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社説
01月29日付
■イラク選挙――自立への歯車は回るか
米英軍の侵攻から1年10カ月がたったイラクで、あす暫定議会の選挙が行われる。
「イラクの歴史にとって偉大な瞬間になるだろう」と、ブッシュ米大統領は言う。戦争が誤りだったのはそれとして、人々がこぞって投票し、民主的な政権につながるなら、私たちの望むところでもある。
だが、この選挙が十分に民意を反映したものになるのかどうか。
この1カ月の間に、候補者を含む多数のイラク人が武装勢力やテロリストによって殺された。有権者は、投票の妨害を宣言する脅しにおびえている。
かつてフセイン政権を支えた中部のスンニ派地域では、影響力のあるイスラム勢力が投票ボイコットを呼びかけている。選挙は親米政権をつくるための米国の策略だというわけだ。
米軍も、イラク全土18州のうち、バグダッドやモスル、ファルージャなどを含むこの地域の4州での投票率の低さを危ぶむ。15万人という開戦以来最大の兵力を展開している米軍だが、反米活動はとても抑えきれていない。
国際選挙監視団も現地での活動が難しそうだ。国連の訓練を受けたイラク人職員やイラクの治安部隊が前面に立つ。
それでも中部を除く地域では、選挙は比較的平穏に行われるだろう。
フセイン独裁時代には考えられもしなかった自由な選挙とはいえ、有権者の票は宗教権威や部族の力で動く。南部を中心に人口の約6割を占めるシーア派の勝利に終わることは間違いない。イラクに初めてシーア派が主導する移行政権が生まれることになる。
投票に参加するか拒むかはともかく、スンニ派の人々はこの結果にどう反応するだろうか。選挙を管理する暫定政府や後ろ盾の米政府がスンニ派を抑え込もうとすれば、宗派間の対立に発展し、治安の回復も望めないかも知れない。
この選挙は国連安保理決議に基づくものだ。秋の憲法制定の国民投票をへて、年末の国民議会選挙と正式政権の発足へとつながるはずの第一歩だ。しかし、イラク戦争をめぐる国際社会の分裂が尾を引き、欧州やアラブ諸国が結束してこれを支えることになっていない。
ブッシュ政権は「選挙は成功だった」と言うのだろうが、イラクは国内に様々な地雷原をかかえ、国際社会の共感も乏しい。選挙後を楽観してはいけない。
鍵を握るのは、やはり米軍の撤退問題である。シーア派の指導者たちは撤退の日程を固めることを選挙公約としている。ブレア英首相も選挙後に駐留期限の協議をイラク側と始めると言う。
治安が悪いから米軍がいるのか、それとも米軍がいるから治安が悪いのか。このジレンマをイラク人自身が解かない限り、自立への歯車は回らない。
ブッシュ大統領はイラク戦争に対する世界の批判に応え、しっかりとけじめをつけることだ。それがこれからの政治プロセスを進める力となる。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050129.html