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(英同時テロ・現場から:イスラマバード)慌てて過激派捜索
パキスタンの地図
●モスクなどで250人拘束
目の部分以外は全身黒ずくめで覆った女子生徒が、鉄筋コンクリート2階建てのビルの屋上からにらみをきかせていた。片手には、護身用の棒きれが見える。ビルの周囲には、男性信者らが近くの木を切り倒してバリケードを築いている。
ここは、イスラマバード中心部にある市内でも主要なモスクの一つ。壁を真っ赤に塗っていることから「赤のモスク」と呼ばれる。周辺は、異様な緊張感に包まれていた。生徒たちは、モスク内にあるマドラサ(イスラム神学校)の寄宿生だった。
緊張の理由は、前夜の19日、マドラサの女子寮に数百人の治安部隊が捜索に入ったことだ。抵抗する生徒らに催涙弾を浴びせ、50人以上の負傷者が出た。捜索令状も示さず、理由の説明もなかった。
マドラサの教師アフマドさん(32)は憤っていた。「何の権利があって我々を犯罪者呼ばわりするのか。容疑者といわれる人たちが教育を受けたのは英国だ。ここではない」「ロンドンのテロはイスラム教徒を弾圧するための口実だ。英国政府の自作自演の謀略じゃないのか」
同時爆破テロでは容疑者3人が事件前、パキスタンを訪れ、イスラム過激派と接触した疑いが浮上している。批判の矢面に立たされたパキスタンのムシャラフ政権は、過激派摘発を名目として、全土でモスクやマドラサを片っ端から捜索。約250人を拘束した。英同時テロとの直接の関係はいずれもはっきりしないまま「何か成果を出そう」と焦った可能性が高い。
容疑者の立ち寄り先として疑われたマドラサは、いずれも関係を否定するばかりだ。「名指しされている人物は知らない」(東部ファイサラバードのマドラサ)、「誰が出入りしていたかなんて記録がない」(中部ムルタンのマドラサ)という。
東部ラホールでは、すべての公衆電話で使用前に身分証の提示が義務づけられ、利用者が激減した。公衆電話が過激派の情報伝達に使われている疑いがあるという理由だ。イスラム原理主義系の新聞幹部が複数拘束された。
過剰とも見える対策は、これまでの野放しぶりの裏返しだ。
●実情は「なれ合い」
今年5月、イスラマバード中心街で反米集会が開かれた。主催者は、インド国内での数々のテロや今回の事件で容疑者との接触が疑われている非合法過激派の一つ「ラシュカレ・トイバ」の政治部門。「我々はテロリストじゃない。ブッシュこそテロリストだ。『対テロ戦争』とは、コーランに対する戦争なのだ」と、同組織のナンバー2が壇上から叫んだ。
集会には、軍のスパイ機関「軍統合情報部(ISI)」の元長官ハミド・グル氏が正式に招かれていた。「ジハード(聖戦)の生みの親」と紹介されると、ターバン姿の男たちが一斉に、彼に拍手を送る。80年代、アフガニスタンに侵攻したソ連軍やカシミール地方で向き合うインド軍に対抗しようと、過激派をゲリラ部隊として育てたのがISIだったからだ。
過激派と当局がなれ合っている状態では、取り締まりも逮捕も効果が薄い。02年のダニエル・パール米紙記者誘拐殺害事件の実行犯とされたオマール・シェイク被告は今年5月、獄中から堂々と地元紙に、米軍を非難する声明を発表した。
ムシャラフ大統領は「過激派の活動一掃」の意向で、摘発に躍起だ。「しょせん、欧米を喜ばせるための摘発ショー」(地元記者)との声もささやかれている。(イスラマバード=武石英史郎)
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