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社説
02月01日付
■イラク選挙――この民意を自立の礎に
テロによるものらしい爆発音を聞いたバグダッドの中年男性が「犯罪者どもに挑戦してやる」と投票所へ向かった。
北部のモスルでは、イスラム教スンニ派の指導者が「国民の義務だ」と投票所に一番乗りして市民を奮い立たせた。
油田地帯のキルクークではクルド人たちが選挙を民族舞踊で祝い、南部のバスラでは黒マントのシーア派の女性たちが投票所に長い列をつくった。
激しい妨害活動にもかかわらず、自分たちの手で新しい国の体制をつくりたいというイラクの人々の意気込みを、現地からの報道が世界に伝えた。
厳戒下で行われた国民議会選挙の投票率は、独立選挙管理委員会の推定で約6割に達したという。暫定政府にとって、選挙の正当性を主張できる結果である。
いつもは反米、反占領色が濃いアラブのテレビ局も、投票所に足を運んだ人々の熱気を伝えた。アラブ世界ではほとんど前例のない自由な選挙に驚き、それなりの評価を込めた報道ぶりだった。
イラク戦争に反対し、ブッシュ米政権の政策を批判してきた私たちも、選挙の成功を願ってきた。イラクの人々が見せた自立への意欲を高く評価したい。
この意欲を安定した国づくりにどう結びつけるか。これからが正念場だ。
選挙の公式集計には時間がかかりそうだが、人口の6割を占めるシーア派が圧勝し、かつてフセイン体制の基盤だったスンニ派地域で多くの有権者が投票しなかったという事実は動かない。
任期が年末までの暫定的な議会だが、課題は山ほどある。移行政府をつくり、自前の治安態勢を強めなければならない。夏には憲法草案を起草する。
選挙結果に基づいて生まれるシーア派主導の政府は、少数派のスンニ派にも政治参加の機会を与えなければならない。議会が権力抗争の場となり、憲法の制定でつまずけば、国内分裂や内戦という悪夢を見ることになりかねない。
過激なテロ組織を抑え込みつつ、異なる宗派や民族が協力して国づくりを進めることが何より重要なのだ。
ブッシュ米大統領はこの選挙を「大変な成功だった」と演説し、みずからのイラク政策を自賛した。だが、イラクの人々は米英軍による事実上の占領継続を支持するから投票したのではない。
みずからの手で治安を回復し、占領状態の終結を早めたい。そうした思いが有権者を投票所に向かわせたことを、ブッシュ大統領は知るべきだろう。
国の統一を保つ。石油収入を国内で公平に分配する。政教分離の統治体制を確立する。平和的な国家として地域の安定を助ける。これらは新生イラクが国際社会に復帰するための条件である。
失敗は許されない。まず自立への歯車を回すことだ。米政権は国際社会の結束を取り戻すためにも、これまでのイラク政策を見直し、米軍の撤退問題についても真剣に考えるべき時だ。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050201.html