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2月9日 05年27号 ◆ 我々は基地問題をどこまで知っているのか
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◆ 我々は基地問題をどこまで知っているのか
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◇◆ 我々は基地問題をどこまで知っているのか ◆◇
次の書き出しで始まる沖縄の地元紙、琉球新報の金城潤という記者の書いた文章に私は感銘を受けた。2月8日付の毎日新聞夕刊の記事だ。琉球新報と毎日新聞は、毎年半年間、交流の一環として記者を交換しているという。96年から3年間、宜野湾市に住み基地周辺の住民を取材して歩いた金城記者は、本土の基地周辺の住民が「負担軽減」をどう考えているか知りたかったので交換計画に応募したという。立派な心構えだ。そしてその記事も立派であった。
「基地から飛び立った大型軍用機が、腹に響く鈍いエンジン音を残していく。周辺に広がる住宅密集地。目の前にいる人の声も聞こえない。厚木基地がある神奈川県大和市に私は初めて通った。そこには普天間飛行場を抱える沖縄県宜野湾市で私が暮らし、体験したのと同じ日常があった・・・」
私は生まれてこの方、米軍基地の周辺を訪れた事がない。どんなに新聞で在日米軍の基地縮小について読んでみても自分の事として捕らえた事はなかった。日本人の多くはそうであろう。しかしこの金城記者の記事は私にあらためてこの国がかかえている基地問題を考えさせてくれた。そして「基地と共存」することは不可能であることを知らせてくれた。
金城記者は書いている。大和市がまとめた昨年の騒音のデータだ。電話のベルに相当する音量の70デシベルが5秒以上続いた騒音は2万1318回測定されたという。一日平均71回だ。毎月の最高値は100デシベルでこれは電車が通過するガード下の音を超えるという。金城記者は、大和市の住民の一人である太田善夫さん(42)の次の言葉を紹介し宜野湾市を思い出したと言う。
「基地関連の収入を得ている人もいるから、基地を100%は否定しない・・・だが、ビルすれすれに飛ぶ飛行機に恐怖を覚える・・・住民の環境権を阻害しているのだから解消して欲しい・・・それが当然ではないでしょうか」
金城記者は、そのあと宜野湾市の実態を次のように書く。
「・・・(琉球新報の)支局の真上が米軍ヘリの演習ルートだった。毎日午前7時にヘリが飛び、目覚まし代わりの騒音と共存するしかなかった・・・昨年8月に米軍ヘリが墜落した沖縄国際大と普天間飛行場を挟んで反対側に普天間第二小学校がある・・・騒音による授業中断がたびたびある。一回中断すると児童の集中力を再び先生に向かせるまで10分必要と、ある先生に聞いた・・・基地に近いというだけで子供たちの学習時間さえ保障されないのだ・・・」
そして金城記者は、大和市や宜野湾市の住民の声を次のように伝える。「・・・負担軽減といっても、県内や国内に移るなら意味がない。求めているのは基地の閉鎖だ」、「厚木の夜間離着陸訓練を三宅島に移そうとした時、三宅島の猛反対にあった。大和の騒音がなくなっても日本のどこかに移る。そんなことを望む人はいないでしょう」、「飛行機が落ちないと、日本全体の問題にならないのかねえ」
そうして金城記者はこう締めくくっている。
「沖縄の『負担軽減』は、あらたな沖縄や厚木を生みだすことにつながりかねない。厚木基地周辺の人の話を聞いて、今思う。『基地と周辺住民の共存は不可能だ』という実態こそ、沖縄が発信し続けるべきことではないか」
私はこの記事を読んで、そして取材を重ねてこのような記事を書いた見知らぬ金城記者の姿を思い浮かべながら、あらためて日本の基地問題に思いを馳せた。そしてこの国の政府の政治家や官僚の基地問題に取り組む基本的姿勢を考えた。国民より米国政府に顔を向け続けている姿勢に。
小泉首相は果たしてどこまでこのような住民の悲鳴を念頭において、あのような発言を発したというのか。昨年10月に、「受け入れ先が見つかれば沖縄の本土移転も検討する」というあの無責任な発言の事だ。
私が小泉首相に限りない反感を覚えるのは、物事の本質も知らずに、そして知ろうともせずに、ワンフレーズで格好のいいことばかりを言い放つ為政者の傲慢さだ。「サダムフセインが悪いのだから米国に攻撃されても仕方が無いだろう」と言って、あっさりと米国の戦争犯罪を支持して恬淡としている、あの開き直った人間性だ。そこには弱者の苦しみに思いを馳せるかけらも無い。そのことだけで彼にこの国を指導する資格は無いとつくづく思う。
そして最後にもう一つ付け加えたい。最初から答えがわかるおざなりな質問をして満足している官邸記者(8日付東京新聞夕刊)と、この金城記者の、ジャーナリズム魂のはるかな違いについて私は目がくらむ思いにかられた事を。
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