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郵政改革 公社のままの危うさ
公示を前にして、総選挙はすでに佳境に入っている。政権の行方を決める場として、内政から外交まで各党が示した公約が総合的に評価されることになる。
この選挙を郵政民営化の是非を問う国民投票とする小泉首相の見方は、単純に過ぎる。とはいえ、財政や金融にまたがる郵政事業の将来像について与野党が示す青写真は、国民にとっての重要な判断材料であるのは間違いない。
郵政改革の最大の眼目は「資金の流れを官から民に変えること」である。郵便貯金や簡易保険の資金で国債を大量に買うことが、無駄な公共事業や特殊法人の温存につながっているからだ。
自民党はさきに廃案となった法案を次期国会に出し直すことを約束した。07年に持ち株会社のもとで郵便、窓口、貯金、保険の4社に分割し、17年までに貯金・保険の2社の株式をいったん完全に処分するというものだ。
郵貯や簡保の信用の裏付けとなる政府保証を打ち切り、民間企業にすることで、資金量の縮小をねらっている。民営化された金融2社は、国債以外への投資を増やすだろうから、経済の活性化にもつながるとしている。
一方、民主党案では、郵政公社を当面は維持したまま、郵貯の預け入れ限度額を1千万円から500万円にまで下げ、220兆円の資金を8年以内に半減させる。「官」が抱える資金を強制的に減らすことが民間にお金を回すことにつながる、と主張する。
いずれも縮小を目指しているが、政府が赤字国債を垂れ流す限り、郵政をどういじっても資金は官に吸い上げられるという反論はある。だが、右から左に国債を買う巨大な国営銀行があっては財政の規律を緩めてしまう。
自民、民主とも資金量を抑える方向に変わりはない。ただ、それぞれ重要な点に不透明さを残す。
自民党案では、金融2社をグループから切り離す点があいまいだ。首相が参議院の審議で「株式持ち合いによる一体的経営は可能」と発言したが、それでは何のための分社なのか分からない。
金融2社が実質的に政府系企業であり続ければ、暗黙の政府保証がついていると受け止められ、資金量ももくろみ通りには縮小しない恐れもある。
強制的な縮小を打ち出した民主党案の方が一見すると明快だ。しかし、現在の稼ぎ頭である郵貯を急速に小さくすれば、公社の経営は悪化し、職員の雇用や郵便局ネットワークに影響は避けられないのではないか。
将来の経営形態について、自民案と民主案は大きく異なる。自民党が「民営化」を明確にしたのに対して、民主党は「あらゆる選択肢を検討する」にとどまる。郵貯の民営化や廃止といった具体的な方向を示すべきだが、そこまでの踏ん切りはつかないようだ。
注意すべきは、公社という形態が、国の監視は甘く、公開企業なら受ける株式市場からのチェックもない中途半端なものであることだ。今でさえ郵政公社はさまざまな業務に乗り出して、民間とのトラブルになっている。「国の信用」と公務員の身分保障を保ちながら、民間を圧迫するという「いいとこ取り」になるのであれば最悪の選択だ。
自民党案に懸念はあるが、将来の姿がみえない現行の民主党案は、さらに問題が多い。私たちはそう考える。