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国際面】2005年08月31日(水曜日)付
環境汚染に抗議、衝突 中国沿海部、急成長のツケ
中国沿海部の地図
【上海=塚本和人】経済発展に伴い住民と地元当局との衝突事件が相次ぐ中国で、工場からの汚染物質の排出による健康被害を訴える住民が当局側と衝突するケースが増えている。沿海部の浙江省だけで4月以降、少なくとも3カ所で環境汚染を巡る大きな衝突が起き、多数の負傷者を出した。発展に取り残された貧しい農民や出稼ぎ労働者らによる不満に加え、経済的に豊かな沿海部でも深刻な環境汚染への不満が広がっている。
●負傷者多数
上海から約180キロ離れた浙江省湖州市長興県煤山鎮。8月中旬、地元の電池工場から排出された鉛の大気汚染に抗議する千人以上の住民が1週間にわたって工場の出入り口を封鎖し、工場閉鎖と患者への治療を求めた。
20日には、れんがや石を持った住民が約600人の警官隊と衝突する事態になった。目撃者によると、住民の一部が工場に火をつけたほか、警察車両4台を燃やした。警官隊も催涙弾を発砲するなどしたが、双方に50人以上の負傷者が出た模様だ。
鉛の汚染の被害は周辺10カ村に広がり、特に子どもの健康被害が顕著だという。4月に被害が発覚後、地元当局が住民への検査を実施。住民の話では、工場に最も近い人口約900人の村で16歳以下の9割にのぼる130人が、血液中の鉛の含有率が通常より高かった。記憶力が鈍るなどの被害があり、子どもを地元の学校から転校させる親も増えた。
住民側は地元当局などと交渉を重ねたが、解決せず、6月以降は断続的に工場封鎖などの実力行動をとってきた。抗議行動に参加した男性(41)は「子どもを守るために立ち上がっている」と話した。
同省新昌県でも7月上旬から中旬にかけて、製薬工場による水質汚染を巡って多数の住民が工場を包囲して抗議の声をあげた。香港紙の報道では、参加者は数千人にのぼり、けが人もいた。
同省東陽市では4月、農薬製造工場による水や大気の汚染に抗議した1万人以上の住民が警官隊と衝突し、150人以上の負傷者を出したとされる。
香港紙によると、公安省が把握した全国で起きた暴動などの抗議行動は1994年の1万件余りに対し、04年は7・4万件余りに急増。対立のきっかけは工場建設のための農地の強制収用や役人による汚職などへの不満が多いが、急速な工業化に伴う大気汚染や水質汚染などで住民の健康を害する問題への抗議行動も増えている。
●意識高まる
特に沿海部の浙江省は改革開放政策の実施以降、民営企業による経済発展が著しい一方、環境汚染対策が不十分な企業も多く、大気や河川の汚染などにより、発がん率が高いとされる地域もある。経済的に豊かな住民の間では権利意識も高まっている。一連の衝突が起きた地域では、行政側は排出企業の操業停止などの措置をとり始めたが、損害賠償などの被害者対策は遅れがちだ。
中央政府は危機感を深めており、温家宝(ウェンチアパオ)首相も3月の全国人民代表大会(国会に相当)で環境保護の強化を訴えた。ただ、中央政府の方針が地方まで浸透しにくいのが実情だ。
◇ ◇
◆環境汚染をきっかけにした浙江省の主な衝突(香港紙の報道などによる)
衝突場所 日時 参加人数 汚染源 主な健康被害
東陽市 4月10日 1万人以上 農薬製造工場 奇形児出産、目の痛み
新昌県 7月上旬〜中旬 千人以上 製薬工場 肝臓疾患
煤山鎮 8月20日 千人以上 電池工場 鉛中毒
http://www.asahi.com/paper/international.html