誇大自己症候群長崎の中学生による児童殺人事件、佐世保の小学6年生による同級生の殺害事件。 「普通の子」が突然、残酷で猟奇的な事件を起こして次々にニュースになる。精神鑑定をしても何らかの障害と診断される程度には至らない」という結論が出されているらしい。 だが、従来の基準では病気と言えなくても、こうした子供には共通する特徴があるという。 1 現実感の乏しさ、自己愛的な空想 2 低い自己評価とそれを補う幼児的万能感 3 他者に対する共感性の乏しさ、罪悪感の欠如 4 突発的に出現する激しい怒りや過激な行動 5 傷つきやすさ、傷つきへのとらわれ などである。こうした一連の特徴を持つ人格を、著者は誇大自己症候群と名づけて、最近の異常事態の根底にあるものだと述べる。誇大自己症候群とは、発達の過程で現実的な自尊心や自信の形成に失敗し、それを補うために幼少期の誇大自己が支配を続ける状態であるとする。 原因は幼少時に溺愛され、その後見捨てられる体験をしたような、「溺愛と愛情不足の並存」した生育環境に生じやすいらしい。一見、恵まれた家庭で育った「王子様」がやがて周囲の期待に添えない現実に直面したときに陥ったりする。 誇大自己は、自分を神のようだと思い、母親らによって、すべての願望が満たされるのを当然のごとく期待する心のありようで、万能感と自己顕示性を目立った特徴とする。 彼らの非行も自己顕示による、奇妙な自己実現につながっている。 「名を挙げるために」「自分の力を示すために」「ただ者で終わらないために」 と取調べに答える子供たち。 破壊は万能感の表現でもある。 そしてこの症候群は、少年犯罪者だけでなく、広く現代人に見られる傾向であるという。 「世界の中心の私」が増えているのだ。それは犯罪者ばかりではない。ワグナー、サルトル、クリントン、ガンジー、マイク・タイソン、チャーチル、O.J.シンプソンなどの著名人も、この症候群の傾向があったと著者はケース分析をしている。 そして、特にガンジーなど歴史上の偉業を達成した人たちは、幸運なきっかけにより、その偏向を克服できたのだとまとめられている。 後半には自己誇大症候群の10項目診断チェックリストがある。 最初の3つは、 自分のこと、自分の関心のあることばかり話したがる 大げさな表現や大きなことを口にしたがる 理屈っぽく、理詰めで話をする傾向がある など。 おや、どうやら、私も自己症候群の傾向があるようだ。 大物になれるだろうか?(笑)。 飽食の時代に少子化で、甘やかされて育った世代が親になって、その子供が自己中心的に育っているということは、なんとなく分かる。その詳細を臨床の現場ではどのように分析しているかがよくわかる本であった。 ・なぜ「少年」は犯罪に走ったのか
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