心の健康とは? WHO(世界保健機関)によれば、人間の健康とは「身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態」と定義されていますが、果たして、「健全な精神、健康な心とは何か?」という論議になると、途端に定義のピントがぼやけてきます。 なぜなら、心とは質的なもので、量や物質そのものとして計測されるものではないからです。又、心の評価基準は価値にこそあり、価値であるが故に絶対の基準など存在しないものです。例えば、価値は時代や地域により異なります。中世のヨーロッパにおいて「魔女狩り」と称して一部の人間を迫害した大衆の精神は、今思えば不健全に映るわけですが、現代を省みても、「大多数を健全とし、少数の(私達とは異なる反応をする人達)を異常と呼ぶスタンス」に何ら変わりはないのです。これはある意味、恐ろしいことでもあります。統計的、相対的な判断基準で心の健康を定めれば、必ず平均から離れた人間は出てくるのですから。 それでも、カウンセリングや心理療法の世界では統計に惑わされることなく、「心の健康」を定義づける独自の試みがなされてきました。例えば、フロイトによれば「過度の抑圧がなく、エス、自我、超自我のバランスが保たれている人間」が健全となりますし、アドラーによれば「劣等感が克服され、優越感と社会感情が調和的に働く人間」となりますし、ロジャーズによれば「自己をありのままに受け入れ(自己一致)、自己実現傾向を発揮する人間」となりますし、フランクルによれば「自らに責任を持ち、自由な意志と決断を持ち、人生の意義と価値を行動化できる人間」となります。 つまり、それぞれの解釈や表現は違っても、おおよその言わんとしていることは「健全な人間の理想像」として一つにつながってくるわけです。 ただ、現在において、それらを一言でまとめられるほど概念が統一されているわけではありません。むしろ、カウンセラーの数だけ様々な表現が増え、余計、分かり難くなっている印象すらあります(笑)。しかし、こんな時代だからこそ、私達カウンセラーは、「心の健康」に対する基準を示さなくてはなりません。この混沌とした世界の中でも、一定の線引きをしなければ、ただ巻き込まれて振り回されるだけなのですから。 もちろん、以下に示す一定の基準を「絶対の正解」と言い切ることはできませんが、これらは、通常、私達がカウンセリングを行う上で理想とする(目指すべき)人間像として表されるものです。言い換えれば、以下の項目をある程度満たす人間が「健全」であり、かなり満たせる人間が「自立した自己実現的人間」であり、全て満たした人間が「すでに神様(笑)!」なのです。SCカウンセリングセンターでは、より多くの人が健康な心を保ち、自己実現傾向を発揮してほしいと考えています。そのために、あえて以下の「心の健康チェックリスト」を掲載し、お役にたてる事があれば、喜んで動こうとするものです。 -------------------------------------------------------------------------------- 心の健康度チェックリスト(2004:SCカウンセリングセンター) ※これらは、年齢と環境(置かれている状況)によって変わりますから、あくまで、今のあなたにおける心の健康度を示すものとしてご理解ください。 ――――――――――――――――――――――――――― 総合点(各項目の%を合算した数字)で 999点以下…→ご相談下さい。 1000点以上…→健康な心と言えそうです。 1500点以上…→自己実現的傾向が見られます。 2200点以上…→神様です! 各項目で 10%未満…→ご相談下さい。 10〜49%…→伸ばす努力をしてみて下さい。 50〜79%…→健全な状態と言えそうです。 80%以上…→素晴らしく良好な状態です。 --------------------------------------------------------------------------------
- 1、I am OK(自己受容)のスタンスを持っている。→ %
(解説) これは、自分をどれだけ肯定できるか?です。例えば、「自分は良い成績を取れたからOK」なのではなく、無条件に自分の存在自体をOKと体感できる度合いを問うています。 - 2、You are OK(他者受容)のスタンスを持っている。→ %
(解説) これは、他人をどれだけ無条件に肯定できるかです。人間関係の中では不思議と気が合う人もいれば、生理的に受け付けない人もいることでしょうが、いずれにせよ、他人が他人らしく存在し続けることに、あなたがどれだけOKを出せるかを問われています。 - 3、客観的な現実の捉え方と建設的な解釈ができる。→ %
(解説) 例えば、一人よがりの主観ではなく、多くの人が納得できる捉え方こそが客観的であり、多くの人が共感できるるような解釈が建設的と言えるでしょう。 - 4、思考や言動が自発的である。→ %
(解説) 「誰かに言われたから…」ではなく、真に自分が欲し、「自分なりに出した結論に従っている度合い」を問うています。 - 5、課題中心的である。→ %
(解説) ある事柄を問題として解決しようとするよりも、課題、目標としてクリアーしていこうとする姿勢を問うています。例えば、恋人にフラれた時、「駄目な自分を直していこう」とするよりも、「今の自分をさらにパワーアップさせよう」と考えていくほうが課題中心的であります。 - 6、新鮮な気持ちと気付きがある。→ %
(解説) 例えば、家族の何気ない「いってらっしゃい」という一言でも、ハッとその後ろにある大きな意味(愛情、絆、プラスストローク)に気付き、感動する体験などが挙げられます。 - 7、他人と自然に対する同調力が高い。→ %
(解説) 「自分も他人も(自然も)同じなのだ」という一体感、共有感がどれくらいあるかです。例えば、他人が嬉しい時に自分も嬉しく感じられた時、同調力は発揮されたと考えます。 - 8、過度の抑圧をしていない。→ %
(解説) 抑圧とは自分の欲求を不当に我慢することであり、無意識に感情を押し殺すことです。例えば、いつも人の顔色を気にして、言いたい事を一つも言えない人は抑圧度が高いと言えます。 - 9、全人類に対する普遍的な愛(思いやり)を持っている。→ %
(解説) 個人に対する愛よりも、もっと広く、全ての人に例外なく注ぐことのできる慈悲的な愛を問われています。例えば、「世界平和を祈る事」などがそうです。 - 10、民主的な性格である。→ %
(解説) 他人の考えも聞く事ができ、それを意思決定に反映させられる度合いを問うています。例えば、家族旅行で自分は山に行きたいのに、皆が「海に行きたい!」と言っていれば、(最終的な議論を尽くした上で)自分も海に行く事に納得できる姿勢が「民主的な性格」を表します。 - 11、手段と目的の識別ができる。→ %
(解説) 例えば、「自分を磨くため」に進学校に入るはずが、いつの間にか「他人を蹴落とす」テクニックばかり覚えているようでは、手段と目的が識別されていないことになります。 - 12、ユーモアがある。→ %
(解説) ここでは「ユーモアと共存できる心の余裕」が問われていますから、どれだけ「自分からユーモアを発し、他人のユーモアにも顔がほころぶ状態にあるか」がポイントになります。ちなみに、「ウケる、ウケない」は関係ありません(笑)。 - 13、創造性が高い。→ %
(解説) どれだけオリジナリティを発揮できているかです。言葉、行動、思考、文章、絵画、音楽など、ありとあらゆる自己表現の場において、いくつもの要素を組み合わせ、「オリジナル」を産み出す度合いを問うています。 - 14、自分と周りにプラスのストロークを与えている。→ %
(解説) プラスのストロークとは、人の存在や価値を肯定的に認める刺激全般を表し、具体的には愛の感じられる言動を指します。例えば、自分に「心配しないで大丈夫だよ」と声をかけたり、周りに「いつもご苦労様(ありがとう)」といった態度をどれだけ示せているかが問われています。 - 15、イラショナル・ビリーフをラショナルに変えることができる。→ %
(解説) イラショナル・ビリーフとは非論理的な価値観であり、それをいかに論理的(ラショナル)に変えることができるかのスキルが問われています。例えば、「私は全ての人間に好かれなければいけない」というイラショナル・ビリーフを「私は、全ての人間から好かれるにこしたことはない」といったラショナルに変えられる能力が問われているわけです。 - 16、コンプレックスをうまく昇華している。→ %
(解説) コンプレックスに負けずに能動的に生きている度合いが問われています。例えば、背が低いために何事も消極的になっていれば不健全となり、背が低いことを受け入れた上で自分らしさを発揮できているならば昇華できているわけです。 - 17、人生に前向きな期待をしている。→ %
(解説)例えば、自分の将来に対して明るく建設的なイメージを描けているかがポイントになります。 - 18、 今、この瞬間を大切にしている。→ %
(解説)例えば、過去を悔やむ毎日であったり、未来をあてにしているだけの毎日では、肝心の「今」が疎かになる危険性があります。つまり、今、この瞬間にどれだけ意識を集中し、エネルギーを注いでいるかが問われているわけです。 - 19、 自らの言動に意味と価値を見出せている。→ %
(解説) 自らの言動に意味と価値を見出せば、快楽の衝動を否定できるのが健全な人間です。例えば、ボクサーが減量のために水を飲むのを我慢できても、犬は我慢できないでしょう。つまり、そこに意味があるならば、やりたいことをどれだけ我慢できるかの度合いが問われているのです。 - 20、感謝の心を持っている。→ %
(解説)何に対してでも構いません。とにかく日常で感謝の心を発揮しているならば、100%になりますし、感謝の心など持ったこともないならば、0%になります。 - 21、人生のあらゆる場面を楽しむことができる。→ %
(解説) たとえ苦しく嫌な場面でも、それさえも楽しもうとする「前向きかつ建設的な意志」がどれだけ発揮できているかが問われています。 - 22、自らの(社会的)役割を認識し、バランスよく全うしている。→ %
(解説) 例えば、会社(学校)では会社(学校)における役割を果たし、家庭では家庭における役割を果たし、プライベート(友人、恋人との関係)では、プライベート用の(?)自分をバランスよく発揮している度合いが問われています。 - 23、自分を飾ることなく偽ることなく自己開示ができる。→ %
(解説) 私達には良い面も悪い面もあるわけですから、そのままの自分をさらけ出すことは勇気がいるかもしれません。ただ、下手に自分を偽るよりは自己開示してしまった方が精神的には健全である場合が多いものです。さて、あなたはどれくらい自己開示できているでしょうか? - 24、集合無意識にアクセスすることができる。→ %
(解説) 集合無意識とは、全人類に共通する(全人類が共有する)集合的な無意識の世界(場所)だとイメージして下さい。例えば、多くの人を感動させる名曲や絵画(名作)は、 個を超えた集合無意識的な力を借りて(集合無意識にアクセスして)生まれた作品でしょう。(だからこそ、多くの人の心を動かすのです) そして、あなたが生きていく中で、どれだけ個を超えた「大きな何か」を感じているか?がここでは問われているのです。
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