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タイ南部、政府が非常事態布告へ 武装集団と再び対決姿勢
タイ・ヤラー県の地図
【バンコク=真田正明】タイ南部のマレーシア国境地域で14日夜から15日にかけて、イスラム系武装集団によるとみられる襲撃事件が二十数件連続し、市民を含む5人が死亡、20人以上がけがをした。タイ政府は同日、緊急閣議を開き、南部3県を対象にした非常事態の布告を決めた。布告はタクシン首相に強大な権限を与え、市民の権利制限も可能にする。政権は一時イスラム系住民に対する融和策に傾いたが、再び対決姿勢に戻ることになる。
昨年初めから続く南部の騒乱では、これまでに約810人が死亡している。独立運動を背景にした武装集団によるとみられるが、実態は明らかになっていない。
14日夜、ヤラー県では映画館、デパート、ホテル、レストラン、発電所など6カ所で爆弾事件があり、全県が一時停電。火炎瓶を投げつけたり、路面にクギをまいて警察官を待ち伏せ攻撃したりするなど、計23件の事件があり、警察官ら2人が死亡、20人以上がけがをした。治安当局は60人以上の武装集団が関与したとし、数人を逮捕した。
15日にはヤラー県のレストランで爆弾事件があり、ナラティワート県では車で学校へ向かう途中狙撃された教師2人を含む3人が死亡した。
非常事態は、南部3県ですでに実施されている戒厳令に代わるもの。戒厳令が軍の権限を強化するのに対し、非常事態布告は首相に、夜間の外出禁止や集会、出版の規制、令状なしでの拘束や家宅捜索、電話の盗聴などを命じる権限を与える。プミポン国王の承認を得たあと、一両日中にも布告される。
2月の総選挙を圧勝して発足した2期目のタクシン政権にとって、南部情勢はアキレス腱(けん)。ほとんどが仏教徒のタイでは、イスラム系住民が多数を占める南部は、開発の面でも置き去りにされてきた。住民の不満を背景にした武装集団の暴走に、政府は有効な対策を見いだしていない。
タクシン首相は4月、それまでの強硬策を批判され、アナン元首相を委員長とするイスラム系住民との和解委員会を発足させた。6月には、イスラム諸国会議機構(OIC)代表団による南部の視察を受け入れた。またカンタティ外相が11日、タイを訪問したライス米国務長官との共同記者会見で「国際テロとは無関係」と述べるなど、国際世論を意識して問題の沈静化を図ってきた。
しかし最近の事件は、警察官を銃撃したうえで首を切り落とすなど残酷性を増し、学校や教師を狙うなどして住民の不安をかき立てている。
まだ和解委の効果も明らかにならないうちに強硬策に転じることで、武装集団との対立がさらに深まることは必至だ。
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