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(回答先: シリーズ、『市民政治』の再生を考える[1] 投稿者 鷹眼乃見物 日時 2005 年 6 月 25 日 09:59:18)
【画像】アンブロジオ・ロレンツェッティ(Ambrogio Lorenzetti/ ? -ca1348)『Allegoria del Gattivo Gererno(particolare)/善政の寓意』ca1338-1340 affresco、Palazzo Pubblico 、Siena (画像は下記URLを参照)・・・シエナ市庁舎の壁画であり、ここでUPした画像(部分)は「暴政」(暴君が支配する政治)の寓意を描いたものである。
http://www1.odn.ne.jp/rembrandt200306/friend.htm
[ロレンツェッティ『善政の寓意』について]
この絵画は、シエナ市庁舎の「平和の間」にある壁画『善政の寓意』(六面の連作)の一部であり、この部分は「暴政」(暴君が支配する政治)の寓意を描いたものです。この絵の作者アンブロジオ・ロレンツェッティはシエナ派(13世紀末から14世紀にかけて中部イタリアのシエナを中心に栄えた一派)の画家の中で最も重要な人物の一人です。彼の作品の特徴は、空間表現が遠近法的正確さに接近していること、人物の表情描写が精妙であること、そして独特の優雅な雰囲気(中世末期キリスト教美術に共通するクオリア)が漂っていることです。なお、アンブロジオの兄、ピエトロ・ロレンツェッティ(Pietro Lorenzetthi/ca1280-1348)も14世紀シエナ派の代表者の一人です。ピエトロの作風(http://www.abcgallery.com/L/lorenzetti/plorenzetti7.html)の特徴は、深い精神性とドラマチックな感情表現です。
このアンブロジオ・ロレンツェッティの壁画は、14世紀シエナ派絵画の最高傑作であるとともに共和主義(貴族共和制)の理想を完璧に近い形で表現し得た絵画であり美術史の上で重要な作品です。ギベルティ(Lorenzo Ghiberti/1378-1455/イタリア(フィレンツェ)初期ルネサンスを代表する彫刻家)は、シエナの画家たちがシモーネ・マルティーニ(Simone Martini/ca1284-1344/ローマ法皇の地アビニョンで晩年を送ったシエナ派を代表する画家/敬虔なゴシック的情感に満ちた表現が得意/http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/martini/)こそがシエナ派最高の画家であると述べていたと、著書『コメンターリ』(プリニウスを手本とした美術家の最初の自伝、ジョットからその時代までの絵画の歴史/http://www1.odn.ne.jp/rembrandt200306/kannenpy.htm)の中で述べています。が、ギベルティはそれに続けて、実はアンブロジオ・ロレンツェッティこそが遥かに偉大な画家であったとも書き残しているのです。ギベルティはクアトロチェント(Quattrocento/1400年代、つまり初期ルネサンス)の芸術家ですが、彼は一時代前(Trecento/14世紀、中世キリスト教末期美術の時代様式の呼称)の画家、アンブロジオ・ロレンツェッティを非常に高く評価していたのです。
しかし、ロレンツェッティはドウオーッチョ(参照、http://www1.odn.ne.jp/rembrandt200306/index2.htmの画像及び説明)やシモーネ・マルティーニの陰に隠れてあまり目立たぬ画家として見過ごされる傾向があり、20世紀初頭になってから漸く見直された画家でもあります。また、アンブロジオはシエナ派の画家でありながら、実際にはフィレンツェでの仕事も多く手がけています。ただ、フィレンツェ時代の作品は殆ど残っておらず、唯一、ウフィッツィ美術館に『聖ニコラ伝』のパネル(http://www.abcgallery.com/L/lorenzetti/alorenzetti22.html)が残っているだけです。
ところで、このシエナ市庁舎の「平和の間」にある壁画『善政の寓意』(六面の連作)は、アリストテレス的な公共善・正義・平和(http://www.qmss.jp/interss/01/materials/nikc-54.htm)を体現する「善き政府のアレゴリー」と「悪政のアレゴリー」が大きなテーマとなっています。ここで掲げた部分は、「悪政のアレゴリー」の中心に居座る「暴君」の図像です。「暴君」の周辺には、御用学者、強欲な聖職者、令色で巧みに高給を食む官僚、隠微で慇懃無礼な徴税官など小心のクセに悪魔的な魂胆の人物図像が配置されています。
一方、「暴君」の足元には「平和の擬人像」が拘束・抑圧された姿で寝転がされています。布と紐でグルグル巻きにされた憐れな「平和の擬人像」(弾圧・抑圧された都市市民たちの象徴でもある)を繋ぐ長い紐を手にした、強欲そうに見える悪人面の人物像は、イラク戦争で捕虜を虐待した米兵たちのイメージを呼び起こします。一方、鬼のように二本の角が伸びた「暴君」の薄ら笑いを無理に押し殺したような不気味な口元から漏れ聴こえてくるのは「テロとの戦い」、「悪の枢軸」、「増税なくして成長なし」などの恐ろしげなヒトラー口調の雄叫びです。つまり、ここで描かれているテーマを一言で言えば「平和を望む意志と生存権を奪われた市民たちの苦しみ」ということになります。
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