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水不安シンドローム
急いで書かなくては。あと2時間ほど電気が通じているから――願わくばだけど。昨夜、水が出た。ほんの少しぽたぽたと出ただけだけれども、ぜんぜん出ないよりずっといい。
Eが真っ先に気がついた。みんなでリビングルームにいたとき、Eがとつぜん跳びあがり、聞き耳をたてたのだ。「聞こえる?」と彼はたずねた。私は飛行機かヘリコプターか銃声でも響いているのかと耳を澄ました。 何も聞こえない・・・でも、待って・・・何かが・・・せせらぎのような・・・水? そんなことってある? 出るようになったの? 私とEはバスルームに走った。この8日間、ほんの少しでも水が出ないかと期待して蛇口を開けておいたのだ。やっぱりそうだ、水が出ている。ほんの少しだけれど、決心がつかないかのように水がちょろちょろと出たり止まったりしていた。Eと私は流しの前で祝福の声をあげ手を叩いてちょっとした勝利のダンスを踊った。
それから沢山の仕事をした。夜中、水を入れられる物にならなんにでも水を入れた・・・やかん、なべ、カップ、ビン、バケツ、なんにでも。今は階段の下の空いていた場所に、幾つもの水の入った大きななべに、虫やほこりが入らないようにトレイや急場しのぎのカバーで蓋をして置いてある。
昨晩はほとんど眠らなかった。また水が止まってしまうのではないかと心配だったから。事実、まだ水が出ているだろうかと、午前4時にそっと階下に降りてみたら、Eが同じように降りてきていてバスルームの入口に立っていた。母は「水不安」シンドロームと呼んでいる。夜になれば水の出がもっと強くなるのではないかと願っていたのだけれど、水圧は今も本当に低い。もし水がずっと出ていたら屋上の大きな水タンクをいっぱいにしておこうと昨晩決めたので、今朝はEも私も早起きした。このタンクの水が電気ヒーターに直接行くことになっているのだけれど、しばらく使っていなかったので、それを閉めて予備の貯水庫にすることにしたのだ。もう無防備でいることはできない。飲み水の値段もあがって先週は1リットルあたり1000ディナールにもなったのだから。
Eと私は一日中、何回もバケツで水を上に運んだ。水の流れが弱いので10リットルのプラスチックの手桶をいっぱいにするのに17分かかる(時間をはかってみた)。今まででバケツ10杯分運びあげた。キッチンの蛇口までは水がきていないため、汚れた食器をバスルームまで持ってきて、今、そこで洗い物をしている。残念なことに電力事情は悪化している。私たちの地域では20時間ごとに4時間ほど電気がきているけれど、ほかの地域ではどうなっているのかまったく分からない。誰とも遠く隔たってしまっている感じだ。
バグダードはこの数日、不安定だった。先週は幾度か爆発があって、その回数には驚かなくなった私たちも、幾つかの爆発のすさまじさにはたじろいだ。間もなくの選挙とそれにまつわるさまざまなことには本当に恐ろしさを感じている。投票所に学校が選ばれたことも私は気に入らない。今、学校は休みだけれども、警備に不安があるのは目に見えている。投票所が爆撃されるのは分かっていること。学校はようやく設備をそろえたり整理したりしている最中で大切なときなのに、爆発のトラウマがそれに加わったらたまったものじゃない。学校を使うなんてひどい考えだわ。
夜間外出禁止はこれから午後6時に始まることになり、その上、一般の禁止に「車による外出禁止」が加わる。正確な時間は知らないけれど、一日のうち数時間は、徒歩で外に出るのはよくても車では出られないのだ。こんなことを強制するなんてまったく理解できない。
ガージー・アル・ヤワル暫定大統領が昨日、LBCでインタビューを受けていた。候補者リストの最初に誰の名を置くかで決裂したので、彼とアラウィが同じ選挙人リストにはもう載っていないことは確かだ。ガージーはリストの1位は大統領だと提案したが、アラウィはシーア派の誰か(つまりアラウィ自身)がふさわしいと主張した。今、アラウィ派が285人、候補者名簿にあがっていて、ヤワル派は288人だと思う。
インタビューで私が気に入ったのは、チャラビが逮捕される可能性についてどう思うかという女性リポーターの質問だった。ガージーは狼狽して、自信がなさそうだった(きっと彼は海外にいてCNNをみていなかったのだ)。彼が実際にはどう答えたかというと、チャラビが指名手配されていると言った人間はおそらく自分の「個人的」意見を述べたまでであって、それが「政府」を代表する発言ではなかったはずだというもの。その人間というのが国防相であってもいいのかしら。きわめて公平に言って、彼はどの政府のことを指しているのか言わなかった。私には彼が言っているのが米政府か、英政府か、それとも今の傀儡政権か分からない。彼が言うには、チャラビが逮捕されるには本人が何か悪事を働いたという「証拠」がなければならないそうだ・・・インターポールが彼を指名手配しているだけでは十分ではないらしい。
現政府がこれほど調整がとれていないのをつぶさに見るのはがっかり。内部で話し合ってさえいないように見える。罪を誰が犯していて、誰が犯していないか、それすら決めることができないのが分かって本当に残念だ。「正義のビシー政権のふりをするための愚か者向け虎の巻」はないものかしらね。(訳注:ビシー政権は、第二次世界大戦中のフランスにおける親独政権だった)
うわさでは、間もなくあらゆる連絡手段が途絶えることになるという。今でも電話はよく不通になるし、携帯電話は何日もつながらないことがときどきあるけれど、そのうちウェブでのアクセスもできなくなるかもしれないと聞いた。今は学年度の中間休暇中なのに,学生は誰もどこにも動こうとしていない。みんな自宅に縛りつけられているのは警戒態勢が厳しいし、どこかへ行って爆発でも受けたら恐ろしいと思うからだ。爆発で殺されなくても、イラク保安軍か米軍に殺される恐れはあるし、殺されなくても、頭に紙袋をかぶせられてアブ・グレイブ刑務所に連れていかれるという危険は誰にでもあるのだから。
この数週間というもの、辺りに不安が募っているのが手にとるように分かり、みんなの神経をぴりぴりさせている・・・燃料不足、水不足、電気不足。どこもかしこも戦争が始まった頃に似ている。
ジュアン・コールが「ブッシュがするべきだった演説」を載せていて、それがとてもいい。私の意見では、今年の就任演説でブッシュはこんな風に最後を締めればよかったのにと思う。 「は! 私が本当に再選されるなんて信じられないよ! 信じられない! 虐待がだ〜い好きな人間もいるんだね」
2005年1月27(木)
(翻訳:高橋茅香子)