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http://www.sankei.co.jp/news/050918/morning/18iti003.htm
「方言」が今、脚光を浴びている。都会の女子高生たちが各地の方言を会話に織り交ぜたり、混じり気のない方言を用いた歌が人気を集めたり。標準語に慣れた人々に、地方独特の言葉の響きがむしろ新鮮に感じられるようだ。(安田幸弘、上塚真由)
≪女子高生に人気≫
「でら(とても)かわいいー!」「いくべ」。東京・渋谷センター街。女子高生の会話に耳を傾けると、方言が飛び交っている。「よく使うのは『…だべ』と『でら』かな。ズーズー弁も。方言を使うと、テンションがあがって楽しい」と都内の高校三年生(18)。テレビでスマップのメンバーが方言を話しているのを聞いて、使い始めたという。クラスの友人もほとんど使っているとか。
「なまら(北海道)せからしか(九州地方)=とてもわずらわしい」など各地の方言を混ぜたり、会話中の言葉や語尾だけを方言にしたりと、使い方はさまざまだ。
一九八〇年代のお笑いブームで、関西弁が全国に定着。その後も、テレビや映画で方言が使われ、次第に日常でも用いられるように。さらに、ここ数年の携帯メールの普及で、方言が一気に広まったという。
方言ブームに、出版、テレビ業界も過熱。主婦と生活社は今夏、全国の方言約二千語を収録した『ちかっぱめんこい方言練習帳!』を出版した。同社が女子中高生四千人に実施した調査では、約六割が会話やメールで方言を使っていると答えたという。「都心だけでなく地方の若者も方言をわざと使う。暗号のように使って、仲間意識を強める手段になっている」と森本泉編集長は話す。
テレビ朝日は、「マシューズベストヒットTVプラス」のコーナーとして「なまり亭」を放送中。八月三十一日のスペシャル番組では柳葉敏郎、田中麗奈がそれぞれ秋田、福岡弁を披露すると深夜にもかかわらず視聴率15%を獲得した。このほか、ある言葉を各地の方言に変換する無料サイトも登場するなど、広がりをみせている。
≪即日完売のCD≫
今夏、大手レコード会社からデビューした下地勇さん(35)は沖縄・宮古島出身。沖縄本島でサラリーマンをしていた四年前、宴会でエリック・クラプトンが歌っていた名曲に宮古島方言の詩を乗せて歌ったところ、大受けした。「サバぬにゃーん」(島ぞうりがない)という曲名を付け公民館でミニライブを開くと、お年寄りが涙を流した。FM沖縄で流れるとさらに大きな反響を呼んだ。
同曲を収めたメジャーデビュー作「開拓者」は、ほとんどが宮古島方言だ。「畑」を「ぱり」、「昔」を「んきゃーん」と発音するなど宮古島方言は沖縄方言の中でも難解とされ、歌詞はまず聞き取れない。それが逆に聞き手の想像力をかきたたせ、ライブは毎回大盛況。人気は全国に広まっている。
名古屋市のラジオ局でDJをしている伊藤秀志さん(51)も方言を生かしたシンガー・ソングライターだ。三年前、ラジオで「大きな古時計」を秋田弁で披露した。「遊び心で歌った」だけだが「歌っているのはだれ?」「どこで買えるの?」など問い合わせが殺到。「フランス語のように美しいが、何語か?」という質問もきた。
東海地方でCD七千枚を限定発売すると、即日完売した。それを受け、大手レコード会社から一昨年三月に全国発売。これまで二十万枚売れた。来年度の中学二年用の国語教科書(東京書籍)にも掲載される。伊藤さんは「方言には聞き手がいろんなことを想像できる魅力がある。通じない方がかえっていいし、違いを大事にする方がおもしろい」と話す。
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国立国語研究所上席研究員、吉岡泰夫さんの話 「今の若者にとって、テレビの影響で生まれながらに身につけた共通語は普通すぎて面白くない。仲間内の会話を楽しく盛り上げるためにインパクトがあって斬新な方言を選ぶ。各地の特色ある表現を切り捨て、日本語を画一化する共通語に対し、方言は多様性の象徴。今は人も地域も個性尊重の時代。言葉も多様性が見直されている。そんな流れを若者も敏感に感じ取っているのかもしれません」