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核心
2005.04.01
世銀に『ネオコン総裁』 ウルフォウィッツ氏承認へ
世界銀行(本部・ワシントン)は三十一日の理事会で次期総裁に、米外交戦略を牛耳る思想家集団「ネオコン(新保守主義派)」の旗手、ウルフォウィッツ米国防副長官を選出する。対イラク開戦を主導した同氏の起用に、難色を示す欧州主要国から“事前面接”まで受けての異例の選任劇。米、欧それぞれの思惑を探った。
■米国
世銀理事会前日の三十日。ウルフォウィッツ副長官はまだ、欧州連合(EU)の本拠地、ブリュッセルにいた。
「ネオコン総裁」の実現で、世銀の途上国支援が米国の世界戦略に取り込まれないか−。懸念を深める欧州各国に所信を説明し、事前に支持を取り付けておくためだ。集まったEUの各国閣僚たちを前に、副長官は「私が世銀総裁として最初に訪問するのはアフリカ諸国だ」と語気を強めた。
「アフリカ」は、欧州の警戒心を解くために入念に計算されたキーワードである。
アフリカからの難民流入、感染症などの拡大は旧宗主国が多い欧州の安全を脅かす。それは、アフリカの最貧国支援を重視し、米国出身ながら米ブッシュ政権とは距離を置いてきた現総裁、ウォルフェンソン氏への欧州の信頼感を踏まえ、現行路線の継承を望む欧州側の期待感をくすぐる発言でもあった。
だが、ブッシュ政権は二期目外交政策の最重要課題として、中東などへの「自由と民主主義の拡大」を提起。その理論的支柱ともいえるウルフォウィッツ氏の起用には、世銀融資を対象国の「体制民主化」の踏み絵として使う米国のシナリオが透けて見える。
その副長官自身、十六日発表の声明で「繁栄の利益をより多くの人が享受できるようになれば、平和と自由も前進する」と強調。EUでの融和的な発言とは裏腹に、米国の価値観を世界に広げるというネオコン思想を強くにじませた。
「聞く耳は持つが、政治的信念は必ず達成するよう努力し、大統領の信認が厚い」。外交筋のウルフォウィッツ評の背後にちらつくのは、覆い隠しようのないブッシュ政権の濃い影だ。
英紙によると、ウルフォウィッツ氏は世銀のスタッフに、米政権でイラク復興に関与してきた女性担当官を採用した。欧州を慎重に懐柔する一方、世銀の支援融資の軸足を、途上国からイラクなど中東復興に振り向けるため、同氏の周到な準備は既に始まっている。 (ワシントン・久留信一)
■欧州
三十日、ブリュッセルでの“事前面接”後、記者会見で「ウルフォウィッツ総裁支持」を表明したEU議長国・ルクセンブルクのユンケル首相は、どこか煮え切らない表情を浮かべた。
その十日前、同国のクレッケ経済通商相は「EUは憂慮の念を抱いている」と強調したばかり。フランスのバルニエ外相も「(米国の指名は)一つの提案にすぎない」と冷淡に言い放っていた。
欧州で、ウルフォウィッツ氏への疑念の空気が一転するきっかけをつくったのは、シュレーダー独首相だった。首相は二十一日のインタビューで「総裁選出で反対はしない」とブッシュ大統領に電話で伝えたことを明らかにした。ドイツは二月のブッシュ訪欧で対米関係の改善をアピール。国連安全保障理事会の常任理事国入りへの支持取り付けのためにも、対米協調路線が得策との考えが背景にあったようだ。
フランスも話に乗った。総裁人事に反対しない見返りに、世銀副総裁のポスト新設とフランスからの登用を要求。さらに世界貿易機関(WTO)の事務局長にラミー元欧州委員を、また国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のトップにクシュネル元保健相の起用をもくろむ。
英国は国連開発計画(UNDP)の総裁ポストを目指しており、利権をめぐる「大国間でのいす取りゲーム」(仏リベラシオン紙)の舞台裏が明らかになってきた。
肝心のウルフォウィッツ氏の適格性に、仏国際関係戦略研究所のクルモン研究員は「ネオコンの思想自体は貧困国の援助を重視するが、テロ対策に力を入れる国とそうでない国の選別など恣意(しい)性が心配」という。
(パリ・久原 穏)
【ポール・ウルフォウィッツ氏】 米エール大教授を経て1973年国務省入り。国務次官補や駐インドネシア大使歴任後、89−93年国防次官。2001年2月から国防副長官。世銀総裁には今年6月就任予定(第10代、任期5年)。ニューヨーク市出身。61歳。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050401/mng_____kakushin000.shtml