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http://www.jlp.net/letter/050215b.html
労働新聞 2005年2月15日号 通信・投稿
科学雑誌「ネイチャー」に論文
遺骨鑑定の信ぴょう性
島田 幸代
朝鮮民主主義共和国(北朝鮮)への経済制裁を求める声が、1部の政治家や拉致被害者家族会から出ている。この声は、横田めぐみさんの遺骨が「偽物」だったという鑑定結果が出てから、いちだんと声高に叫ばれるようになってきた。
日本政府は北朝鮮に、「遺骨は偽物だった」として抗議したが、北朝鮮は「鑑定結果はねつ造」と主張し、議論は平行線をたどっている。真実はどこにあるのだろうか。
遺骨鑑定を行った帝京大学では、「遺骨の5つのサンプルを鑑定した結果、2つの骨片からDNAを発見した。しかし、両方とも横田めぐみさんのへその緒から抽出したDNAとは一致しなかった」という。しかし、国立の科学警察研究所は5つのサンプルからDNAは抽出できなかった。
そもそも一度焼いた人骨から本当にDNAを検出することが可能なのだろうか。世界的にもっとも権威のあるイギリスの科学雑誌『ネイチャー(nature)』のホームページhttp://www.nature.com/news/のニュース記事(05 年1月 31日)で、興味深い論文が掲載されたので、紹介したい。
ちなみに、「ネイチャー」は、世界中の科学者が研究した成果を正式に公表する場となる、科学界の大御所みたいな雑誌だ。
掲載されたデービッド・シラノスキー氏の論文は「火葬された遺骨は1977年に拉致された日本人少女の運命を証明できなかった」というもの。
論文の要旨は・・日本では、火葬された標本に対して法医学的鑑定が行われたことはほとんどない。横田めぐみさんの遺骨の鑑定を直接手がけた帝京大学法医学研究室の吉井富夫講師が、以前に火葬された標本を鑑定した経験はまったくなく、また、自分が行った鑑定が断定的なものではなく、また、サンプルが汚染されていた可能性があることを認めているという。吉井氏は、5つのサンプルのうちもっとも大きい1.5グラムの骨片は、鑑定で使い果たしてしまい、意見の相違を解決する可能性がほとんどなくなった・・というものだ。
この論文を読む限り、遺骨鑑定は科学的に決着がつくというものではなく、日本政府が主張する「偽物」という根拠もまた、きわめてあいまいなものであることが分かる。
横田さんご夫婦の子供を思う心情は痛いほど分かるが、排外主義をあおる人びとは、こうした被害者の心情を利用して日本の進路を誤らせようと画策している。北朝鮮との友好こそ、この問題の解決の第一歩だということを、冷静に考えてほしいと願う。