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共産党の機関紙「赤旗」が、アカデミー賞で惨敗した映画『アビエイター』に関する興味深い記事を掲載していた。
『アビエイター』の内容については下記のサイトで確認していただくとして
※ アビエイター (2004) THE AVIATOR
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=321448
「赤旗」記事で指摘されていたのは、レオナルド・ディカプリオ演じる実在の人物ハワード・ヒューズのもっとも重要なエピソードがその伝記映画である『アビエイター』からごっそり抜け落ちているのではとのことであった。そこがこの映画の足りないところだというのである。
すなわち映画業界への「赤狩り」が吹き荒れた冷戦時代初期のハワード・ヒューズが率先してその赤狩りに協力していた事実がまったくもって映画に描かれていないというのである。彼はチャップリンの映画を「共産主義の宣伝」と決めつけ、傘下の系列映画館での上映を拒否したこともあったという。
もちろん、「赤狩り」についてのエピソードが抜け落ちていたから、アカデミー賞で惨敗したと決めつけるのはよくない。作品の完成度ということももちろんあったのであろう。実際、上記サイトに試写の感想が寄せられているが芳しくない。
ただ、ハワード・ヒューズという、赤狩りを率先して行い、ハリウッドに大打撃を与えた人物の卑劣さを描かなかったというのは、事情をよく知るしかもリベラルな気風も強いアカデミー関係者からしたら、好ましいとは思えないことであろう。
しかも本作品の監督は大論争となった「赤狩り協力者エリア・カザンへのアカデミー特別賞授与」でエリア・カザン推薦人のような立場でアカデミーの舞台にもあがったマーティン・スコセッシである。あの時アカデミー会場の半数はエリア・カザンへのアカデミー特別賞授与に異議を唱え、スタンディング・オベーションを拒否していた。
エリア・カザンに協力し、さらにハワード・ヒューズの「赤狩り」についてもだんまりを決め込んでいてはマーティン・スコセッシのアカデミー会員での評判はあまり良いものではなかったということは想像できる。
「アカデミーは情みたいなものがあって、毎度ノミネートばかりで終わるマーティン・スコセッシに今度こそ賞をあげるよ」との噂も授賞式前にはあったのだが、もしかしたら今回は情でなく赤狩りへの怨念が噴出したのかもしれない。
ちなみに、『アビエイター』に代わりアカデミーの主要な賞を勝ち取ったのは『ミリオンダラー・ベイビー』で、非常に問題作であるとのこと。こちらの受賞はハリウッドの反骨精神が表れた受賞だと言われている。
最近はブッシュ政権への協力、米軍への支援を映画業界総出で行うかのようなニュースも流れてくるハリウッドだが、しかし「赤狩り」への協力を拒否した人々がいたように、今回もそうはさせないと頑張る反骨精神あふれる業界人もまだまだ健在なのだろう。