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社説
02月24日付
■サマワ自衛隊――出口が見えない不安
陸上自衛隊が駐留するイラクのサマワに、オーストラリアが450人の兵員を送ることになった。3月には撤退を終わるオランダ軍に代わり、自衛隊の安全を確保するのが目的だ。
オランダから治安維持を引き継ぐことになっている英国が豪州に一部の肩代わりを打診し、小泉首相もハワード豪首相に直々に支援を頼んだ。
ブッシュ米政権との関係を考えれば、自衛隊は撤収させにくい。一方で日本の国民の間には来月以降、治安が悪化することへの懸念が深まっていた。板挟みに苦しんでいたであろう首相にとっては、ひと安心ということに違いない。
だが、国民が気遣っているのは自衛隊の安全だけではない。
法的に無理を重ね、多額の税金を使って続けているこの派遣が、イラクの復興支援にどれだけ役立っているのか。駐留はいつまで続ければいいのか。出口はあるのか。そんな不安も募る。
小泉首相が昨年暮れ、派遣を1年延長する決定をしたとき、朝日新聞は社説でこれに反対し、3月までに完全撤収させるべきだと主張した。
オランダ軍の撤退で自衛隊の安全をめぐる不安がいっそう増す。自衛隊による支援は役割を終えた。米国に同調し、サマワに復興支援を集中しても、必ずしもイラクの再建を手助けすることにはならない。そうした理由からだった。
先月末の国民議会選挙は、みずからの手で国を統治しようという人々の意思を示した。この弾みが維持され、年末の本格政府樹立までのプロセスが粛々と進むことを、私たちも願う。
だが、こと自衛隊に限ってみれば、状況は基本的には変わっていない。
選挙で圧勝したシーア派地域にあるサマワは治安の比較的よい所だが、それでも武装集団と警察との銃撃戦があり、今月、アルカイダ系とされる人物が自衛隊宿営地への攻撃計画を供述した。
危険に身をさらしてきた自衛隊員のがんばりや、サマワの人々との結びつきは評価するが、主目的の給水はすでに民間の浄水器が主役となっている。
この先年末までには、なお大きな選挙などがある。しかし、自衛隊は投票所を実力で守ったり、武装集団を撃退したりはできない。宿営地にこもり、とにかく駐留を続けているというのでは、支援としては効率的とは言えない。
新たに豪州軍に守られることで、米主導の多国籍軍との一体性が強まったと、イラクの人々に受け取られることも心配だ。豪州にも大きな借りをつくった。
「サマワの自衛隊」には日米同盟の象徴として意味があるという議論も、分からぬではない。それでも、このままでいいのだろうか。
国民議会選挙での高投票率は、占領軍のようにふるまう米軍の駐留を是認したものではない。どこまでも米軍とともに。それが長い目で見てイラクと日本のためになるのか。よく考えたい。