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4月12日―メデアを創る
◇卒業式をめぐる一つのエピソード
東京都立のある高校で行われた卒業式をめぐって、父母たちの間で口々に語られた一つのエピソードがあるという。サンデー毎日4月24日号で知った。
卒業証書を受け取った一人の卒業生が、壇上からこう言い放った。
「都教育委にお願いしたい。先生方をこれ以上いじめないで」
この痛烈な批判に、卒業式の会場を埋めた生徒や保護者からは大きな拍手が沸いたという。
私は見落としていたのだが、この出来事は新聞でも大きく報じられ話題になったらしい。
この事件に心を動かされた一人であるという作家の赤川次郎氏の言葉がまたよかった。
「・・・そういうことを学生に言わせなければいけないというのは、本当に教育者として情けないことだし、あの言葉を聞いて、胸を痛めなかった人がいたとしたら、先生を辞めたほうがいいだろうと思いますね・・・」
この赤川次郎という作家に注目したい。詳しくはサンデー毎日を読まれるといいが、小泉首相や石原慎太郎のような単純かつ扇動的な発言者の対極にある、戦う言葉を持つ平和主義者に違いない。
◇こうも違う指導者の言葉
12日の新聞で、たまたま目にした指導者の言葉の違いに、ため息が出た。
ユダヤ人収容所の解放60年記念式典に出席したシュレーダー独首相は、式典会場であるワイマール国民劇場で次のように決意を新たにした。
「戦争犯罪を決して繰り返させない課題」を「世代を超えて伝えていく」(12日、しんぶん赤旗)
その独を訪問中のノムヒョン韓国大統領は、在独韓国人を前にした演説の中で次のように述べた。
「・・・北東アジア全体で確実に平和構造が定着し、その上で安心して暮らせる地域、いわばEUのように進めばいい・・・(残念ながら南北関係の)発展が難しい。(北朝鮮の核問題については)苦言を呈し、(怒りで)顔を赤らめる時には赤らめなければならない・・・核兵器を拡散させずに平和体制を維持することで合意しており、(核不拡散条約に基づく)秩序は尊重されねばならない・・・」(時事)
我々は小泉首相から一度たりともこのような政治家としての、指導者としての、中味のある言葉を聞いたことがあるであろうか。
「人生いろいろ」、「改革なくして成長なし」、「対話と協調」、「日米同盟と国際協調」、「ライスではなくビーフ」だ、などと言う「小泉語録」を面白がって聞いている場合ではない。
折から中国で高まる反日運動を前に、靖国神社参拝との関係を聞かれた小泉首相は、「それとこれとは別」と不機嫌に答えるだけである(12日各紙)。
12日の読売新聞の世論調査では、小泉内閣の支持率は1.6ポイント減少したというが、いまだ47.8%である。日本国民が問われている。
◇米国識者の東アジア観
12日の朝日新聞は米国の二人の有識者のアジア観を対置させている。その一人であるトーマス・バネット米海軍大学教授の発言に注目したい。同氏は01年から03年まで米国防総省で戦略計画補佐官を勤めていたという。米国にもこういう考えを公言する者がいるということだ。
「・・・日本が中国よりも米国を選ぶというのは馬鹿げている・・・政治家や自衛隊は中国を警戒して米国との軍事同盟を強化し、日米で台湾を守ろうとしているが、それは無意味な行為だ・・・中国を軍事的に封じ込めることが外交的、経済的にいかに高くつくかということを戦略家は知るべきだ。むしろ、中国がアジアや国際社会に安心して入れるように環境を整えるべきだ・・・日、中、韓が時間をかけて北朝鮮再建に取り組めば、3カ国の経済協力関係を深める絶好の機会になる。それは東アジア版NATOをつくる弾みにもなる・・・」
もう一人の識者はトーマス・ドネリー氏である。アメリカンエンタプライズ公共政策研究所の研究員であり、中国の軍事的威嚇に対しては「きちんと代償を払わせなければならない」とする強硬派である。その主張は一言で言えば米国の基本戦略は、「軍事力による世界秩序の維持と世界の民主化」ということであり、その重点地域が「中東」と「東アジア」ということになる。
これ以上彼の意見を説明するまでもない。しかし彼の次の発言は極めて重要だ。
「・・・米国の中東政策は01年の同時多発テロ以降、大きく変化した。それ以前は石油を安定供給させるために政治的安定を重視していた。しかし、同時多発テロを機に、中東諸国は抑圧的なうえ政治的にも安定していないことがわかり、中東で民主化を推し進めて安定した国づくりを進めていく方針に転換した・・・」
すなわち米国は中東をあくまでも自らの都合でしか見てこなかったことを白状しているのだ。中東諸国の政治体制がどうであろうと中東の国民が圧制に苦しもうと、石油供給が確保されればよかった。しかし反米テロのおそれが出てきたので自らの安全保障の確保の為に中東諸国の体制を根こそぎ変える必要が出てきた。ただそれだけのことである。
アラブ人のためを思って民主化といっているのでは決してない。自国の安全保障のための親米政権づくりを行うということだ。もっとも米国はこれまでも同じような事をやってきた。今回は、「テロとの戦い」と「民主化」という二つの都合の良い言葉の下に、白昼堂々と体制転覆を図ると公言しているに過ぎないのだ。それに尻尾を振って加担しようとしているのが小泉外交だ。
◇小泉首相の責任だ
久し振りに朝日らしい社説を目にした。立場の違う産経新聞や読売新聞には、決して書けない(書かない)社説である。
「(・・・一連の反日運動の広がりには中国に強く注文をつけるのは当然である。しかしその前に、日本は効果的な外交をしてきたと言えるのか・・・)
参拝をやめてほしいという中国側の度重なる要請を聞き入れず、なお参拝に意欲を見せるという姿勢が、どれほど中国人の気持ちを逆なでし、「過去を反省しない日本」という印象を広げてきたか。
中国だけではない。「私の任期中は歴史問題を争点とする気はない」とまで言っていたノムヒョン大統領の豹変を招いた裏には、日本外交の思慮の乏しさがあったのではないか・・・
首相は予算成立後の記者会見で外交の行き詰まりを聞かれて、「八方ふさがりとは、全然思っていません。日韓も日中も日ロも前進しています」と答えた。あきれた話である。プーチン大統領の訪日はめどが立っていない。北朝鮮の核問題や拉致問題も身動きできないままだ。これは、八方ふさがりというしかないではないか・・・
今の日本社会では「毅然」や「断固」といった威勢のいい言動が好まれがちだ。政治家にも同じ傾向がある。しかし、首相には大きな国益を考えてもらいたい。靖国神社に参拝し続けることに、どの様な国益がかかっているのか・・・」
小泉首相は22日からインドネシアで開かれるバンドン会議50周年の会議に出席するという。彼は非同盟運動の源流であるバンドン10原則を知っているのだろうか。
バンドン精神にもっともふさわしくない人物が日本を代表して会議に出席する。その際に日中首脳会談を行う。どんな演説をするのか。どんな会談になるのか。これは見ものである。
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