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政治家の圧力疑惑≠フ真相[サンデー毎日]NHKは、名指しされた政治家と「二人三脚」で逃げ切ろうとしているかに見える
http://www.asyura2.com/0502/war66/msg/325.html
投稿者 なるほど 日時 2005 年 1 月 20 日 02:55:35:dfhdU2/i2Qkk2

(回答先: 今度は居直りはじめましたね 投稿者 happyblue 日時 2005 年 1 月 20 日 00:04:54)

政治家の圧力疑惑≠フ真相
NHK現職プロデューサーが命懸けの内部告発
「海老沢会長は知っていた」
「ウミを出さねばNHKは崩壊する」番組出演者 高橋哲哉氏が激白



職を失う、さらに個人攻撃にさらされる危険もある。しかし、現職プロデューサーは、まさに「命懸けの内部告発」に立ち上がった。中間管理職にここまで決意させるほど、公共放送は危機に瀕しているのだ。しかし、そのNHKは、名指しされた政治家と「二人三脚」で逃げ切ろうとしているかに見える。

 記者会見が終わると、詰めかけた数十人の記者の間から静かに拍手がわいた。普通、記者は会見で拍手などしない。同業者の勇気に感銘を受けた報道関係者は少なくなかったのだ。

 1月13日に記者会見して番組に対する「政治家の圧力」を証言したのは、NHK教育番組センターのチーフプロデューサー(CP)、長井暁氏(42)である。

 長井氏は2001年1〜2月に放送された教育テレビ「ETV2001」の特集「戦争をどう裁くか」のデスクとして、4回シリーズの番組制作の実務を取り仕切った。問題になったのは、1月30日放送の第2回「裁かれた戦時性暴力」だ。

 長井氏はこう証言した。

「29日の数日前に国会対策の職員が中川さんたちに呼び出され、相当激しく番組内容を批判され、放送をやめろというようなことを言われたらしい。そのため、国会対策の野島直樹担当局長(現理事)が手配して29日、放送現場の総責任者である松尾武放送総局長と、中川さんと安倍さんのところに説明に一緒に行った」

 中川昭一経済産業相と安倍晋三自民党幹事長代理のことである。両氏は「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」のメンバーとしても活発に活動していた。

「その後、それまでの議論とは全く異なる作り替えを命じられた。中川、安倍両氏の了解を得るための作り替えであったことは間違いないと思う」(長井氏)

 そしてこうも付け加えた。

「野島担当局長はこの事態の経緯を逐一、海老沢勝二会長に報告しており、当然、会長の指示や了承を得てこの作業が行われたと考えています。会長あての報告書も存在しているようです」

 長井氏はまた「海老沢体制になってから、現場への政治の介入が日常茶飯事になった」と指摘、NHKスペシャル「狂牛病感染はなぜ拡大したのか」(01年9月)の再放送中止を例に挙げた。

「自民党の農林部会で番組への批判が出たため、諸星衛報道局長(現理事)が再放送をつぶした」(長井氏)

 長井氏によれば「裁かれた戦時性暴力」の改変について、伊藤律子番組制作局長(当時)はこう言ったという。

「この時期には、NHKは政治と戦えないのよ」
 NHKが国会に予算を握られている仕組みを問題視する声もあるが、実際、放送数日後には、自民党総務部会に予算案の説明が行われる予定だったのだ。

 淡々と話していた長井氏が会見中、一度だけ涙で言葉に詰まった場面があった。「内部告発で不利益を被る恐れはないか」と質問された時のことだ。
「私もサラリーマン。家族もある。この4年間、非常に悩んで……でも、真実を述べる義務があると考え……決断するに至りました」

◇「現場の不満を代弁してくれた」

 長井氏が、NHKの「コンプライアンス(法令順守)推進委員会」(委員長・海老沢会長)に内部告発することを決意したのは昨年11月頃。労組とわずかの友人と妻だけに相談をしたという。

 NHK職員が語る。

「同僚は記者会見のニュースに皆、仰天してました。『長井さんが何でそんなことを』って。酒と寿司の好きな普通の人ですよ。孤独な決断だったようです」

 委員会からは昨年12月に「調査を始める」との連絡はあったものの、いつまでたっても関係者へのヒアリングなど具体的な動きがないため「マスコミの方に事実を語るしかないと判断した」(長井氏)という。

 ところが、NHKは長井氏が記者会見したその日に「調査結果」を発表し、疑惑を完全否定。14日には、問題を最初に報じた朝日新聞社に「抗議文」まで送りつけた。内部通報には反応が鈍いのに、外からの批判には即刻、対応した形だ。

 長井氏をここまで追い込む原因となった番組は、どのようなものだったのか。

 関係者の話を総合すると、次のような経緯があった。

「問われる戦時性暴力」は、旧日本軍の従軍慰安婦問題の責任を問おうとNGOが主催した「女性国際戦犯法廷」を主に取材して構成された。取材は下請けの制作会社が担当した。当初は法廷の様子のほか、元慰安婦、元日本兵へのインタビュー、シリーズを通じて出演していた高橋哲哉・東大大学院教授(別稿参照)ら識者の発言などで構成されていた。

 1月中旬ごろから番組の制作中止を求める右翼団体の抗議が激しくなり、プロデューサーの自宅にまで嫌がらせがあったという。

 「法廷」に批判的な識者の談話を挿入するなど手直しが重ねられ、1月28日には44分の番組がほぼ完成。しかし、長井氏によれば、29日に野島担当局長の主導で、「法廷」が昭和天皇の責任を認定した部分などをカット。30日には松尾放送総局長の指示で、被害者側の証言がカットされて40分となった。

 長井氏を知るNHK職員は言う。

「長井さんは政治家の介入そのものよりも、それをはね返せない上層部にずっと怒っていたようだ。飲むとたいてい、その話が出た」

 TBS出身のテレビプロデューサー、吉永春子氏はこう指摘する。

「そもそも政治家というのは年中、報道機関にくちばしを入れたがる人たち。問題は、それをどうはねのけるかなのです。国会対策担当なんて職員がいること自体が信じられない。そんなことをしているからNHKは政治家に甘く見られる」

 NHK番組制作局のある職員もこう話す。

「この出演者はダメだとか、突然、上から口を出されることはけっこうある。ただ、政治家の介入なのか、内部的な理由なのか現場には分からない。理不尽な命令だけが下りてくる。そういう現場の不満を長井さんが代弁してくれた部分もある。だから、安倍晋三氏が長井さんを個人攻撃するのを聞いて、心底腹が立った」

 安倍氏は1月12日にこんなコメントを発表した。

「これは拉致問題に対する沈静化を図り、北朝鮮が被害者としての立場をアピールする工作宣伝活動の一翼も担っているとにらんでいる。告発している人物と朝日新聞とその背景にある体制の薄汚い意図を感じる」

 13日には記者団に「(長井氏は)私がいつ、どこで誰と話したかを証明してもらいたい。それができないなら謝罪してもらいたい」と答えている。

◇「安倍氏の反応は語るに落ちる」

 しかしその際、安倍氏は「公平公正な報道」を求めたことを認めている。別稿の高橋氏も指摘するように、問題はここなのだ。

 元NHK政治部記者で椙山女学園大学教授の川崎泰資教授が憤る。

「安倍氏の反応は語るに落ちる。問わず語りに番組内容に介入したことを認めてるんだから。まして彼は当時、官房副長官で政府の要職。どっちが呼んだとか、そんなことはどうでもいい。全然分かっていない」

 一方の中川氏。12日にこんなコメントを出した。

「市民団体が模擬裁判を行ったことにつき、NHK教育テレビで放送するとの情報があった。(中略)当方は公正中立の立場で放送すべきであることを指摘したものであり、政治的圧力をかけて中止を強制したものではない。また、当方への説明の前後における番組制作の経緯については関知していない」

 番組放送前にNHKと交渉があったことを前提とした表現に読める。ところが、翌13日に一転、「NHK関係者との面談は放送後の2月2日」と断言。同13日、NHKも関根昭義放送総局長名で、やはり「中川氏と面会したのは番組放送3日後」と同じような見解を発表した。さらに、13日に中川氏が出したコメントの末尾には「非公式ではあるが、NHK関係者は認めております」と、わざわざ但し書きまで添えていた。

 なんとも息の合った対応ではないか。何らかの「すり合わせ」がNHKと中川氏の間であったのではないか、と勘繰られかねない。

 中川氏は本誌の取材に15日、こう答えた。
「4年も前のことであり、当初の段階では記憶があいまいだった。調査する時にNHK側と相談は一切していない。そんなことしたら大問題だ。『但し書き』は、NHKがそう発表したと聞いた、という意味」

 また、NHKは「安倍、中川両氏から圧力を受けて番組内容が変更された事実はない」と言い切る。

 いずれにせよ、長井氏が投げかけた告発の波紋はまだまだ広がりそうだ。

 81年2月、今回と構造的に似た事件があった。ニュースで放送された「ロッキード事件5年・田中角栄の光と影」という特集のうち、三木武夫元首相のインタビューが島桂次報道局長(当時、後に会長)の指示でカットされた。田中派に配慮した会長らの意向を受けて命じたと、島氏は自叙伝に記している。やはり、国会の予算審議の直前だった。

 この時、島氏の責任追及の先頭に立った一人が前出の川崎氏だった。その後、川崎氏は報復人事で政治部デスクを追われ、放送文化研究所に異動になった。

 川崎氏は訴える。

「良心があるなら、報道記者も名乗りを上げてほしい」
 組織に属する人それぞれが、心の奥底の声に耳を傾ける時、初めて組織は変わり始めるのかもしれない。

本誌・日下部聡

http://www.mainichi.co.jp/life/family/syuppan/sunday/2005/0130/tokusyu1.html

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