現在地 HOME > テスト9 > 735.html ★阿修羅♪ |
|
F.E.R.C Research Report - File No.0114
サイレントベビーの謎
1998/02/22 報告 報告者:吉川 美佐、松沢 明
1920年、インドのカルカッタ西南の町、ゴムタリでオオカミに育てられた少女が発見された。少女はカマラと名付けられ、年齢は8歳くらいと推定された。カマラは人との接触を極端に嫌がり、無表情で自分の感情を表に出さなかった。日中は暗い部屋の隅で動こうともせず、夜になると手をついて歩き回った。また遠吠えをするなど、オオカミと同じ習性を持っていたのである。そして9年後、カマラは短い一生を終えた。彼女が覚えた単語はわずかに45語。3歳ぐらいの知能で、人間らしい感情や表情を手に入れることはできなかったのだ。
1970年アメリカ・ロサンゼルスでは、ジーニーという少女が発見された。13歳になるまでたった一人で部屋に閉じ込められ、外の世界や両親以外の人間と接することなく育てられたという。この少女は声も出せず、無表情・無感情だった。
これらは極めて特殊なケースと思われたが、こうした無表情、無感情の子供が日本でも増えていると指摘する医師がいた。山口県の小児科医・柳沢慧博士によると、日本でも無表情・無感動でコミュニケーションがとれない赤ちゃんが増えているという。こうした赤ちゃんは母親が抱き上げても表情に乏しく、あまり笑わない。話しかけても反応は鈍く、話しかける母親から目線をそらしてしまう。このような「サイレントベビー」、つまり「沈黙する赤ちゃん」は、楽しいうれしいといった感情はもちろん、不快感に対しても反応をしない。成長してから社会的に問題を抱える可能性もあるというのだ。
聖マリアンナ医科大学の周産期センター長・堀内タケシ教授によると、赤ちゃんは、五感のうち触覚が一番先に発達し、妊娠わずか6週間目で早くも形成されるという。また赤ちゃんの聴覚、嗅覚は大人より優れている。それは全て親に抱かれ、親を認識するためであるという。これは「遺伝的プログラム」と呼ばれ、遺伝子に組み込まれた親を認識しようとする行動である。つまり赤ちゃんは親と触れ合うことで、様々な能力を発達させていくのである。冒頭のカマラやジーニーも幼い時期に親とのスキンシップがなかったことが、無表情、無感情になってしまった原因の一つではないかと考えられるのだ。
サイレントベビーとならないためには、
@ 赤ちゃんから反応があるまで何度も話しかける
A 抱いている時間を長くする
などスキンシップがなにより重要である。
F.E.R.C Research Report - File No.1390
子供達に一体何が起こったのか?
2000/01/23 報告 報告者:伊達 徹、吉川 美佐、和田 栄一、片山 健
1989年、ルーマニアではチャウシェスク大統領の独裁政権が崩壊した。人口倍増計画が推し進められていたため、深刻な食料不足に陥り、捨て子の数が約10万人と急増。約5000人の孤児が養子縁組されて、ヨーロッパやアメリカへ渡っていった。しかし、60%もの孤児達に行動障害や知能低下、歩行障害などが起きていたのだ!
2年間を孤児院で過ごしたサラ・ローマイン(7歳)は、言語障害を持ち5歳までオムツがとれなかった。彼女の脳活性状態を調査した結果、言語を司る側頭葉の活性が非常に低いことが分かった。孤児院では哺乳瓶に入ったスープだけしか与えられず、放置されたままの状態で、極度のストレス状態だったのだ。ストレスが長時間続くとコルチゾールの分泌が増加、脳内の神経細胞をつなぐシナプスの間に侵入し、神経細胞の周囲に存在する大量のカルシウムが神経細胞内に入りやすくなる。すると、神経細胞は興奮して死滅してしまう。
また、孤児院では、交感神経の働きを盛んにし、脳や体に成長を促すスキンシップもなかった。生後2〜3年間の成育環境は、一生を左右するという。その時期に知的刺激がなかったため、脳が成長することができなくなっていたのである。オハイオ愛着&絆センターのグレッグ・ケック博士は、「発達障害を完全に克服することは難しいが、全く道が閉ざされているわけではない。」と説明している。現在、サラはカウンセリングを中心とした治療を行っており、少しずつだが着実にその能力を上げている。
日本では近年、育児放棄や児童虐待(身体的虐待・性的虐待・心理的虐待)が問題化している。厚生労働省の児童相談センターには15年前の17倍、年間2100件もの相談がある。身体的虐待は、アザやけがで発見されるため非常に数が多い。それに比べ、育児放棄は証拠を発見しにくい。育児放棄の原因には、社会状況の変化、少子化・核家族化がある。母親達は育児に関する悩みを人に相談できず、子育てで悩むことが多くなった。育児放棄をする母親の脳内にも、コルチゾールの分泌が大量に見られた。
この場合、コルチゾールは脳の海馬に影響を及ぼしている。海馬の機能が低下すると、子育てに必要な柔軟性が低下する。子供が牛乳をこぼした場合、注意するのではなくコップが大きすぎたのが原因と考え、子供の持てるコップに替えてあげることが適切な処理と言える。このような柔軟性は、記憶を司る海馬から過去に自分が経験した記憶を引き出し、現実をすり合わせることで持つことができる。ストレスが溜まっている母親は、保健婦さんや家庭支援センターに相談すると良い。
子供虐待防止センターの酒井聖二医師は、「子供(人格未成熟の母親)が子供を生んだケースで、10代のみならず、30代まで見られる。」と語った。母性のスイッチが入っていないのが原因で、子供を慈しむ感情が欠如しているのだ。通常、妊娠・出産・授乳などで分泌されるホルモンで母性が目覚める。そして、内側視索前野(視床下部に位置し、性行動を司り母性に深く関係)にスイッチがある。スイッチが入らなければ母性は発現しないのである。
F.E.R.C Research Report - File No.1709
幼児期に現れた不思議な能力の謎
1999/09/05 報告 報告者:伊達 徹、吉川 美佐、和田 栄一
1993年、韓国のテレビ局に、チョン・ヨントクという少年が5歳になるまでに韓国語の他に、日本語・中国語・英語の4ヶ国語を話すことが出来たという手紙が届いた。ヨントク君は、自分は誰かの「生まれ変わり」だと主張し、生前に習得していたためにこれら4ヶ国語を話すことが出来たのだという。しかし、「生まれ変わり」を証明できるような科学的検証はなされていない。では、後天的に5歳までに4ヶ国語を習得できるような学習を行うことは可能なのだろうか。
日本福祉大学の久保田競教授によると、赤ちゃんは産まれた日から母親の匂いを記憶・学習することが出来るという。赤ちゃんの脳の大きさは大人の3分の1であるが、情報を伝えるニューロン(神経細胞)の数は大人と変わらない。また、成長をするにつれ、ニューロン同士を結びつける継ぎ目であるシナプスが多く張り巡らされることにより、情報を伝える道である神経回路網が出来、多くの情報を処理し記憶・学習することができる。赤ちゃんは誕生直後にシナプスの数が急激に発達し始め単純な情報を学習する。そしてシナプスの急激な増加に伴い、5歳までには大人の脳の95%の大きさまで発達する。つまり大人の脳と同じように情報を処理し、記憶・学習するためのシステムをもっていることになるのだ。
ATR人間情報通信研究所の山田玲子博士によると、赤ちゃんは5歳までの間に、脳の中で母国語を認識するための音声知覚マップであるニューロンのネットワークを作るという。個人差はあるが、5.6歳頃までに、母国語と同じように外国語に触れていると、その外国語に対応した音声認識マップが形成されるため、その外国語を学ぶ際に比較的容易に習得できるというのだ。事例のヨントク君の場合、祖父が日本語を話せ、叔父が様々な語学教材を持っていたため、後天的学習により外国語を覚えた可能性が明らかになった。
アメリカ、ニューヨークに住むメアリーは出産の様子を話したことは一度も無いにもかかわらず、3歳になる息子のマークから「へその緒が首に巻きつき難産であった」といった誕生時の記憶を聞かされた。調査を進めると、日本にも「胎児」または「誕生の記憶」らしい体験を話した子供たちが少数ながらいたのである。また、アメリカ、ノースカロライナ大学のアンソニー・キャスパー教授が行った実験から妊娠6ヶ月を過ぎた胎児は、音を認識し、それを記憶・学習出来る可能性が明らかになった。
オランダ、グローニンゲン大学のベラ・ボーフス教授によると、通常、我々が胎児期や誕生時の記憶を持っていないのは、女性特有のホルモン、オキシトシンの作用が挙げられるという。オキシトシンとは、出産時の子宮の収縮や母乳の分泌促進に働く女性ホルモンで、記憶喪失作用を持つ。しかも安産の場合、オキシトシンは大量に分泌されるが、難産の場合は分泌量が少なくなる。つまり難産で産まれた子供の場合は、オキシトシンによる記憶喪失作用の影響が少ないため、より記憶が残りやすい可能性があるというのである。
また、極度の緊張やストレス下に置かれたときに分泌される「副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)」は記憶を保持する役割を担っている。つまり難産で極度の緊張・ストレス下に置かれた母体からACTHが大量に分泌されることにより、出産時の体験が胎児の脳内に残るのではないかと推測される。
愛知工業大学、大島清教授によると、妊娠期間中の母親は
@ お腹の赤ちゃんとスキンシップを取ること
A 正しい食生活を心がけ、栄養を取ること
B 母親が精神的にリラックスをすること
を心がけることが、赤ちゃんの体や脳の順調な発育を促すという。
さらに大事なことは、これから産まれてくる赤ちゃんを心から待ち望み、歓迎する気持ちである。
F.E.R.C Research Report - File No.1101
クシュラの奇跡の謎を追え!
2001/05/06 報告 報告者:伊達 徹、吉川 美佐、片山 健
1971年12月18日、ニュージーランドのオークランド市で、クシュラ・ヨーマンという女の子が生まれた。彼女は生まれた直後から重い病に冒されており、幾度もの手術を経て危険な状態を乗り越えた。だが、生後3ヶ月が経っても腕を満足に動かせず、また全身の関節も異常に柔らかく、抱くことさえ困難な状態が続いた。脳機能に関しても聴覚と視覚に深刻な障害が見つかった。原因は、染色体の一部が突然変異により切断され、形態異常や内蔵の機能不全など人体に様々な障害を生む「染色体異常」と判明した。
クシュラの体に触れても何の反応も返ってこなかったが、両親はスキンシップの延長のつもりで絵本を読み聞かせ続けたという。するとある日、クシュラは絵本を食い入るように目をこらし、そしてにっこりと微笑んだというのだ。その後、絵本の読み聞かせは家族にとって大切なコミュニケーションの時間となった。1歳になる頃、読み聞かせの最中に突然不自由な指を動かして本の1点を指して何かを喋り出し、断続的だが言葉を表現した。やがて3歳3ヶ月では、挿絵のない本を1時間以上も音読できるほどの理解力や語彙を身につけ、8歳までには読書はもちろん算数も得意な少女に育った。奇跡ともいえる成長の日々だったが、特別な治療は行っておらず、唯一続けられた事は両親が毎日必死で行った絵本の読み聞かせだった。
元オークランド大学病院のルスベン・ラン医師によると、クシュラの場合、絵本の読み聞かせが"内容を伝える"のではなく、"脳を成長させる刺激を与えた"という意味で絶大な効果をもたらしたという。3年間で140冊、時には10時間以上にも及んだ至近距離からの読み聞かせにより、声や絵の刺激が重い障害を乗り越えて彼女の脳内に達し、脳内に内的刺激が発生したと考えられる。内的刺激とは、人間が自発的に考えるという行為により脳内に発生する刺激。つまりこの内的刺激が予想を上回る膨大な量のシナプスを生み出し、クシュラの知能は飛躍的な発達を遂げたと考えられるのである。この事例をきっかけに、子供の成育に関するコミュニケーションの重要性が世界的に再確認され、その効果をみるための研究が各地で進められたという。
通常、乳児に絵本を読み聞かせる場合、子供が理解できるペースでゆったりと読む。本を選ぶ場合、最初は子供の生活体験と重なるような内容を選び、過去の記憶を引き出してあげることが重要。次に、子供がストーリーに興味を持ち質問をするようになったら、本には書かれていない部分にまで想像を膨らませるようにする。また、身の回りで起こる出来事を通して、自発的に考えさせるきっかけを多く与えることでも、子供の脳は健やかに発達する。例えば散歩中に犬を見かけた時、「どんな鳴き声?」と聞き、もしくは花を見つけて、「香りはどう?」などと問いかければ子供の思考力を広げ、多くの内的刺激を生み出すという。