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Newsweek 2005.04.13号
証拠は黙殺され ブッシュは無傷
非難されたのはCIAの失敗ばかり
昨年7月、米上院の情報特別委員会は、対イラク開戦の引き金となった大量破壊兵器情報は誤りだったとする報告書を発表した。その中でブッシュ政権が、サダム・フセインを「有罪」にする証拠を必死で探していたことを示す電子メ一ルの存在が明らかになった。
それは03年2月4日付のもので、発信者はCIA(米中央情報局)高官。イラクで移動式の生物兵器製造装置らしきものを見たと主張するイラク人亡命者(暗号名はカーブボール)について、ClA分析官がどんな議論をしていたかが記されていた。
CIAはその数カ月前に、カーブボールがひどいペテン師だという証拠をつかんでいた。だがこのメールでCIA高官は、カーブボールの主張に懐疑的だった分析官を叱責している。
「覚えておけ。『カーブボール』が何か言っても言わなくても、この戦争は起きる。権力者たちはおそらく、彼が本当に知っているかどうかには興味がない」
翌2月5日、コリン・パウエル米国務長官が国連安保理で演説し、イラクの大量破壊兵器保有をめぐる機密情報を開示。パウエルは、「カーブボール」の目撃証言にも言及した。
そして先週、ジョージ・W・ブッシュ大統領が設置した超党派の独立調査委員会が601ページに及ぶ最終報告書を提出。開戦前の情報機関の分析は完全に誤りだったとあらためて指摘した。
「カーブボール」のでっち上げを、政府首脳がどのように信じたかも詳細に記している。
●無視されたメールの存在
独立調査委員会はほぼ全面的に、情報機関側の失敗を批判。彼らには鑑識眼も想像力もないと、こき下ろしている。
だが、ブッシュ政権首脳部の責任については触れずじまい。
「政治的圧力に屈して、情報分析上の判断が変えられたことはない」と、結論づけた。
上院の報告書にあったClA高官の電子メールにいっさい触れていない点も気になる。というより、委員会の上層部はその存在すら知らなかったようだ。
本誌記者が、なぜ今回の報告書で取り上げなかったのかと聞くと、「何の電子メールのことだ?私にはよくわからない」と、共同委員長のローレンス・シルバーマン元判事は答えた。
それから2時間後。本誌が文面のコピーを委員会に見せると、広報担当者は「電子メールの存在は知っていたが、周知の内容だったので報告書には盛り込まなかった」と説明した。
そうだとすると、独立調査委員会は「当局」を政治的に窮地に陥れかねない証拠をすべて排除したのではないか、という疑問がわいてくる。
ブッシュ政権は、これを否定する。政権が嘘をつき、機密情報を曲解したという見方はこの報告書でなくなるだろうと、ある高官は言う。「私たちは内密に教えられたとおりに、公の場でも語っていたと国民は理解してくれている」
独立調査委員会は、面接した情報分析官たちは「政治的圧力で判断を変えたことは一度もないと断言した」と主張する。
それでも、重大な疑問は残る。情報の信憑性が疑われたとき、なぜもっと真剣に検討しなかったのか、と。
マイケル・イジコフ(ワシントン)
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