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http://www.intership.ne.jp/~honcho/nihon-to-doitsu.htm
ミュンヘンのホテルで
ミュンヘンでの宿泊は市の中心街ではあるが15部屋ほどの駅前旅館。
ツインで朝飯にシャワー・トイレも付いて 160マルク(約 12,000円)はそれほど高くはないだろう。朝飯はフロント・ロビーと兼用の場所でテーブルも4卓しかないが、でもそんな小ぢんまりしたホテルだから、夜勤のフロントのマネージャーとも仲良くなれて、観光地図を見せて、おいしい店を教えてもらったり、帰ってからも小さなバーカウンターでビールを交わしながら話もでき、旅を楽しめる。
彼は小生よりも4歳年上で、終戦時はドレスデン(旧東独)にいたそうだ。以前はカナダ航空のチーフ・スチュワードをやっていたとのことで、愛想がよく話好きで、また世界中を飛び回っていたことからか(日本に何度も来たことがあるそうだ)なんでも、日本のニュースについても良く知っているのにおどろく。ドイツとアメリカ両国籍を持っているとのこと。
「今日はノイエ・ピナコテークト(近代美術館)とドイツ博物館に行ってきた。本物のメッサーシュミット262 シュワルベ(ジェット戦闘機)、ナッター(ドイツの特攻機)、V2をみてエキサイトしたよ」
「あれを(Me 262ジェット戦闘機)もっと作ればドイツは勝った」とおじさん。
ほんとだ。
世界初めての優秀な実用ジェット戦闘機だったが、ヒトラーが独断で無理矢理爆撃機に改造させて生産を遅らせてしまった。
話が危ないほうに向いそうな気がするが、こっちも興味があるから大きく相づちを打ってビールをすすめると、どんどん調子にのってくる。
「ドイツは2つ失敗をした。1つはソ連を攻めたこと、もう一つはアフリカに行ったことだ。あれをやらなきゃ勝った」と残念そうな顔をする。日本もドイツも最終的には物量で負けただろうが、おじさん、50年以上たった今も悔しくてが仕方がない感じだ。
天才ヒトラーはあのひどかった戦前の大失業をインフレを起こすことなく解消させた。いまも当時の公共投資(アウトバーン)は生きている。
また戦前の外交もすごかった。しかし戦中は彼の独断が数多くの悔しい失敗をさせた。
対ソ連戦もそうだが「バトル オブ ブリテン」(イギリス爆撃)で爆撃目標をほんの思い付きでロンドンに切り換えたことも大失敗。しかし、それでもあの時に後続距離の短いメッサーシュミットのかわりに日本がゼロ戦を貸してやっていたら戦況は変わったはずだったが・・・
V2ロケット(世界最初の弾道弾ミサイル・実用化されたが時すでにおそかった)の話になってますます話に熱がはいってくる。ビールもすすむ。
「Uボートで原爆の資料を日本に届けるはずだったが、途中で終戦になって乗っていた日本の海軍士官が自殺したというドキュメンタリーをテレビで見た」
それはNHKの番組で数年前小生も見たが、ドイツでも放映したのだろうか。
「あれが日本に届いて原爆をV2につけたら、こっちが勝っていた。その時はミシシッピーを境にして日本とドイツでアメリカを分けて占領できた」
そして「アメリカはベトナム戦争に10年もかかった。ヒトラーがいたらベトナムなんかとっくに占領していた」ととまらない。
話は面白いし、ビールはうまいし、調子にのってこっちも日本軍のミッドウェー作戦の失敗等について話したりして、2人とも大参謀になったような気になって話はますますエスカレートする。
「イーバー アーレス ドイチェランド」(世界に冠たるドイツ。正しくはユーバー アレス・・だそうだ)とサービスすると、ますます調子が出てきた様子で「俺とお前が10年早く生まれていたら、2人とも将軍になっていただろう」等と御機嫌な様子だ。(通訳も大笑い)
でも深夜になって大声でこんな話をいつまでしていたんでは具合が悪い。アメリカ人も結構泊まっているし、防音もよくない。適当なところでグーテン ナハト。
ドイツではかつてのナチのことを話題にしてはいけない。犯罪として逮捕されると注意されたことを書いた。
たしかに博物館の旧軍の資料からも「ハーケンクロイッツ」(鈎十字)は消してある。
また、どの街にもあちこちにある若者の仕業・スプレーのイタズラ書きもナチ関係・鈎十字だけは避けているようだ。ナチ・ヒトラーについて老いも若きも徹底的に気を付けていることがわかる。ドイツは国内の多くの強制捕虜収容所を復元公開して、ナチの犯罪的残虐行為を「絶対の反省材料」として展示ていることを内外に表明している。
しかし一方にはドイツ人は、かつて一緒に連合軍と戦い(共同作戦はなかったが)ドイツ敗戦後3ヵ月間も一人で頑張った日本を尊敬するところもあり、「この前はイタリアがいたんで負けたんだ。今度はイタリア(ここはホントは差別語を使うそうだ)抜きでやろうじゃないか」等と言う、と話に聞いたことがあった。
どっちもホントだった!
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