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韓国の危惧  訳・三浦礼恒  【ル・モンド・ディプロマティーク】
http://www.asyura2.com/0505/asia2/msg/488.html
投稿者 愚民党 日時 2005 年 7 月 31 日 14:29:42: ogcGl0q1DMbpk
 

韓国の危惧


イグナシオ・ラモネ(Ignacio Ramonet)
ル・モンド・ディプロマティーク編集総長
訳・三浦礼恒

原文
http://www.monde-diplomatique.fr/2005/07/RAMONET/12353


 悲観主義。これが韓国で政治家あるいは組合幹部と議論する際に、その場を圧する雰囲気である。北朝鮮問題をめぐって、アメリカとの緊張は悪化する一方だ。日本との関係も緊張している。日本の複数の教科書が、占領時代(1905年〜45年)に朝鮮半島で行った残虐行為を矮小化し続けているからだ。また、両国が領有権をめぐって対立する独島(竹島)(1)の領土問題も抱えている。来る9月に国連改革を実現にこぎつけ、安全保障理事会で常任理事国の地位を目指すという日本政府の外交的な野心に対して、韓国政府は否定的な立場をとる。

 加えて、経済状態も悪化している。韓国は数十年のうちに第三世界から抜け出し、先進国の仲間入りを果たした数少ない国の一つだ。だが、この華々しい成功を収めた国に欧米からの訪問者が感じるバイタリティーとは裏腹に、韓国の成長は青息吐息の状態だ。日本、中国に次ぐアジア第三の経済大国は、国内消費の低下と輸出の伸び悩みに同時に襲われている。

 国会議事堂の一角にある事務所で、民主労働党のペ・ジョンビョン国際関係部長はこう説明する。「比較的短い期間のうちに、韓国は低開発の状態から極めて先進的な工業化へと移行した。1987年の民政復帰以後、社会闘争が進められてきたこともあり、現在では、我々の生活水準は欧州連合(EU)諸国の平均に匹敵するまでになった。賃金も大きく上昇した。韓国は安価な労働力の国だった。今は違う。その結果、グローバリゼーションの波をまともに受けている。我が国の大企業として、経済発展の先兵となってきたサムスン(三星)やヒュンダイ(現代)、デウ(大宇)やLGといったチェボル(財閥)は、生産拠点を続々と海外に移転している。それもすぐ隣の中国領内に、いとも簡単に工場を設けているのだ」

 その結果、労働条件は悪化した。韓国民主労働組合総連盟(KCTU)の傘下にある不安定賃金労働者組合の本部では、「もう一つの世界は可能だ」と染め抜かれた赤い鉢巻を締めた2人の幹部が次のように言う。「韓国の現役労働者1300万人のうち、850万人がパートタイムか、不安定な仕事や臨時雇いにしか就けていない。そして、定職のある者も不安定化、労働の柔軟化、事業拠点の海外移転、絶え間ない嫌がらせや、経営者による社会法違反という暴力にさらされている」

 グローバリゼーションの圧力の下で、この国ほど雇用が不安定化になったところは世界中どこにもない。2人の幹部は語る。「発注元の企業と注文された仕事をこなす労働者の間には、時として7つもの下請業者が介在する。労働者はどこの仕事をやっているのか正確には知らない。生産活動でいちばん利益を上げている企業の責任は、下請業者の錯綜の中でうやむやになる。何か問題が起こっても、臨時雇いの身では訴える先がないこともしょっちゅうだ。というのは、不安定労働者の組合は公式に認められていないからだ」

 社会的な緊張に加え、北朝鮮の体制が北東アジアに漂わせている核の脅威による不安もある。アメリカのブッシュ大統領により「悪の枢軸」に数えられた北朝鮮は、長距離弾道ミサイルを有しており、2003年1月には核拡散防止条約(NPT)から脱退した。そして複数の原子爆弾を保有していると表明し、アメリカからの攻撃という脅威に対応するために核実験を実施するとすごんだ。

 2007年の選挙で盧武鉉(ノ・ムヒョン)現大統領の後継者になると見る向きもある鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一相は、この6月17日に平壌(ピョンヤン)に赴いて金正日(キム・ジョンイル)主席と会談をした。統一相は特に心配はしていない。「1994年に初めて核の脅威を認識した際、ソウルの株式市場は36%も暴落した。今日では核の脅威はおそらく深刻さを増しているが、株式相場は動かない。ソウルと平壌の関係が確固としたものになり、安全の保証となっている証拠だ。北朝鮮当局はワシントンに保証を求めている。北はアメリカが体制を転覆させようしていると考えており、存亡のかかった問題と見なしている。我々はアメリカ政府に対して、北朝鮮の非核化問題に集中し、体制を転覆させるという意図を捨てるように伝えている。二つの目標を混同すれば爆発の危険があるからだ」

 北朝鮮の金正日主席が、6カ国(北朝鮮、韓国、中国、ロシア、日本、アメリカ)協議の枠組みで非核化に関する交渉を再開する意向を表明し、NPTに復帰する可能性を示したことで、この核の脅威に終止符が打たれようとしている。ボールはアメリカ側に投げ返された。果たしてブッシュ大統領は自らの攻撃性を和らげ、同盟国である韓国の忠告を聞き入れるだろうか。

(1) 原文は Dokdo と表記されている。[訳註]

(2005年7月号)
* 第一段落「アメリカとの緊張関係のせいで、北朝鮮問題は悪化する一方だ」を「北朝鮮問題をめぐって、アメリカとの緊張は悪化する一方だ」に訂正(2005年7月27日)

All rights reserved, 2005, Le Monde diplomatique + Miura Noritsune + Saito Kagumi

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