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ともに歌えアジア
「シャウトオブアジア」最後のクライマックスで「HANA」を歌うミュージシャンら
音楽をテーマにしたドキュメンタリー映画が元気だ。中でも23日から都内で公開されている韓国・日本共同制作の「シャウト オブ アジア」は異彩を放つ。撮ったのは、在日韓国人で東京を拠点に活動する玄(げん)真行(まさゆき)監督(46)。主演は韓国のロックミュージシャンのカン・サネさん(42)。二人に話を聞いた。
映画は、カンさんが日本や中国、東南アジアのミュージシャンを訪ねる旅を追った。カンさんはそれぞれの地のミュージシャンたちと歌を作る。
例えば日本では、沖縄の歌姫と呼ばれた「MARIE」(マリー)と。フィリピンでは元ジャーナリストの「ジョーイ・アヤラ」、インドネシアでは絶大な人気を誇るバンド「スランク」、中国では朝鮮族のボーカルグループ「アリラン・バンド」などとかかわりあう。
最後に、韓国・ソウルに結集。皆で作った「HANA(韓国語で『一つ』の意味)」を合唱する。歌を通して、それぞれの国が抱えた問題がスクリーンに浮かび上がってくる。
玄監督は、ジャマイカの伝説的レゲエミュージシャン、故ボブ・マーリーの生き方に感銘を受け「アジアにも、彼のように音楽で国を変えようとしているミュージシャンはいないのか」と探してみた。そして韓国で出会ったのが、カンさんだった。カンさんの両親は、朝鮮戦争の際、北から逃げてきた離散家族。カンさんは、平和への願いを歌い続けていた。
監督はカンさんと旅することに決める。「圧倒的に強い何かを感じた」(玄監督)からだった。
旅は二〇〇三年に行われた。監督は「自分は東京で生まれ育った在日。どうしても人間の負の部分に目がいく。音楽でも、欧米のキラキラしたものより、アジアが気になる。人口も多く地域も広いアジアに、今の地球の問題すべてが入っている」と説明する。
旅の途中、フィリピンのミンダナオ島ではちょうどテロ事件があり、韓国滞在中にイラク戦争が始まった。貧困やDV(家庭内暴力)、民族紛争など、さまざまな問題に遭遇したが、最後は、“戦争の問題”に集約されていく。
「登場するミュージシャンは皆、戦争のDNAを引きずっていた。それを歌にしている」と旅の感想を語る監督。「戦争がなければ、在日という自分もいなかったし、離散家族としてのカンも、米国人との混血であるMARIEも存在しなかった。それを思うと、戦争って恐ろしい」
主演したカンさんは一九九二年に、南北分断の中で生きる人々の気持ちを歌ったデビュー曲「ラグヨ(だってさ)」が大ヒット。映画の中でも歌われるが、実は、八九年にカンさんが日本に留学中に作った曲だという。
カンさんは「急に母を思い出し、お金がなかったので、歌をプレゼントした」と話す。当初は反日感情があったが、カンさんは東京の多様さに衝撃を受けた。「楽しくてリラックスし、自然に音楽が浮かんできた」
カンさんの音楽の才能を開花させたのは東京の街だったのだ。
「今、韓国や中国で起こっている反日運動はどこかおかしい。社会通念ではなく、自分の経験と判断が大事だと思う。今回の映画で旅ができたのもいい経験でした。アジアを身近に感じた。自然に愛したいと思った」
カンさんはそう言い切った。
同映画は、渋谷シネ・ラ・セットで公開中。
文・吉岡逸夫
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20050425/mng_____thatu___000.shtml