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□桃色の炎 [反戦翻訳団] タリバンを懐かしむ未亡人たち
http://blog.livedoor.jp/awtbrigade/archives/14025634.html
2005年02月10日
【桃色の炎 (Fuochi rosa)】エンリーコ・ピオヴェサーナ,Peace Reporter(2005/2/7)
原文:Fuochi rosa
翻訳:飯田亮介
二日ごとに一人のアフガン女性が己の運命から逃れるために焼身自殺を図る。
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15才のFatelaは、アフガニスタン西部ヘラートの病院のベッドに横たわっている。その体はやけどで覆われている。Fatelaはかすかな声で語る。「夫が、私のいとこでもあるんですが、いつも殴るんです。逃げたかったんですが、気づかれてしまいました。夫はわたしを殴りつけるとブルカを手に取って、わたしはもう二度と家を出ることが出来ないと言いました。そこでわたしは灯油を一缶かぶって、自分に火を点けたんです」
ヘラートだけで2004年に184件。
自らの家族に押し付けられた、愛することもない夫から受ける虐待といじめに満ちた人生を逃れるために毎年焼身自殺を図る何百人ものアフガンの少女たち。Fatelaはその一人に過ぎない。この悲劇的な現象は特にヘラート地域で深刻だ。歴史的に隣国イランの文化的影響を受けてきたこの地域の女性たちは、伝統的に自らの権利への意識が高く、そのため、権利の侵害に対してより敏感なのだ。
「アフガニスタン人権独立委員会」から提供された部分的なデータによれば、ヘラートだけで2004年に184名の女性が焼身自殺を図り、そのうち60名が死亡している。この数字が意味するのは、一つの都市だけで二日ごとに一件の自殺事件が起きていると言うことだ。恥と怖れから通報されていない事件はこの数字には含まれていない。
同じ病院の別のベッドにはFarzanaがいる。彼女は17才だ。Farzanaもやけどに覆われているが、それは彼女の手によるやけどではない。「夫は毎日わたしを殴りました。逃げようとしたんですが、夫と義母に見つかってしまいました。罰としてわたしは家を出ることが許されず、食べ物もほとんどもらえなくなりました。ある日、おなかを空かせたわたしは家を出て、物乞いをしました。家に帰ったわたしは、みんなの食事を作るためにストーブでお湯を沸かしました。ですが、ひどく腹を立てた義母は、煮えたぎった大鍋のお湯をわたしに浴びせたんです」。
タリバンを懐かしむ未亡人たち
こうした自殺行為の多くは、暴力や虐待を原因とするものではない。それは、未亡人たちに亡夫の兄弟と再婚することを強制する、イスラム伝播以前からのアフガニスタンの伝統に対する絶望的な反抗的行為なのだ。カブールの女性省の事務所には、ひどく絶望した数人の若い戦争未亡人たちがいた。「もし政府が助けてくれなければ、わたしは自殺します」22才のSahraは真剣にいった。「再婚したいんです。でも義理の兄が許してくれません。彼はわたしと結婚したいから、もしわたしが他の誰かと結婚すれば、わたしを殺すと言っています。ですが、もし彼と無理やり結婚させられたなら、わたしは自分で自分を殺すでしょう」。
24才のSorayaも同じ情況だった。「夫の家族は、障害を負った13才の義理の弟と結婚するように言うんです。嫌だと言ったら、義父に殴られました」。
27才のHanifaはタリバン支配の時代を懐かしむ。「わたしは亡夫の親族ではない男性と再婚しました。未亡人は自分の好きな男性と再婚できると言う法令をムラー・オマルが発令したからです。ですが今は、亡夫の弟が彼と再婚しなければわたしを殺すと脅すんです。彼は亡夫との間に出来た四人の子供たちを連れ去ってしまいました」。
「ムラー・オマルは未亡人たちのこうした自由を認めていました。なぜならアラーとその預言者がそれを望んでいるからです」カブールのムラー、Shaikh Zadaは説明する。「イスラム法は未亡人に義理の兄弟(亡夫の兄弟)との再婚を強制してはいません。これはアフガン部族の最も保守的な伝統に根差した狂気なのです」。
女性たちの弱い声
タリバン政権の崩壊はつまるところ、アフガン女性たちの状態に大きな改善をもたらすことが無かった。むしろ逆効果だった。それは復活したイスラム以前の伝統のためだけではなく、数々の声明を出し憲法による保護を謳うにも関わらずその実無関心な政府諸機関の責任でもある。「少なくとも公文書の上では女性が享受するとされている権利を、地方の政府機関は認識していないんです。それゆえ、彼女たちを助ける代わりに、その状態を悪化させています」ヘラートの裁判官、Mohammad Azamは言う。アフガン女性解放運動のシンボル的女性、Sima Samarはそのことを上手く説明してくれた「この国では夫の暴力から逃れて家を出る女性が、警察によってまた逮捕されるんです。そして夫だけが彼女たちを釈放させることができるんです」。
今のところアフガン女性にできることは、家に引きこもり、女性の権利運動のためのアフガニスタンのラジオ放送「女性の声」を聴きながら、夢想することだけだ。このラジオ局は、「解放された」アフガニスタンのポジティブな新しい知らせを伝えることを熱望していた合衆国の支援を受けて、タリバン政権の解放直後に放送を開始した。だが数ヶ月後には、合衆国の広告作戦は明らかに終了し、ラジオ局は資金も不足し、閉鎖せざるをえなかった。数週間前から「女性の声」はドイツのNGOの資金援助を受けて放送を再開することが出来た。だが同ラジオはカブール地域でのみ放送されている。ラジオの電波は残念ながらヘラートには届かない。自らに火を放つ女性たちが後をたたないヘラートには届かない。
Enrico Piovesana