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2005年11月29日(火)「しんぶん赤旗」
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2005-11-29/2005112903_01_1.html
から転載。
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岩国基地の歴史は一九三八年、当時の天皇制政府による基地づくりとして始まりました。戦後、連合国軍を経て安保改定後に米航空海兵隊基地に。朝鮮戦争、ベトナム戦争、9・11テロ報復戦争と常に出撃拠点にされ、基地の固定化が進みました。ピーク時には日本人三千人が働き、基地開放親善デーなど「交流」も行われてきました。
■不安の声次々
二十一日、住民と井原勝介・岩国市長との懇談会。「ご質問は?」との問いに最初はなかなか手が挙がりません。
「声を上げれば市が勇気づく。どんどん発言してくれ」。思い余って水田忠明・東地区連合自治会長(66)が呼びかけ、ようやく一人、また一人と手が伸び始めました。
自衛隊、米軍の航空機離着陸回数は年間五万―六万回を推移。一九九四―二〇〇〇年にかけて実施された米空母夜間着艦訓練によるタッチ・アンド・ゴー(離着陸訓練)は二千四百六十四回。「五十七機も来れば想像を絶する騒音になる」「いずれ着艦訓練も来る」と不安が次々出されました。
水田・自治会長は本紙の取材にこたえ「たたかう、ということに思想に染まるような抵抗感がある」。しかし「もう十分に基地に貢献してきた。空母着艦訓練の時は近所みんなで避難した。もうこれ以上はたくさん。生活をかけた切なる反対なんだ」と語ってくれました。
藤岡助治さん(81)=元市東地区連合自治会長=は「戦前は問答無用で土地を取られ、戦争に巻き込まれた。今も騒音軽減を期待した沖合滑走路に厚木の航空機が来る。日本人はなし崩しに弱い。でも沖縄の人たちのように、われわれにも知恵を絞って食い止める方策があるはずです」。
■岩国が大好き
二十日、厚木部隊と夜間着艦訓練反対をかかげて「岩国市民の会」が結成。結成集会に集った百五十人の中から「まだまだ岩国市民はぬるい(おとなしい)」と掛け声が上がりました。発起人の河本かおるさん=女性ネット21いわくに代表=も「基地と交流もあるし、近所の若い子も勤めている。日常的に基地慣れした一人だった」と語っています。
「ニューヨークでの9・11テロからでしょうか。爆音がますますひどくなっている。電話も取れない。これ以上、戦闘機が増えることに戦争のきな臭さを感じる。私は島根の人間で、気候も人情も温暖な岩国が大好きなんです。子や孫のために、騒がさないで」
「市民の会」に寄せられる期待の声が確実に広がっています。「米兵の犯罪を許さない岩国市民の会」の大川清代表(46)=日本キリスト教団岩国教会牧師=は「政党や団体の枠を超える今回の試みを歓迎したい」と語ります。
岩国米兵による殺人、婦女暴行といった凶悪犯罪は一九七三―二〇〇三年度の三十年だけで四十二件。現在、軍人・軍属三千五百人ですが、さらに厚木から千六百人来ることに大川代表は危機感を抱いています。
「九八年、錦帯橋花火大会で女子中・高生が襲われた。橋から老人を突き落とした殺人事件など、聞くもおぞましい米兵犯罪の歴史に衝撃を受けました。9・11テロ以降、世界の緊張で犯罪が増えている。さらに厚木移転を許せば半永久的に禍根を残すでしょう」
▼岩国基地 米航空海兵隊基地で海上自衛隊も使用。面積は東京ドーム百二十二倍の五百七十ヘクタール。米軍約五十機(FA18戦闘攻撃機三十六機)、自衛隊約三十機。人口は軍人・軍属・家族を含め約五千三百人。基地沖二百十三ヘクタールを埋め立てて新滑走路、弾薬庫、水深十三メートルの岸壁を備えた事実上の新基地を建設中。
■昼夜襲いかかる騒音
厚木から岩国に来る米空母艦載機部隊。それは常にタッチ・アンド・ゴーを重要な訓練に位置付けている部隊です。
空母艦載機は高度な技量でわずか二百メートルの滑走路に降りる空母着艦が必修。スポーツ選手と同じように少しやめると技量が鈍ることから、陸に上がる年間約二百日間、勘を維持するためにタッチ・アンド・ゴーを繰り返すことが要求されます。
空母出港七日前になると、陸上滑走路に再現した模擬空母滑走路を使って、一人最低でも四回、四十五分のタッチ・アンド・ゴーを行い、それを着艦信号士官(LSO)なる判定官が見て、空母に乗れる技量があるかどうかの合否を下す――。これを空母着艦訓練といいます。さらに日米政府間で、最も技量が求められる夜間の空母着艦訓練を「NLP」なる言葉で定義づけています。
厚木から部隊が移転すれば、昼間のタッチ・アンド・ゴーや空母着艦訓練は岩国で実施。
夜間はどうなるでしょうか。着艦信号士官がいなければ、そのタッチ・アンド・ゴーは夜間の空母着艦訓練、いわゆるNLPと見なされず、通常訓練として扱われます。このため日米で暫定合意した訓練場、硫黄島ではなく、岩国で訓練することになります。
厚木基地の年間騒音測定回数は約二万五千回。厚木移転とは、この規模かそれ以上の騒音が昼夜を問わず、岩国やその周辺住民に襲いかかることを意味します。