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【社説】2005年04月02日(土曜日)付
米国の情報力 これで戦争をするとは
イラクに大量破壊兵器がなかったことは、昨年10月、米国の現地調査団が決着をつけた。では、米国はなぜ「ある」と信じたのか。情報機関があまりにお粗末で、まったく誤った判断を政権中枢に伝えていたからだった。
ブッシュ米大統領が設置した超党派の独立調査委員会が、こういう報告書をまとめた。1年以上におよぶ徹底的な調査の結果である。
イラク攻撃に踏み切るかどうか、米国のぎりぎりの判断の前提には信頼できる情報があるに違いない。攻撃への賛否は別にして、多くの国々はそう考えていた。それなのに、米国の情報力がまったくなっていなかった。あいた口がふさがらない、というしかない。
米国に追随してイラク戦争を支持し、部隊を派遣した有志連合の国々も驚いたことだろう。
米国の情報力やそれに基づく分析、判断に深刻な疑問符がついたのである。では、いま国際社会が難しい対応を迫られている北朝鮮やイランの核疑惑に関する情報は、どこまで信頼できるのか。日本をはじめ、米国の情報に依存している同盟国も不安にならざるをえない。
700ページ近い報告書は、あきれた失策の数々を列挙している。その上で、米中央情報局(CIA)などについて、「集めた情報はあまりにも少なすぎ、しかもそのほとんどが無意味か、的はずれのものだった」と批判した。
イラク攻撃の前、ブッシュ大統領は毎日、ホワイトハウスで情報分析報告を受けていた。その内容は「冷静さに欠け、驚くほど一方的だった」とされた。
政権が情報機関に圧力をかけ、結果的に誤った判断を導いたのではないか。米国内ではこんな疑問も語られてきたが、報告書は「調査権限の範囲外である」として触れなかった。
だが、誤った情報をそのまま受け入れ、戦争という究極の政策決定をした以上、その政治責任は問われるべきだ。
驚いたことに、ブッシュ大統領は、報告書を称賛したうえ、「情報機関の抜本的な改革が必要だとの結論に同意する」と述べている。ひとごとのような言い方である。
開戦以来、この2年間の死者はイラク側が約2万人、米英軍などの多国籍軍で1600人以上にのぼる。人質となって殺された外国の民間人も多い。
独立調査委員会は、北朝鮮とイランを含む「核疑惑国」に関しても、情報の信憑(しんぴょう)性を調べた。その詳細な調査結果は機密情報として公開されなかったが、これらの国々の兵器計画に関する情報が「驚くほど限られている」と失望を表明した。
大量破壊兵器の拡散は、国際社会全体の脅威である。常に十分な情報が得られるわけでもない。だが、それにしても米国の情報にあまりに振り回されてはいないか。報告書は、それを自問する機会を与えてくれた。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050402.html