現在地 HOME > 戦争66 > 1315.html ★阿修羅♪ |
|
contents------------------------------------------------------
◆ イスラエルとパレスチナの首脳会談に思う
------------------------------------------------------ contents
◇◆ イスラエルとパレスチナの首脳会談に思う ◆◇
2月9日の新聞各紙は一面トップでイスラエルのシャロン首相とパレスチナ自治政府のアッバス議長が暴力停止で合意したことを大きく報じている。このこと自体はむろん歓迎すべきだ。イラク情勢の混迷も、つまるところは中東情勢の行き詰まりに起因する。だからこそこの中東問題の解決に、米国も日本もそして世界ももっと本腰を入れるべきだと私も主張してきた。
しかし、アラファト前議長を徹底的に排除したブッシュ大統領とシャロン首相が、アッバス議長になってから手のひらを返したように友好的な態度をとり始めたその真意こそ重要だ。アラファト前議長を二年以上も軟禁して病死に追い込んだシャロン首相が、アッバス議長になったとたんイスラエルの自分の農場に招待したというその態度の豹変はおかしくないか。アラファト前議長との一切の会談を拒否したブッシュ大統領も二期目に入ってからは中東和平の進展を大きな外交目標に掲げ始めたことを額面どおり受け取ってよいのか。
日本の中東専門家は、前途は楽観できないとしつつもこの停戦合意を評価する。新聞の論調も、「停戦合意を中東和平の新たな出発点に」(9日付日経新聞)、「天の時に人の和を」(9日付朝日新聞)、「和平実現へ不退転の覚悟で」(10日付毎日新聞)、と一応この停戦合意を中東和平の第一歩であると期待しているかのようだ。
だが、私は楽観的になれない。それはハマスがこの停戦合意を拒否しているからではない。アッバス議長がパレスチナの悲願をシャロン首相に未だ何も迫っていないからだ。シャロン首相が今までの強硬な対パレスチナ政策を変更する兆しをまったく見せていないからだ。ライス国務長官やブッシュ大統領が、その前向きな言葉の羅列とは裏腹に、シャロン首相に譲歩を求める本当の圧力を、今のところ全く見せていないからだ。そして真の和平の動きが訪れるかどうかは、米国がイスラエルに圧力をかけるのかにかかっている。そしてより重要な事は、たとえ米国が圧力をかけたとしてその時イスラエル政府、国民が米国の言う事を聞くのかどうかであるのだ。ここのところを明確に指摘する記事は今のところ見当たらない。
国際司法裁判所の勧告的意見を無視しシャロン首相はコンクリートの分離壁をパレスチナ自治区に建設することをやめようとはしていない。度重なる国連決議の要求にもかかわらずパレスチナの難民は未だにイスラエルへの帰還権を認められていない。事実上の占領ともいえるヨルダン西岸(パレスチナ自治区)へのイスラエル人の入植政策は進む一方である。このようなイスラエルの不法行為を放置しながら、「過激派の臨終の言葉をまだ聞いていない」(モファズ・イスラエル国防相)(9日付朝日新聞夕刊)という表現でパレスチナの暴力停止をすべての前提にするようなイスラエルの態度は、ハマスでなくとも受け入れることは出来ないであろう。そしてそのようなイスラエルの違法な行為を、ブッシュ大統領は歴代の米国大統領のタブーを犯してまで明確に支持してきたのだ。いくら大統領に再選されたからと言ってブッシュ大統領が政策を急変させるであろうか。アラファト議長に代わって親日派のアッバス議長になったからと言って、米国の政策が変わると思えるか。現実はむしろ逆ではないのか。すなわち言う事を聞くアッバス議長になったとたん、パレスチナの武装抵抗を、和平交渉の名の下に、根こそぎ排除するつもりではないのか。
この私の素朴な疑問に対し、9日付の毎日新聞夕刊に掲載されていたイスラエルの民間機関研究員メナヘム・クレイン氏の言葉は、一つの回答を与えてくれた。しかもそれは私のかすかな期待を裏切るどころか、イスラエルは和平を望まないと言う驚くべき悲観的論で、私に回答してくれたのだ。私はクレイン氏とは、昨年11月にオランダのハーグで開かれた中東和平に関するNGOの会合で偶然言葉を交わしたことがあった。彼は毎日新聞のインタビューに、「今度の停戦合意は遠からず問題を表面化させることになる」と答えている。そしてその理由として、イスラエルはエルサレムの東西分割と第三次中東紛争で占領した領土の返還を求める国連決議242を決して認めないからだという。だからシャロン首相はパレスチナ独立国家を認める最終合意までは決して進まないというのだ。オランダで聞いた言葉通りだ。
要するにイスラエルは自らの隣国に主権国家パレスチナの独立を認めるつもりは毛頭ないのだ。この点を指摘したのは10日付けの読売新聞の論評であった。その論評は言う。
「・・・和平が進めば、イスラエルは、1947年の建国と1967年の第三次中東戦争で得たものを、一部なりとも還さなくてはならず、(これには)消極的だ・・・イスラエルが難民化したパレスチナ人に自由な帰郷を認めていれば、1967年戦争の後占領地から撤退していれば、流血は激減していたはずだ・・・イスラエルを抑え、問題の根源に向き合わせることが可能なのは、年間30億ドルに上る軍事援助でイスラエルを支える米国だけだ。日本を含む国際社会が出来ることは、米国にその役割を果たすよう働きかけていく事だ」
全く同感である。何故外務省はこのような当たり前の外交を米国に対して申し入れないのか。何故小泉首相はブッシュ大統領にそう求めないのか。そういうことを政府に求める新聞論調がほとんど見当たらないのが不思議だ。本音を言わない風潮はすべてのところに及んでいるような気がする。
http://amaki.cocolog-nifty.com/