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日本と中国が東シナ海の石油ガス田開発だけでなく、宇宙でも激しいつばぜり合いを演じている。宇宙の平和利用をめぐり、アジア地域で人工衛星の防災情報提供が日本の主導で計画されているのに対し、中国が別の多国間枠組み構築を目指して参加国の囲い込みを活発にしている。二度目の有人宇宙飛行に挑む中国に比べ、出遅れ感が否めない日本の宇宙戦略。衛星データの解析ソフトなど関連産業をめぐる思惑も競争激化の背景にある。(杉本康士)
日本の計画は、独立行政法人「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)とアジア・太平洋地域の二十五カ国が加盟するアジア防災センター(ADRC)が、災害発生現場を人工衛星で撮影し、アジア各国の防災機関に無料で画像提供する防災危機管理システム。来年七月にも開始する。発展途上国の防災に役立てるのが目的だ。
具体的には、JAXAが来月にも鹿児島県の種子島からH2Aロケットで陸域観測技術衛星(ALOS)を打ち上げ、ALOSで撮影した画像をJAXA経由で各国の防災機関に配信する。
衛星の解像度は最大二・五メートル。衛星や災害把握用の航空機を持たない国でも、地震による道路の被災状況や洪水による浸水状況などを確認でき、救助活動に役立てることができる。すでに七カ国が非公式にシステムへ参加の意向を伝えている。
今回の計画には、日本のアジア諸国に対する防災面での国際貢献という意義だけでなく、ライバルの中国を横目に、将来の「宇宙ビジネス」で主導権を握るための“先行投資”という思惑も見え隠れする。
アジアにおける宇宙利用の多国間枠組みとしては、日本の提唱で平成四年に発足したアジア太平洋地域宇宙機関会議(APRSAF)がある。中国はこれとは別に、アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)の発足を目指している。
APRSAFが情報交換の場と位置づけられる一方、APSCOは、参加国と共同で衛星の開発・打ち上げを行い、画像などの衛星データを共有するといった、より戦略的な構想を持つ。
今年六月には中国、タイ、パキスタン、ペルーが中国のAPSCO加盟に向けた国内手続きを終え、加盟国はさらに拡大する見込みだ。
中国は今月中旬にも、二〇〇三年十月以来二度目となる有人宇宙船「神舟6号」を打ち上げる見通しだ。こうした精力的な動きに、宇宙開発に携わる日本国内の専門家は政治・経済両面から警戒感を強めている。
JAXAの松浦直人主任開発部員は「中国は宇宙分野でも覇権主義的な傾向があり、参加国の囲い込みを図っている」と指摘。また、経済面でもAPSCO参加国が使用する衛星データや解析ソフトは原則として中国製となるため、域内の関連産業市場で中国企業にとって圧倒的に有利になりかねないという。
国内関係者は、今回の日本の計画が中国の動きへの対抗策であることを否定しておらず、日中間の激しいデッドヒートはまだまだ続きそうだ。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/09iti001.htm