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日本政府によるスマトラ沖大地震の軍事利用/自衛隊がなぜ国連災害本部 と別のタイ・ウタパオ米軍基地で米軍と一体化しているか
http://www.asyura2.com/0502/war66/msg/122.html
投稿者 NJ 日時 2005 年 1 月 16 日 23:44:40:OUBoEzfQNTDYo

http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Japanmilitarism/taikou-hihan3.htm

新「防衛大綱」「中期防」閣議決定批判:シリーズその3
「被災民救済」の名の下、米軍指揮下で「対テロ戦争」を想定した日米軍事演習

日本政府によるスマトラ沖大地震の軍事利用に反対する
−−三自衛隊の統合運用整備、海外派兵「本来任務」化、海外派兵「恒久法」への弾みを狙う−−


【1】 はじめに−−インドネシアをはじめ東南アジア諸国が米日の露骨な軍事プレゼンスに強い警戒感。「有志連合」挫折にもかかわらず日米合同軍事演習の形で居座る米日両軍に制約を課す。

(1) 「イラクで戦争をしている場合ではない」−−これが私たちがスマトラ沖大地震と津波による被害の第一報を聞いて感じたことでした。被害の大きさは私たちの想像を絶するものとなっています。死者・行方不明者は16万人を超えて今もなお増え続けています。国連の人道問題調整官室のケネディ調整対応部長は1月10日、「あと数日すれば20万人に達するかもしれない」と述べました。最終的に何人の人々が犠牲になるのか、見当も付きません。被災者は500万人。今最も懸念されているのは感染症です。世界保健機関(WHO)によれば15万人が水不足や感染症による命の危機にさらされています。アジア開発銀行(ADB)は13日、この地震と津波で新たに200万人の貧困者が生まれると発表しました。
 
 今は一刻を争う時、政治的・軍事的思惑で動いてはならない時です。何世紀に一回起こるか起こらないかの大地震・津波であり人類の英知が試される時なのです。ところがブッシュ政権と小泉政権は一緒になって、イラク侵略の時と同様、米主導の「有志連合」軍方式(米政府はこれを「コア・グループ」と呼びました)で突っ走ろうとしました。「俺たちはやりたいようにやる」という訳です。自然災害対応でも国連を無視し国連支援の枠組みを壊す「単独行動主義」を貫こうとしたのです。災害援助の枠にとらわれることなく軍事の論理でやるためです。この事実一つとってみても、ブッシュや小泉が真の被災者救援について何も考えていないことが分かります。ブッシュ・小泉らのこの許せない策動は、世界中からの反発によってわずか8日間で挫折しました。緊急首脳会議が閉幕した6日、パウエル長官は「コア・グループ」の解散を表明せざるを得なくなりました。日本、オーストラリア、オランダなどイラク戦争・占領に加担した国々以外は、ブッシュ・小泉に付いていかなかったのです。
※<スマトラ地震>緊急首脳会議閉幕 津波警戒網を構築へ(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050106-00000103-mai-int
※<スマトラ地震>国連主導で支援 緊急首脳会議(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050106-00000045-mai-int
※インド洋大津波 「周辺国」か「国連」か 米欧、救援態勢できしみ(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050104-00000005-san-int


(2) しかし、それは甘かったようです。私たちは「有志連合」=「中核グループ」は完全に挫折したと思いましたが、日米のごく限られた枠内=日米合同軍事演習という形で残ったのです。国連がシンガポールに司令部を置いて指令を出そうとしているのに対し、米軍と自衛隊はタイ・ウタパオ基地を司令部にすでに動いていることに象徴的に表れています。表向きは国連に協力する形を取りながら、ブッシュ・小泉はあくまでも「有志連合」に固執し、巧妙な形で国連と別行動を取っているのです。

 ブッシュ政権は単なる「災害援助」をやっているのではありません。直接的にはマラッカ海峡の恒常的なパトロール活動の確立がその長期的な目的と言われています。米軍はアブラハム・リンカーン空母機動部隊を含む約20の軍艦、13,000人もの兵力を派兵し、最低6ヶ月は居座ると勝手に宣言しました。これはアジアではベトナム戦争以来の大規模な軍事展開です。そして米軍が今回前線司令部を置いたタイ・ウタパオ基地は、東南アジア全域をカバーするものであり、まさにベトナム戦争時に空爆を繰り返した拠点なのです。スリランカに上陸した海兵隊1500名にLTTE(タミールイーラム開放の虎)が抗議して300人まで規模が縮小された混乱も生じています。
※「Alarm grows as U.S. military moves in」By Deirdre Griswold Workers World http://www.workers.org/ww/2005/repress0113.php
※「Under the guise of “humanitarianism”, US marines land in Sri Lanka」By K. Ratnayake 12 January 2005 World Socialist Web Site http://www.wsws.org/articles/2005/jan2005/sri-j12.shtml

 パウエル国務長官は1月4日、米国の支援が、テロを助長する対立要因を取り除き、米国やこの地域の安全保障強化につながるよう期待している、と述べました。あくまでも「対テロ戦争」の一環と位置付けているのです。文字通り、グローバルな侵略戦争、軍事介入のために利用すると公言したのです。
 被災国にはインドネシア、マレーシアなどイスラム諸国が多く含まれています。ブッシュは不人気きわまるイラク派兵批判から身をかわすためにパフォーマンスすることに利益を感じていると同時に、アチェは米系石油メジャー、エクソン・モービルの拠点でもあり米国が石油利権を持っているのです。ブッシュも小泉も、今回の大災害と「救援活動」を軍事利用しようとしている点では同じです。
※津波被災者支援がテロ抑制につながると期待=米国務長官(ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050105-00000369-reu-int


(3) ところが米日政府の雲行きはここへきて突如怪しくなりました。インドネシアを筆頭にアジア各国が12〜13日頃を境にして、米日による「災害援助」を悪用した露骨な軍事プレゼンスに強い警戒感を見せ始めたのです。当然のことです。
 インドネシア政府はスマトラ沖地震で最大の被害を受けたアチェ州で、外国の派遣部隊や救援組織の活動を一転して制限し早期撤退を求めました。この方針転換はもちろん、これまで同州を占領支配してきた国軍が支配維持を狙うためですが、同時に米軍や自衛隊などの軍事介入によってインドネシアの独立を危うくすることを警戒しているからでもあるのです。インドネシア政府は「外国軍部隊は今後3カ月以内に撤退すべきだ」との見解を示したのに対し、米大統領報道官は12日、期限を区切ることに反対し「国際支援」を受け続けるよう圧力を加えました。言語道断のことです。この発言に端的に表れているように、米は「援助」ではなく「砲艦外交」をやっているのです。
※<インド洋津波>インドネシアと各国部隊 摩擦が表面化(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050113-00000062-mai-int
※アチェでの津波救援、外国団体の活動規制(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050112-00000306-yom-int
※外国人は早期撤退を アチェ独立紛争が影落とす(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050113-00000129-kyodo-int

 そして、この忙しいときに大野防衛長官はスマトラ沖大地震・津波で大混乱しているインドネシアにわざわざ乗り込んで、自衛隊の海外派兵を新「防衛大綱」の「本来任務」化すること、つまり日本の軍事力を東南アジアにも派兵することをどさくさ紛れに認めさせようとしました。もちろん各国とも外交辞令で対処し険しい対立にこそなりませんでしたが、行く先々で目立ったのは、日本の軍事力への期待感ではなく警戒感だったといいます。「災害援助」に乗じた新「防衛大綱」の具体化が日本で通用したので、アジアでも通用すると思ったのでしょうか。あまりにも調子に乗りすぎです。
 インドネシア国防相は「外国軍の駐留は微妙な問題」「当面の活動期間は3ヶ月」「延長にはインドネシア政府の了承が必要」「インドネシア政府の調整のもとで活動を」等々、自衛隊に「守ってほしい規則」を挙げて制約を課しました。また大野長官が「マラッカ海峡の安全は日本にとって死活問題だ」と、かつての「満蒙は日本の生命線」を想起させるような傲慢な発言をしたことに対しては「安全確保は沿岸国が一義的に責任を持つべきだ」「沿岸国の主権と矛盾しない範囲で協力を」(シンガポール国防相)など、クギを刺されたのです。更に中国脅威論に同意させようとしたことに対しては「中国は軍事的に見れば脅威という存在ではない」(マレーシア国防相)と軽くあしらわれました。
※「自衛隊の海外活動拡大 アジア各国警戒にじむ」(2005/01/13朝日新聞)

 「災害援助」を口実にした自衛隊の東南アジアへの進出に対しては中国も警戒を強めています。中国の国営通信新華社傘下の週刊誌は13日、今回の海上自衛隊護衛艦3隻の派兵を批判、「表面的には救援に向けた迅速な対応に見えるが、実際は新防衛大綱が示した自衛隊海外活動への強烈な願望を体現化するためだ」と論評しました。
※自衛隊派遣は中国への対抗 中国誌が日本援助を警戒(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050113-00000148-kyodo-int
※中国政府の警戒心は、米日主導の「有志連合」=「コア・グループ」創設策動に当たっても前に出ました。米は中国を牽制するため、このグループにわざわざインドを抱き込んで、東南アジア、インド洋における中国とインド両大国の対立を煽ろうとしたからです。「Power play in tsunami's wake」By Siddharth Srivastava Jan 8, 2005 Asia Times Online http://atimes01.atimes.com/atimes/South_Asia/GA08Df03.html

 今回の史上まれに見る地震・津波大災害と救援活動については、自然災害の問題としても、政治・社会問題としても、多々論じなければならない事柄があります。しかし以下では、日本政府、防衛庁、自衛隊による今回の「救援活動」の軍事利用に反対する観点から、政府の狙い目を暴露することに限ることとします。

【2】 通常国会で自衛隊海外派兵の「本来任務」化=自衛隊法改悪を強行。あわよくば「海外派兵恒久法」の地均しも図る

(1) 何でもかんでも軍国主義復活に利用する。ありとあらゆることを戦争準備につなげる。これが小泉政権のやり口です。大野防衛庁長官は1月7日、「スマトラ沖大地震と津波による被災民救済」を名目として、陸海の両自衛隊に派兵命令を出しました。すでに命令を受けていた航空自衛隊を合わせると派兵規模は約1000名。昨年末インド洋から帰国途中に派兵命令を受けた隊員を含めると、累計で約1600名に上る過去最大規模の自衛隊海外派兵となりました。
 「国際緊急援助」−−これが、今回自衛隊がインドネシアに派兵された口実です。イラクへの自衛隊派兵では世論は反対に傾きました。しかし、「大津波災害での支援活動に反対する人はいない。」(政府関係者)という訳です。「結果的に海外任務の本来任務化に弾みをつけることになるだろう」(外務省首脳)――政府関係者は、今回の災害援助に伴う海外派兵の真の狙い、目的を隠そうともしません。
※「陸海自に派遣命令 本来任務化弾み狙う」1月8日付朝日新聞

 自衛隊の海外派兵――それは、政府が昨年末閣議決定した「防衛大綱」の中でも、「国土防衛」と並ぶ自衛隊の「本来任務」として、政府・防衛庁・自衛隊が何としても実現したいものなのです。それは、自衛隊が、米軍の軍事戦略・軍事行動と一体となって、先制攻撃を含む他国への軍事介入・侵略・占領を行うためには、何とか国民的合意・コンセンサスを取り付けておかねばならない軍事行動です。
 しかし政府がいみじくも本音を吐いたように、それこそ「災害援助に反対する人はいない」ことを良いことに、今回の未曾有の災害を軍事利用しようというのです。日本本土への他国の「本格侵攻」の可能性など限りなくゼロに近い今、移動能力の長距離化や装備の大型化が必要だと言いくるめる格好の口実なのです。自衛隊は今回の災害援助で自己の存在を徹底的にアピールするつもりです。「自衛隊の今後をにらんだプレゼンテーションの場」(政府関係者)にすると有頂天になっています。
 しかし、被災して苦しむ人々に何とか援助の手を差し伸べたいと思う国民の善意をこうして利用する形で、政府・防衛庁・自衛隊は、実はかねてから彼らが追求していた新「防衛大綱」「中期防」の具体化を、つまり三自衛隊の統合運用の演習、海外派兵「本来任務」化=自衛隊法の改悪、恒久法の地ならしなどを、今回の派兵をきっかけにして、どさくさ紛れに一挙に実現することを狙っているのです。
 私たちはその「善意の行動」「献身的行動」の背後に潜む政治的野望を見抜かなくてはなりません。それが将来、アジア・太平洋全域に、イラクにおいてのような米日が一体となった侵略・介入戦争、植民地支配という、より大きな災厄をもたらさぬために必要なことだからです。


(2) 実際、政府は、自衛隊の海外派兵を「国土防衛」と並ぶ「本来任務」に格上げするための自衛隊改悪法案を、21日からの通常国会に提出する方針を決めました。政府は昨年末この策動を一旦休止していました。自衛隊の多国籍軍参加などの海外派兵をそのつど特別措置法を作らなくても可能にする「一般法(恒久法)」の検討が難航しており、「本来任務」化のための自衛隊法改悪案だけを先行して提出しても、どのように海外活動を拡充するかの「具体像や要件」を示しにくいというのがその理由と言われています。
 ところが小泉と官邸は、今回の地震と大津波を絶好のチャンスと考えました。東南アジアの人々の不幸を逆手にとって、自国軍国主義の復活を加速するというのです。政府与党関係者は口々に「本来任務化に理解を得やすくなった」と露骨に語っています。大野防衛庁長官は7日の記者会見で、「イラク人道復興支援、スマトラ沖地震と、自衛隊の活動が国際的に評価されている。万全の努力を払って法案を出そうと指示している」と述べました。一般法と切り離して提出することに難色を示していた首相官邸側も、一般法とのかかわりは、「どうにかなるのではないか」(政府高官)とのご都合主義ぶりです。
 実際小泉首相も「災害救援」の「派遣命令」に関連して、「自衛隊の活動が日本国内だけでなく海外でも評価されるように、活躍できるように、いろいろな制度、環境、法律等、整備していきたい」と、自衛隊法改正に積極姿勢を示しました。災害であろうと何であろうと利用できるものは利用して、「防衛大綱」で表明した対米約束だけは実現していこうという小泉の姿勢がよく表れています。
※「自衛隊法改正案 国会提出再調整へ」1月8日付 朝日新聞
※「自衛隊法改正に首相が積極姿勢」1月8日付 朝日新聞
※自衛隊法改正案を通常国会に提出へ 海外派遣態勢を整備(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050112-00000005-san-pol

 また11日には読売新聞が「恒久法骨子」を「スクープ」しました。法案骨子はすでに内閣官房の準備チーム段階で昨年末に作成していたものです。政府はタイミングを見計らっていました。「災害援助」を利用して一気呵成に「恒久法」是認ムードを作ろうとしたことは明らかです。政府防衛庁の方針を強く支持する読売にリークしたのも露骨です。
 骨子は予想した通り非常に危険なもので、国連決議は不必要、「停戦合意」条件も外す、武力行使につながる治安維持活動・警護任務を認める、武器使用基準を大幅緩和する等々、やりたい放題の法案です。私たちは何としてもこの軍国主義法、戦争法を阻止しなければなりません。
※自衛隊海外派遣、国連決議なしで可能に…恒久法案骨子(読売新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050112-00000001-yom-pol

【3】 三自衛隊一挙派兵で統合運用の整備を狙う。米軍指揮下、タイ・ウタパオ基地で日米合同軍事演習に精を出す自衛隊。

(1) 「対テロ戦争」遂行のためには、より「多機能」で「機動的」な軍隊と軍事行動が必要とされます。そのためには各機能を有する軍隊が統一した司令部の下に統合して運用されることが必要となります。今回の三自衛隊の一挙派兵はその恰好の実戦訓練の場でもあるのです。
 来年度(2006年度)末から自衛隊は現在の統合幕僚会議を大幅に改組し、三自衛隊への指揮・命令権限を持つ統合幕僚監部が発足して本格的な統合運用が始まることになっています。
 今回の災害派兵はそれを強く意識して、統幕会議から10〜20人の要員が、タイ・ウタパウ基地に派兵されます。この要員に対して、「自衛隊に対する指揮命令の基本及び統合調整」について防衛庁長官を補佐するよう(防衛庁設置法)長官指示が出されるのは、戦後二度目のことです。この統幕要員たちが派遣された三自衛隊に対する命令・統合調整を行うというわけです。
 より強力に一人の司令官が三自衛隊部隊を指揮するためには、「統合部隊」編成というものがある(自衛隊法)のですが、今回の編成は事実上統合部隊の準備、実験、下ならしというべきです。統合運用の開始を控え、三自衛隊が一体的に動く上での問題点を洗い出す恰好の実戦の場、予行演習になるということです。


(2) 自衛隊がなぜわざわざ国連が災害本部(地域調整センター)を設けるシンガポールとは別の、タイ・ウタパオ基地で、米軍指揮下で米軍と自衛隊が一体化して活動しているかという不可解な事実を、まず追及しなければなりません。そこに今回の「災害支援」の狙い目、本質を見抜くカギがあるからです。
 もちろん国連の現地本部が遅れたことがあります。しかし、なぜ遅れたのか。その最大の理由は、米が国連の枠組み作りに反対して「有志連合」方式にこだわったからです。「有志連合」方式を公式に解散すると、パウエル国務長官が表明したのは、やっと1月6日になってからです。遅れた最大の責任はイラクと同様、単独行動主義で突っ走ろうとしたブッシュ政権にあるのです。
 ブッシュ政権は、「有志連合」=「コア・グループ」解散後は、国連指揮下で今回の災害支援活動をやっているのでしょうか。そうではなさそうです。おそらくどこまでも別行動をしていくだろうと思います。

 今回の「災害援助」に関連しても米の軍事・外交の戦略目的、意向の実現に加担・協力する日本政府の姿勢は端的に表れています。今回大地震と津波に襲われた地域は、まさに米軍が世界的規模での再編=トランスフォーメーションにおいて「不安定の弧」と呼ぶ、中東から東アジアに至る「テロの温床地帯」のど真ん中にあたる部分でした。そして日本政府も「防衛大綱」で、この地域に発生すること一切が日本の利益に大いに影響を与えると宣言したのです。ここで「テロ」や「内戦」が発生したことを想定した日米合同軍事演習をまさに現地に前線基地を置いて行う。今回のスマトラ沖大地震と津波は、その千載一遇のチャンスを与えてくれたと考えているのです。
 日本の自衛隊派遣に関して、ベーカー駐日大使が「迅速なる行動に感謝する」と大野防衛庁長官に電話を寄こしたのもそれと無縁ではありません。

 自衛隊が活動の拠点とするタイ・ウタパオ基地は何のことはない、米軍の「救援活動」の前線司令部です。防衛庁はそこを空自の輸送拠点とするほか、三自衛隊の運用を調整する「現地連絡調整本部」を設けました。同基地は米軍と自衛隊の「連携」の拠点、いや自衛隊が米軍の指揮・命令を仰ぐ拠点となるということです。
 「今回の対応で、米国は日本がどのような役割を果たすのか見ている」(防衛庁幹部)――要するに、米軍は自衛隊の「働きぶり」「忠誠ぶり」「忠勤ぶり」をこの共同作戦で実際に試すということなのです。現地に派兵された自衛隊は事実上直ちに米軍の指揮下に組み入れられ、その手先として走り回ることになります。「救援活動」は直ちに米軍の指揮下でいかに共同行動が行えるかの訓練そのものといえます。事実上の集団自衛権の行使そのものであることに注目しなければなりません。言うまでもなく憲法違反です。
※「陸海自に派遣命令 本来任務化弾み狙う」1月8日付 朝日新聞

【4】 日本への天然ガス輸出の最重要拠点に自衛隊派兵。アチェの天然ガス資源をインドネシア−米国−日本で支配する狙いも明らか。

(1) 「自衛隊の活動内容」なるものが、新聞やメディアに一斉に出ました。私たちがそれを見て一番驚いたのは、紛争地域のアチェを包囲するように、海上自衛隊の護衛艦「くらま」、補給艦「ときわ」、輸送艦「くにさき」が配置されている図です。ウタパオ基地を拠点にして、バンダアチェ、メダン、ムラボの3角地点を自衛隊ヘリとC130輸送機が縦横に飛ぶルートも描かれています。まるでアチェを睨んで米日両軍が合同で軍事介入するかのような布陣なのです。
 真っ先に思い浮かんだのは「シーレーン防衛」という名の軍事的プレゼンスです。「自由アチェ運動」(GAM)をテロリストと決め付け、海上輸送ルートを「防衛」するためにこの勢力を壊滅する。こんな軍事演習を想定したとしてもおかしくはありません。冒頭に大野防衛長官がアジアを歴訪した際に、露骨かつ傲慢に述べたように、日米の政府と軍国主義勢力にとって、アチェ北方のマラッカ海峡は、日本と東アジア向け中東原油を運ぶタンカーの大半が通過する要衝、いわゆる「シーレーン」とされ、軍事的プレゼンスの対象とされているのです。
 もちろん、アチェ全体で判明しているだけで9万6千人もの犠牲者が出ており、震源地に近くて被害が最も甚大であるということがあるのかもしれないのですが、それだけでは説明が付きません。ここは歴史的に米軍の支援を受けたインドネシア軍が占領支配している地域であり、独立派武装組織「自由アチェ運動」(GAM)などによる民族独立運動を続けるアチェの民衆を長年に渡って虐殺し弾圧してきた悲惨と悲劇があるのです。紛争の火種は石油、天然ガスです。そしてそこはまさしくブッシュ政権になってより鮮明になった石油資源略奪政策の重要拠点である米系メジャーエクソン・モービルの天然ガス田があるのです。


(2) もう一つ重要な問題は、まさにこのアチェの液化天然ガスの多くが日本に向けて輸出されているということです。アチェは天然ガス産地としては世界でも大規模な地域の一つであり、その大部分を韓国と日本に輸出していながら、それによる収入はエクソン・モービル社とインドネシア政府、インドネシア軍の懐に入り、極度の貧困に苦しむアチェの民衆のためには役立っていないのです。アチェの子どもたちの間では栄養失調と低栄養の子どもたちが40%にものぼるという数字もあります。私たち日本の一般の国民は知らないのですが、日本政府と財界はこの天然ガス利権をちゃんと知っているのです。アチェと日本−−天然ガス資源を収奪するこの構図を、私たち民衆の側が、今回の未曾有の災害を通じてしっかりと学び深刻に受け止めるべきだと思います。
※「アチェ:津波と占領の犠牲」(益岡賢のページ) http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/aceh0412.html
 この益岡さんのホームページには、アチェの人民の側に立つ重要な情報が掲載され始めました。本記事は米のリベラル系メディア「デモクラシー・ナウ!」が2004年12月29日に放送したもので、現在、アチェの人権活動家は、インドネシア軍が今回の災害を口実にアチェの人々をさらに殺し、また、米国国務省が1999年東チモールでのインドネシア軍による虐殺後に停止された対インドネシア軍援助をこの災害を口実に再開するのではないかと恐れているという。
※アチェ:アラン・ネアンとのインタビュー(2005年1月6日) http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/aceh0501.html アチェ:繰り返される侵害の中で(2003年5月23日) http://www.jca.apc.org/~kmasuoka/places/aceh0305b.html
※アチェの民衆を支援する「インドネシア民主化支援ネットワーク」(http://www.nindja.com/index.html)というNGOのホームページを是非ご覧ください。「スマトラ沖地震:アチェ被災者への義捐金のお願い」を提起されています。
 このNGOによれば、日本人は「アチェ人権侵害に荷担してきた」として以下のような事実を暴露しています。「独立運動の背景として、アチェの天然ガスの存在が指摘されています。外国援助や資本を受けて天然ガスが開発されることで、アチェの人びとは住んでいた土地、生活の糧を得ていた海や川や森を奪われました。さらに、外国援助や資本を守るという名目で、天然ガス工場側は国軍に「警護料」を支払っています。いまも、日本のODA(政府開発援助)で建設された天然ガス精製工場には、「拷問センター」として悪名高い国軍のキャンプがあります。アチェの天然ガスの大部分は、日本に輸出されています。わたしたちはODA を通じて、電気使用を通じて、人権侵害に荷担してしまっているのです。」

 「シーレーン防衛」であるにしても、アチェの天然ガス資源の確保であるにしても、これを理由に日本の軍隊を周辺国や相手国の事情を無視して一方的に派兵することなど絶対許されないことです。たとえそれが「災害援助」であるにしても、です。その意味では、今回の「災害援助」は、いみじくも新「防衛大綱」「中期防」の本質をあからさまにさらけ出したと言えるでしょう。つまり、それがまさに天然資源の略奪・確保、勢力圏拡大という帝国主義的覇権を追求するものであるということを。


2005年1月13日
アメリカの戦争拡大と日本の有事法制に反対する署名事務局

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