛生、餌の内容・品質・管理を始めとする飼育、搾乳管理(体調のよくない牛の乳の隔離、など)等、乳牛が生まれてから牛乳が搾られ出荷されるまでのありとあらゆる面で定められた細かい規定を遵守した上、さらにそのすべての過程を「追跡」できるようになっている。結果、農場の牛乳は大手牛乳メーカーの高品質牛乳として出荷されている。
一方、米、とうもろこし、大豆はすべてロッタ・インテグラータLotta integrataと呼ばれる、自然環境への負のインパクトの低い方法で栽培されている。これは有機農法のように化学肥料、農薬を100%使用しないということではないのだが、化学肥料や農薬を、あくまでも農業のツールの一つとして位置づけ、自然堆肥、輪作など、さまざまな手法を合わせて取り入れるなどして、できる限り化学肥料や農薬の使用をおさえようという生産方法で、その内容はやはり法律で細かく規定されている。モンタルバーノ農場の場合、酪農で排出される牛糞を堆肥に変換し肥料として使ったり、輪作をしたり、高度な農薬散布制御機械を使い農薬の使用量を最小限に抑えるなどしており、結果、農薬・化学肥料の使用量は通常の7割程度に減ったという。
農場では数種の米を生産。澱粉質が高く、炊いても芯がきちんと残るので、リゾット料理に向くArborio、Carnaroli種、長細く独特の香りのある、タイ米に似たThaibonett種、栄養価の高い黒米、そして最近ではなんと寿司用の米の生産も始めた。寿司用の米はミラノ市内で定評のある日本食レストランで試食してもらい、OKをもらったお墨付きだ。
現在米の大半は全国に販売網を持つ大手食品メーカーに卸しているが、今後は消費者への直接販売の率を増やしていく予定だ。農場内のショップ、インターネット販売などを通じその陣頭指揮をとる長女ラウラさんは、ボッコーニ大学の経済学部を卒業後、会計事務所、JETROなどでキャリアを積んだ上で、二年前、実家の農業経営に加わったUターン組だ。といっても彼女はミラノ市内のアパートに住み続け、毎日15分かけてオペラの農場まで車で《通勤》している。
JETROではとくにテキスタイルやファッションの分野でのビジネスの橋渡しをする業務を担当していた。実家の農業ビジネスを手伝うことになった経緯についてラウラさんは、「正直、簡単な決断ではありませんでした。でも最終的には、農場で作っている農産物にマーケットがあることを確信し、このビジネスを手伝う決心をしました。私は、私たちの農場で農産物がどのように生産され、保存されているかを知っています。だから、自分たちの農産物の安全性、品質の高さには絶対の自信を持っています。また、祖父、父、そして私たちの世代へと受け継がれてきたこの仕事に対しての誇りもあります。ですので、今、私がこうしてこの家業の一部を担えることに大きな満足感を感じています」。
今後直接販売を増やしていきたいとする背景には、まさしくこの商品に対する自信と誇りがある。「大手食品メーカーとの取引においては、結局は単なる数あるサプライヤーの一つとして扱われてしまい、米の生産にどれだけまじめに取り組んでいたとしても、ビジネスの条件はとても厳しいものになります。そうではなく、高品質な農産物を生産するための真摯な取り組みを何らかの形で認識してほしい、そしてその結果経済的にも正当に報われたい、と思うのです。そのためにも、消費者との直接のやりとりを増やしていきたいのです」。
しかし、消費者への直接販売といっても、そう簡単ではないという。大消費地ミラノから近いというのは大きな利点であるように見えるが、それでも15〜20分の時間をかけて足を運んでもらうのはなかなか難しいものだ。
そこで始めたのがインターネット販売だ。各種お米のほか、農場の牛乳から作られたモッツアレッラ、リコッタ、ブッラティーナなどのフレッシュチーズ、また米、パスタ、チーズ、サラミ、有機ワインなどをかごに詰め合わせたギフト用商品を扱っている。ミラノ市内であれば宅配もしてくれるそうだ。ちなみに1キロ詰めの寿司用の米のお値段は1.5ユーロ。
この5月10、11日の週末は、ロンバルディア州のグリーンツーリズム振興組織が企画した、農場を一般のビジターに開放する《オープン・ファーム》のイベントに参加、農場に足を運べば、農場で生産された寿司米をつかった寿司の味見や、チーズの作り方の見学などもできるそうだ。まず当面は、ミラノ市内からこんな近いところに、まじめに農業に取り組んでいる農場がある、ということを一人でも多くの人に知ってもらうことに力を注ぎたい、と、ラウラさん。
農業が逆風下にあり、さまざまな課題を抱えているのはイタリアも例外ではないが、三人の若者が揃って農業を継ぎ、生き残りをかけてそれぞれ真摯に取り組んでいる姿は、イタリアの農業にはそれでもまだまだ未来があるということを十分感じさせてくれた。
写真説明(上から)
1.ラウラさん、農場ショップで
2.Campagna:農場の水田風景
3.Vitelli:まだ子牛の乳牛
4.Essicatoio:米の乾燥施設
5.riso:左からリゾット米、寿司米、黒米
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