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核開発進める北朝鮮 先制空爆準備する米国
危険な核ゲームにアジア民衆を巻き込むな
http://www.bund.org/editorial/20050525-1.htm
5月6日、「ニューヨーク・タイムズ」は、米政府高官の話として、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)がトンネル掘削など核実験準備を進めていると改めて伝えた。一方、ブッシュ政権は、北朝鮮に対する先制攻撃―核施設への空爆の準備を整えつつある。米国と北朝鮮による「核ゲーム」によって東アジアの平和と安定が大きく揺らいでいる。
6月北朝鮮核実験説?
北朝鮮は5月11日、「5000キロワットの実験用原子力発電所(寧辺の黒鉛減速炉)から8000本の使用済み核燃料棒を取り出す作業を終了した」と表明。「自衛的な目的で核武器庫を増やすのに必要な措置を取る」と、プルトニウム抽出もにおわせている。
8000本の燃料棒からは20〜30キロのプルトニウムが抽出できる。これは核爆弾4〜5個分に相当する。北朝鮮は2月に数個の核爆弾保有を公式に宣言しているが、実際に核実験が行われれば、朝鮮半島―東アジアの情勢は一気に緊迫する。核実験の強行は、日本をはじめとする周辺諸国に放射能汚染の被害をまき散らすことにもなる。
核実験を行うかどうかについては、北朝鮮当局はあいまいな対応を続けている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は10日の論評で、北朝鮮メディアとしては初めて核実験について触れ、「米国はわが国が6月に地下核実験を行うかもしれないとの勝手な見解を、国際原子力機関(IAEA)や日本をはじめ関係国に通報するなどして騒いでいる」と米国の姿勢を批判している。そこでは、核実験を行うかどうかについては言及していない。
北朝鮮の核実験強行について中韓両政府は懐疑的な姿勢を表明している。5月12日、中国共産党の王家瑞・対外連絡部長は、北朝鮮は実験を強行すれば国際社会から完全に孤立することを理解しているとし、「実際にそこまではいかない」と核実験の可能性は少ないとの見通しを明らかにした。韓国の情報機関・国家情報院の高院長も13日、「まだ兆候とみられる証拠はない」と核実験準備説を否定している。
韓国国内の一般的な見方は、北朝鮮は米国の偵察衛星による撮影を計算に入れたうえで、核実験準備の動きを誇張、核実験を新たな外交カードとして米国の譲歩(=金正日体制の承認)や、経済協力を引き出す「瀬戸際外交」を行っているとするものだ。こうした見方を韓国では「サラミ戦術」と呼ぶ。薄切りして少しずつ食べるソーセージサラミにちなんだ言葉だ。北朝鮮の核開発はあくまでも米国との交渉用と見ているのだ。
韓国内にも、北朝鮮は実際に核保有国を目指しているという意見もある。これを「ハリネズミ戦術」という。北朝鮮はハリネズミのように核武装して米国に対抗しようとしているというのだ。
こうした北朝鮮の動きに対し、ネオコンが主導する現在のブッシュ政権内では、「金正日は、核が北朝鮮の体制を保証する最も確実な方法だと考えている。核開発を中断するはずがない」と、先制攻撃も含めた北朝鮮封じ込め政策を主張する強硬論が台頭している。北朝鮮の核実験カードはあまりに危険なカードなのである。
北朝鮮封鎖の拡散防止構想
米NBCテレビは6日、北朝鮮の核実験を阻止するため、米軍が実験場など核施設への「先制空爆」を行う緊急作戦計画を既に立案していると報じた。NBCによると、国防総省は昨年9月以来、グアムとインド洋のディエゴガルシアに駐留するレーダーに捕捉されにくいB2ステルス爆撃機と、F15戦闘機を「警戒態勢」に置き、核施設「除去」の緊急作戦計画が発動されれば、いつでも北朝鮮空爆を実施できる状態にしているという。
すでにブッシュ政権は、軍事行動の前段として北朝鮮に対する海上封鎖の準備を進めている。5月6日は、ニコラス・バーンズ米国務次官(政治担当)は、「北朝鮮が6カ国協議に復帰しない場合、5カ国は他の『外交的選択』を議論しなければならない」と表明。バーンズ次官のいう「他の選択肢」とは、北朝鮮の核開発問題の安保理付託、拡散防止構想(PSI)による対北朝鮮制裁―海上封鎖の実施などをさす。
拡散防止構想(PS1)とは、ブッシュ米大統領が昨年、テロ対策の一環として、核・生物・化学兵器など大量破壊兵器を封じ込める手段として提唱したものだ。北朝鮮からテロリストへの大量破壊兵器の流出阻止を念頭に、不審な航空機や船舶を臨検できる態勢の国際的構築を言っている。8日には「ニューヨークタイムズ」紙も、「米国は『検疫作戦』と呼ばれる海上封鎖計画を安保理で通過させる案を考慮中」と報じている。
こうした情勢の中で、自民党の「対北朝鮮経済制裁シミュレーションチーム」は、北朝鮮が核実験に踏み切った場合、北朝鮮への送金停止や資産凍結などの経済制裁を関係各国に働きかけるとしている。さらに、安保理での制裁決議が見送られた場合は、米国など「有志連合」で制裁を発動することを検討している。対米追随一辺倒の小泉政権は、ブッシュ政権と歩調を合わせて北朝鮮敵視策を強めているのだ。
平和解決めざす中韓両国
それに対し中国と韓国は、北朝鮮による核実験よりも、日米による北朝鮮敵視政策こそが東アジアの緊張を高めているとの懸念を強めている。
中国外務省の劉建超・副報道局長は5月11日、「すべての関係国に自制を要請する。6カ国協議の再開を妨げるようなことがないよう期待する」と、核実験疑惑をもちまわって6カ国協議打ち切りを目論む米国を牽制した。13日には、中国外務省高官の楊希雨が、北朝鮮の核開発問題に関して、「努力が実らない根本的な理由は、米国側の協力不足にある」と指摘。ブッシュ大統領が先月、金正日総書記を「暴君」と呼んだことなどを上げ、交渉に向けた「雰囲気を台無しにした」とブッシュ政権を批判している。
韓国政府も、「6か国協議再開に向けた努力に否定的な影響を与える行動を直ちに中断し、協議に遅滞なく復帰するよう強く促す」(外交通商省)という立場だ。潘基文外交通商相は北朝鮮の核実験について「懸念すべきことだが落ち着いて対応する」と語っている。
盧武鉉政権は北朝鮮による核実験よりも、それに際して予想される米軍の北朝鮮攻撃への警戒感を強めているのだ。今年1月、韓国の国家安全保障会議(NSC)は、「北朝鮮有事」に備える米韓共同軍事作戦=「5029」に関して「韓国の主権侵害にかかわる政治的な内容を含むため、軍事作戦としては適切でない」と、韓国国防省に作戦中断だけでなく事実上の破棄を目指す方針を命じている。
「作戦計画5029」は、北朝鮮が核・化学兵器など大量破壊兵器への統制力を喪失したケースも「有事」とみなし、米韓両軍の特殊部隊の投入を想定するものだ。在韓米軍は、1994年のクリントン政権当時、既に対北核施設攻撃計画「5026」を作成している。
米韓相互防衛条約に基づき、韓国国軍の作戦指揮権は在韓米軍司令部が掌握している。韓国政府は、米軍が「5026」と「5029」の両作戦を連動させ、在韓米軍および韓国軍を動員した北朝鮮の核施設攻撃を行うのではないかとおそれているのだ。
盧武鉉政権は、統一コリアの実現に向けて、北朝鮮攻撃を画策する米国と明確に一線を画することを決断している。中国も北朝鮮問題に関しては、「6者協議は対話を通じて朝鮮半島の核問題を平和解決する正しくかつ唯一の道」と、6者協議を早期に再開する必要性を強調している。このような情勢下、東アジアの一員たる日本は対米追随一辺倒をやめ、北朝鮮―核開発問題の平和的解決めざす中韓両国と共同歩調をとるべきではないか。
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米国は東アジア共同体に反対
アーミテージ前米国務副長官 「米国抜きは深刻な誤り」
4月29日、アーミテージ前米国務副長官は朝日新聞社のインタビューに応じ、現在、米国抜きで設立準備が進められている東アジア共同体について、「米国がアジアで歓迎されていないと主張するのとほとんど変わりない」「深刻な誤りだ」と強く批判した。
同氏は、東アジア共同体構想の中で、日米安保や米韓相互防衛条約など、米国が構築した2国間同盟のネットワークが再検討されている動きについて、「そういう方向性が出ること自体が問題だ」と不快感を表明。さらに「中国は(東アジア共同体に)積極姿勢を見せている。米国を除いた協議に加わることには、非常に意欲的だ」と、中国脅威論を展開した。要するに米国は、日米・韓米・台米など、米国盟主とする2国間同盟のネットワークを維持し、東アジア諸国の自立・独立を阻止しようとしているのだ。
こうした米国に対して韓国の盧武鉉政権は、対米従属からの離脱=独立という方向性を明確にしている。盧武鉉大統領は、今年の陸軍士官学校卒業式で「われわれの選択によって北東アジアの勢力図は変化するだろう」と演説。韓国は伝統的な日米韓の「南方三角同盟」から離脱し、「東北アジアのバランサー」しての役割を目指すとした。東アジア共同体を目指す韓国の、米国からの独立宣言なのである。
すでに日中韓三国間の貿易は対米貿易を大きく上回り、日中韓三国の相互依存関係はかつてなく深まっている。経済的な東アジア域内の結びつきは年をおうごとに深まり、もはや切っても切れない関係になっている。
日本の経団連も、今年1月18日に発表した「わが国の基本問題を考える」と題した意見書では、「東アジア諸国は、世界の成長センターであり、国際的な競争相手であるとともに、相互依存関係を深めるパートナーでもある」と、「東アジア自由経済圏を早期に構築することこそ急務」の立場を打ち出している。
脱亜入欧で近代化に成功した日本だが、今や「脱米入亜」へと梶を切るべきときが来ているという認識は、時の声になりつつある。
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米軍北朝鮮攻撃のシミュレーション
核バンカーバスター1個で43万人が死傷
英国の著名な核専門家であるジョン・ラージ博士は5月2日、韓国の聯合ニュースとの会見で、米軍が北朝鮮の寧辺(ヨンビョン)などの核施設を爆撃した場合、核弾頭1個を投下しただけで放射能により最少43万名の死傷者が発生するというシミュレーション結果を公表した。「米国の新しい先制打撃(first strike)$ュ策により、韓国人が危険に直面している」との警告だ。 ラージ博士は、「北朝鮮が核兵器保有を公式化し、核実験準備説の提起などにより危機が高まっていることから、米国の北核問題解決のオプションが次第に減っている」と、米軍による北朝鮮攻撃の危険性が高まっていることを指摘。「米国は北朝鮮を攻撃する場合、大規模な兵力配備が難しい上、軍事施設が地下数十メートルに隠れているため、バンカーバスターという特殊貫通弾を使用する可能性が高い」と、米軍による北朝鮮攻撃のシナリオも予想している。
そうなれば米軍の攻撃に対して北朝鮮側も、可能な限りの反撃を試みるだろう。第二次朝鮮戦争へと戦火が拡大する恐れもある。その結果43万人どころか、それを数倍数十倍する被害者が続出する。被害を受けるのは遠く離れた米国ではなく、日本も含む近隣の東アジアの国々だ。戦争を許さない平和外交こそが必要だ。
(2005年5月25日発行 『SENKI』 1179号1面から)
http://www.bund.org/editorial/20050525-1.htm