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余録:
アウシュビッツ
27日のアウシュビッツ解放60周年式典で、雪が降りしきる中で参集した各国首脳の姿を見て、昔受けた衝撃がよみがえった▲100万人以上のユダヤ人が虐殺されたポーランドの強制収容所跡を初めて見学したのは戒厳令下の82年冬。その時も雪だった。通訳のお嬢さんに「アウシュビッツはドイツ語の地名よ。オシフィエンチムと呼んで」と何度も念を押された▲めがねがうずたかく積み上げられた「めがねの部屋」、おさげの金髪などで埋まった「髪の毛の部屋」。入れ歯、歯ブラシ、洋服の部屋もあった。ナチス・ドイツは廃物利用可能なありとあらゆるものを収容者から奪い、丸裸にしてガス室へ送り込んだ▲人が人に、どこまで残虐になれるのか。遺品の山。古カビのような独特のにおい。部屋から部屋へ重い足を運ぶ度に、ずっしりと心に焼きついた。後に家族で再訪した時は、入り口に「子供連れの人は自らの責任で見学して下さい」と断り書きがあった。ホロコーストの記録が幼い心にトラウマを残す危険もあるからだろう▲英国の調査では35歳以下の6割が「アウシュビッツなど聞いたことがない」と答えたそうだ。ナチスの軍服姿で仮装パーティーに出たヘンリー王子が父チャールズ皇太子に「アウシュビッツを見てこい」としかられたのも無理はない▲強制収容所を生き抜いたノーベル平和賞作家のエリ・ウィーゼル氏が国連の記念会合で訴えた言葉が重く響く。「過去は変えられないが、未来は私たちの手にある。無関心ではいけない。無関心が常に加害者を助ける」。記憶を語り継ぐ大切さは過去よりも未来のためだと思う。風化と無関心が怖いのはヒロシマ、ナガサキにも言える。若者たちの手で記憶を伝える努力がほしい。
毎日新聞 2005年1月30日 0時27分
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20050130k0000m070117000c.html