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野村進氏の『コリアン 世界の旅』 というレポを読んだ事はあるだろうか。この日本における最大のマイノリティーである在日朝鮮人のありのままの姿がわかる貴重な書籍である。
野村氏は在日朝鮮人がインビジブルな存在であるという。たしかに彼らはこの国に存在するが、しかし我々には日頃認識されてはいない。紅白歌合戦もプロ野球も彼ら無くしてはなりたたない。しかしそこに彼らを認識する日本人はほとんどいない。
野村氏のレポはなぜ在日朝鮮人がインビジブルなのかという疑問から始まり、そして在日の生活、そして他の国での韓国系市民の動向をも織り交ぜながら日本での在日という存在について考えていくものである。
このレポ自体は1997年に講談社より出版されており、拉致事件発覚、日韓ワールドカップ、韓流ブームは扱われてはいない、しかしそれらが含まれていなくともこのレポほど在日の実態に迫ったものは私は読んだことが無い。必読のレポである。
さて今回の投稿ではその『コリアン 世界の旅』から在日朝鮮人の民族固有の商売とも思われているパチンコについて触れた部分を少し紹介したい。
野村氏のレポはあのソフトバンクのトップ孫正義が1996年毎日経済人賞(毎日新聞社主催)受賞スピーチで涙ぐみ絶句するところから始まる。
『子供の頃、家は貧しいものでした。近所から残飯を集めて家畜の餌にしていた・・祖母がリヤカーを引っ張って貰いに・・・ときどき自分をリヤカーに乗せてくれるのですが残飯がどこかに残っていてぬるぬるして気持ちが悪かった・・・それが今は立派な経済人と認められ・・・祖母も頑張っていたのです・・・私も頑張って・・・・』
孫正義が涙ぐんだのは単なる貧乏生活を思い出してというだけではないと野村氏は指摘する。そこにあった涙は在日という境遇にも関わらずようやくここまで来たという涙、日本人には分からない涙であるという。
実は孫正義の父親の商売はパチンコ店経営などにより、四人の子供に教育を受けさせた在日なのである。
野村氏によるとこのパチンコという商売、未来永劫在日が支配しぼろ儲けを行っているというイメージとはかけ離れた実態があるという。パチンコ業界に関わる在日の多くは自らもまっとうな商売とは思っておらず、店を子供に継がせたくないと考えているのだ。そしてできるだけ子供に良い教育を受けさせ別の道に進ませることを狙う。
つまり孫正義の涙というのは祖母の豚の餌集めから始まり、父はパチンコ店経営で教育費を稼ぎ、そしてようやく自分の代でまったくパチンコとはかけ離れたもので一流のビジネスマンと称えられるようになった在日朝鮮人家族としての苦労そして成功を思っての涙であろうというのだ。
ではなぜパチンコ店経営は在日にも嫌われているのか、大金を儲けられる割の良い商売ではないのか。この点については野村氏はとある在日にインタビューし、普段語られる事の無い在日のパチンコ店経営に関する真実をレポしている。
それによるとパチンコ店経営が嫌われる理由はまず第一にその生い立ちによるという。パチンコが流行し出したのは戦後まもなく、景品としての煙草が魅力であったからだが、当時は覚せい剤の密売や盗品売買で財を成したものがそれを元手にパチンコ店経営を行うという事が多かったらしい。これが悪評の始まりであるという。
もちろん日本人も数多くパチンコ店経営を行っていたのだが、前身がまっとうでないため、社会が復興するにつれ、日本人はどんどん他の職業へ転職し、就職などで差別され行く当ての無い在日のみがパチンコ業界に残されたのである。業界は六割から七割の割合で在日であるが、けっして在日が好きでパチンコ店経営をやっているわけではないという。
しかもパチンコ業界に残っていても苦労は耐えない。まず暴力団の影が常にちらつく。多くのパチンコ店は暴力団からぼられ放題だという。そもそも覚せい剤の密売や盗品売買で得た資金から開店した者が多いのだから、暴力団が介入しない方が不思議である。「みかじめ料」と呼ばれる用心棒代もちろんのこと、観葉植物、おしぼり、正月の門松まで、月々数十万単位でかすめとられている。そして一番草刈場なのが景品交換所であるという。暴力団直営というものも多く、さらには直営で無くとも「手数料」と称して数%のマージンを引かれるという。その金額は月で一千万以上になる店もあるという。
もちろんそれを拒否すると弾が飛んで来たり、糞尿を撒かれたりと、とんでもない営業妨害を受ける為、多くの店は暴力団の言いなりである。ただし、これはあまり在日の人間は恐れてはいないという。何しろみかじめ料などを要求してくる相手にも在日が大勢いるからである。「ヤクザは決して手は出してこない。大声で脅されても朝鮮では大声の罵り合いは当たり前で慣れてる。それに脅してくる相手も在日二世だったり」。
だがレポによると、在日パチンコ業界関係者が心底恐れる存在があるという。それはヤクザではなく逆に市民をまもるべき警察なのである。
そもそもパチンコ業界は生殺与奪権を警察庁の生活安全局(銃器や薬物を扱う部署)にすっかり握られているのである。開店時には設計図通りかの検査を受けるのはもちろん、抜き打ち検査も度々であり、しかも処分も厳しく系列店三十店舗の営業取り消し処分を食らったグループさえあったという。さらに外国籍である在日は絶対に警察の外事課にも頭はあがらない。以前は少しでも反抗的な態度をとると露骨に「朝鮮に送り返すぞ」と強制送還するという脅しにあうこともあったという。
であるからして警察には絶対服従というのがこの業界の鉄則である。つねに「平身低頭。警察の方とは親睦を」ということに業界ではなっている。ゆえに警察関係者への豪勢な接待も当たり前。しかも最近はその警察からも、パチンコ業界は、接待どころではない巨額の利益を搾り取られているのである。ご存知の方も多いかもしれないがプリペイドカード導入である。これはいわゆるテレカをパチンコに導入したようなものであり売上が全てカード会社に記録されるため脱税対策にもなるとして導入されたものであるが、しかしそのカード会社に警察関係者が多数天下りしているのである。
警察の方針には絶対服従という鉄則に反し、導入に反対した者もいたが、「北朝鮮へ送金しにくくなるから反対しているのだ」という出所不明の噂が週刊誌に流されあえなく反対運動は潰された。しかもプリペイドカード導入機種は博打性をあげてもよいというとんでもないお達しが警察から出るに及んでほとんどの店舗でプリペイドカードが導入され、業界は元警察官の老後も養う事になったのである。
暴力団からはぼられ、警察にも平身低頭、度派手な外観とは違い、パチンコ業界は実に厳しい世界なのである。しかもギャンブルという負のイメージ、そして裏社会などとも繋がる怪しげな開店資金、
子供に継がせたくない商売であることはうなずける。
もちろん、業界の中には、パチンコ健全化を掲げ、誇りをもって経営を行う者もいる。しかしレポによればそれも諸刃の剣であるという。つまりまっとうな商売で無いからこそ在日に残されていたのであり、それが健全化すると日本人も投資を行ってくる、そしてそれには中小の在日のパチンコ店では太刀打ちできず、また一つ在日の職業が減る事に繋がるというのだ。実際以前より負のイメージが少なくなってきた業界では格段に競争が激化しているという。著者はそのような業界の状態を「深い海に追いやられた魚が突然、海面近くに引き上げられ厳しい生存競争に晒されている状態」と形容する。
そしてパチンコのCMをなんの違和感も無しにテレビで見れるようになった現在、筆者がレポを書いた時以上に競争は激化している。店舗も大規模化が進み、郊外に宮殿のようにそびえたつパチンコ屋も珍しくはなくなった。しかしそれらは在日パチンコ業界繁栄の証ではないことを我々は知らねばならない。それはインビジブルなマイノリティーが自らの生存をかけて悲鳴をあげながらまさに博打のようなハイリスクで経営している砂上の楼閣なのである。