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米国・スペイン「対テロ戦争協力体制」構築が着々と:一方バスクで「ETA支持」増加
近頃のニュースをまとめてみます。それぞれの記事は内容ごとにまとめて簡単に紹介だけしますが、続けてみると面白い流れが出来上がります。
スペイン政府は立て続けに閣僚が訪米し、その後に国王夫妻の公式訪問を行う予定にしています。まず外相が4月13から5日、内相が18〜20日、国防相が5月2〜5日、法相が5月4〜5日、その後に教育相が訪れます。予定は決まっていませんが、おそらく近いうちにサパテロ首相自身が訪米するでしょう。
まず、外相のモラティノスが先日(4月13日〜15日)米国を訪れ、昨年来冷え切っている(と一般的には思われている)米西関係の修復(の名目)のために訪米しました。
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『モラティノスはライスを前に、スペインの外交政策に対する米国の不信を克服する予定』(エル・ムンド:4月13日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/13/espana/1113359274.html
スペイン外相ミゲル・アンヘル・モラティノスは、ライス国務長官とスペインの双方外交への理解を求めるために訪米。スペインはベネズエラのチャベス政権と関係を強め、キューバのカストロ政権との関係を修復する予定である。一方でアフガニスタンの再建計画に軍派遣の協力、近東政策ではロード・マップを支持している。モラティノスはこの他に、国連総会議長Jean Ping、IMF総裁ロドリゴ・ラトと会見、米国の主要なユダヤ人団体を訪問する予定である。
『モラティノスと米国議員はベネズエラとキューバに関して合意を得られず』(エル・ムンド:4月14日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/14/espana/1113442243.html
モラティノスは米国議会外交委員会と会合を持ち、ベネズエラとキューバに対する政策を討議したが理解は得られなかった。一方でIMFのロドリゴ・ラトと会談し、民主主義の確立のためにIMFと世界銀行の協力による経済的・社会的な発展が必要であると合意。
『モラティノスはライスとの会談後「もうサパテロの訪米に障害は無い」』(エル・ムンド:4月15日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/15/espana/1113556663.html
ライス国務長官と4時間にわたる会談したモラティノス外相は、双方の対話は「完全に正常化した」とし、もはやサパテロ首相が訪米するのに何の障害も無い、と語り、国王夫妻の米国公式訪問にも道が開けた、と発表した。会談はアラブ世界とラテンアメリカが主題で、ラテンアメリカには自由と民主主義が必要であるとの一致を見た。
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次に、スペイン内相のアロンソが対テロ戦争協力体制構築を進めるために4月18〜20日の予定で訪米します。2つの記事をまとめて内容を書きます。
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『対テロの戦いへの協力を強化するために、アロンソは米国を訪問する』(エル・ムンド:4月9日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/09/espana/1113030872.html
『アロンソはテロに関する協力を強化するために米国訪問を開始』(エル・ムンド:4月18日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/18/espana/1113794027.html
スペイン内相のホセ・アントニオ・アロンソは国家反テロ協力センター長官ミゲル・バルベルデを引き連れて18日〜20日に米国を初訪問する。18日に米国国家保安次官マイケル・チェルトフ、法務長官アルベルト・アロンソ、FBI長官ロバート・ミューラーと会談、19日に麻薬対策委員会(DEA)長官カレン・P.タンディ、戦略と国際研究センター(CSIS)で公演、国家反テロセンター次官アルツ・コミンズと会見。20日にCIA長官ピーター・ゴスと会談の予定。
EUと米国は地政学的に同じ空間にあり、利害は一致しており、内相はテロと組織犯罪の防止のために両国の情報交換の体制構築を進めるつもりである。
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また、米国「留学」中の現代の異端審問官バルタサル・ガルソン判事は、ニューヨーク大学で講演し、「テロとの闘い」の自らの経験を元に「民主主義」についての講義を行って、米国の法制度と「対テロ戦争」に対する違和感を表明しています。
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『ガルソン判事、ニューヨークにて、スペインから米国に民主主義を説く』(IBLNEWS:4月15日)
http://iblnews.com/txt/noticia.php?id=127168
ガルソンはニューヨーク大学での講演で「米国では理解されないかもしれないが、反テロの戦争は存在せず、反テロの戦いがあるのだ。」と語った。そして、米国の反テロ法案である「愛国法」のようなものはヨーロッパでは成立しないだろう、また、死刑制度は決して有効な結果を出していない、と述べた。
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ただ、このような新聞記事の表側だけでは、実際に進んでいる事柄は見えてこないでしょう。昨年のイラクからのスペイン軍引き上げも「臭い芝居」の一つだったようですし、アフリカの資源略奪ではイラク戦争とは無関係に米国と英仏西といった欧州各国の「協力」が作られています。
3月のマドリッド会議ではっきりと方向性を打ち出された米国とEUが主導する「対テロ戦争」体制構築はもはや止めようもなく進んでいます。要するにスペインの閣僚たちがEU中央の意図を受けて米国との様々な分野での折衝役を務めているわけで、教育相までが訪米する、国王の公式訪問の日程を詰める、ということは単なる外交折衝ではありません。フアン・カルロス1世は政治家の格としてはブッシュなど目ではありませんので。
そうした折、スペイン国内では昨日バスク州の議会選挙が行われ、スペインからの漸進的な「独立」を進めようとするバスク州知事イバレチェのプランが逆に彼の与党バスク民族党の議席を減少させました。バスク民族党は第1党ですが過半数には大きく届かず、今後のバスク州内部での混乱は広がりそうです。同時に国民党はここでも議席を減らし、社会労働者党は大きく議席を伸ばしたのですが、最も注目されるのがETAの母体の政党である、急進独立運動バタスナ党です。
一昨年にアスナールがイラク戦争協力のご褒美としてブッシュからバタスナ党の「テロ組織指定」をしてもらい、選挙などの活動に合法性を失わせたのですが、彼らは今回は小さな極左組織「バスク大地の共産党」に投票するように呼びかけ、75議席中8議席と、前回の選挙よりも2議席を伸ばす、という結果を出しました。
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『イバレチェの失敗がPSOE−PPの背後で3分裂を残す』(エル・ムンド:4月17日)
http://www.elmundo.es/elmundo/2005/04/17/espana/1113764951.html
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バスク州でのETAと急進独立運動の基盤は強固であり、このままいくとこの「バスク大地の共産党」が中央の国会にまで議員を出しそうな雰囲気です。この党はスペイン共産党の流れを汲む統一左翼連合とは関係なく、名前から分かるとおり民族主義の色彩が濃い極左組織です。ETAは民族派と左翼派で多くの内紛を繰り返してきており、現在は民族派が主体なのですが、ここでまた左翼派との連合が出来たようです。
ただしETAは、CIAやMI6、フランスやスペインの諜報組織との関係を持っていると見られ、欧州での「対テロ戦争」で今後再び「目玉商品」の一つになってくるのかもしれません。