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戦後６０年…８・１５靖国ルポ
境内には「一体いつの時代から現れたのか」と目を疑いたくなるような姿の人々も＝東京・九段北の靖国神社で
戦後六十年の夏がやってきた。お盆休みで静かな日本も、今年は小泉純一郎首相の“郵政無理やり解散”でかまびすしい。そんな中、第二次世界大戦の戦死者や戦犯が合祀（ごうし）されている靖国神社では今年もさまざまな人々が、せみ時雨の中手を合わせた。歴史の転換点を予感させる今、参拝者の思いとは。
５時４０分 早朝から気温が上昇、セミの声がうなる。閉ざされた門の前は報道陣のカメラが横一列で陣取り、参拝者は横手に固まり、開門を待つ。夫婦で参拝にきた横浜市の女性（３６）は、「今年は六十年なので来てみました。私たちより、もっと若いのに散っていった方がまつられているんだから、やはり、お参りに来ないことにはね」。
■『他国は干渉しないで…』
５時５０分 一般参拝者が少しずつ増えてくる。松葉づえの大阪市・渡辺武士さん（６９）は、叔父をソロモン諸島ガダルカナル島で失った。「毎年は来ていませんが、今年は戦後六十年なので。小泉首相には来ていただきたいです。他国は干渉しないでほしい」
６時 開門。音をきしませて木製の扉が開き、参拝客約五十人が、ゆっくりと境内へ。
６時３０分 境内でラジオ体操が始まる。
６時４０分 朝一番で参拝を終えて帰る人と、これから参拝する人たちが合流し、混雑が始まる。
東京都世田谷区の羽山昇さん（８０）は、「平和に対する感謝の気持ちで参拝しています。私のいた連隊はみんなサイパンで果てた。陛下がサイパンに行かれて、どれだけの遺族が感謝していることか」。小泉首相の靖国参拝を中国、韓国が批判していることについては、「全くナンセンス。堂々と内政干渉だとはねのけてほしい」。
７時４０分 本殿前で記念写真を撮っていた京都市の大学生千種撤也さん（１９）。「六十年の節目だから、日本人として参拝しなければ」と一人で来た。「七月に来た時は、ほとんど無人だったのに、今日はめちゃくちゃ人が多くてびっくりしました」
８時２５分 門の外で韓国ＫＢＳテレビが参拝者にインタビュー。「取材は順調か」と聞くと、スタッフは「順調じゃない。かなり難しい、ここで取材しちゃダメだと言われた」。
８時５５分 明治時代の陸軍の軍服を着た男性（８０）に、海外プレスが一斉に群がる。隣に並んで記念写真をせがむ外国人男性も。
■『長いような短いような』
１０時 「ありがとうございました」の唱和とともに、白いハトが一斉に放たれる。娘と参拝した江戸川区の女性（８８）は「兄弟が二人戦死した。命がある限りお参りさせてもらう。靖国が、どうのこうの言われると、かわいそうで、よけい来なければと思う」。六十年という歳月は「長いような短いような…。感無量です」。
１０時１５分 軍服姿の男性が、ラッパで軍歌を演奏。年配の人はしばらく足を止めて聞き、そっと離れる。大学生くらいの若い男性の中には喜んで拍手を送る人も。
■軍服姿の一団 本殿へ“進軍”
１０時３０分 「終戦６０年 国民の集い」が開会。国歌斉唱の最中、「靖国神社参拝糾弾」などと叫びだした若い男性が、群衆の中からつまみ出される。参拝客からは「何言うとるんや、こら」の怒号。「国民の集い」では主催者側が「外国からとやかく言われることは全くありません」と訴え、大きな拍手が起きる。
１１時 軍服姿の一団が、進軍ラッパを吹きながら本殿へ向かって行進。
■選挙を控えて議員少ない？
１１時 超党派の有志議員でつくる「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の前衆院議員や参院議員が集まり始める。様子を見ていた参拝客からは「なんか人数が少なくないか。選挙で忙しいから参拝しないっていうのはインチキだ」との声も漏れる。
１１時３０分 首相の靖国神社参拝を求める団体が、境内を行進。中門の前で「天皇陛下万歳」を三唱。
１１時４５分 参拝客の数はピークに。「国民の集い」会場脇の参道は、身動きが取れないほどの混雑ぶり。靖国神社を見学しに来たという大学一年生四人組は、「すごくたくさんの人、それにいろいろな考え方の人がいるなとびっくりした」。首相の靖国参拝に対して、そのうちの藤原幸憲さん（２０）は「靖国神社に行くこと自体は悪くない。なぜ首相が参拝すると悪いことのように言われてしまうのか」と賛意を示し、萩原純平さん（１９）は「やはり政教分離の問題はあると思う。一宗教法人の靖国神社だけを特別扱いするのはおかしい」と否定的見解を示した。
１２時 日本武道館で行われた政府主催の全国戦没者追悼式の時報に合わせ、参拝客が黙とう。一分間、セミの鳴き声だけが境内に響いた。
陸軍第一四師団でパラオに出征した前橋市の八十代男性は、戦後六十年で初めて靖国に参拝した。「戦友がたくさん死んでいる。今の若い人は知らないだろうけど、ペリリュー島では全滅した。靖国に行きたいと昨晩、思い立った」
１３時 参拝を終えた石原慎太郎東京都知事が「国民の集い」に登壇。会場からは割れんばかりの拍手。「総理になれ」とのかけ声も。
１４時 気温はこの日最高の三三度。境内の自動販売機はほとんど売り切れ。
埼玉県の航空自衛隊員（３６）は、長女（８つ）と長男（６つ）を連れ、初めて参拝。「今平和なのは（靖国にまつられている）こういう人たちのおかげだ。この子たちを守ってくださいとお祈りした。子どもたちにもこういう場所を教えたかった」
１５時２０分 都内でシステム開発に携わるアメリカ人男性（３４）は「靖国は印象的な場所だ。戦争で死んだ人へのメモリアルは大切だと思うよ」。
１５時３０分 父親の兄が、中国戦線で死亡。毎年、欠かさず靖国に来るという都内の学生（２０）は「敵に包囲された味方を助けに行って死んだんです。公明党の顔色をうかがって参拝に来なかった小泉首相。来ると言ったのはパフォーマンスだったのか」。
１５時５０分 喫煙所に立ち寄った東京都港区の遺族女性（６７）は「靖国参拝すると言っている小泉さんは、中国、韓国にお金渡してぺこぺこして、バカにされてきた歴代首相より立派。ヒトラーみたいになっちゃ困るけど、あれこそ日本の男よね」。Ａ級戦犯合祀については「受刑者だって服役終えたら許されるんだから、もう、いいじゃないですか」。
１８時１５分 一見、単なるデート風に見えた都内在住の男性（２４）と女性（２３）のカップル。男性は「遺族じゃないけど、日本人として参拝に来ました。靖国で会おう、と言って死んでいった人々が今の日本の礎。もう一度、戦争があったら、自分は戦場に行くつもり」。女性は「彼が戦争に行くのは止めない。自分にもできることがあったら、やりたい」。
１８時２５分 たばこを吸っていた女性は「昭和五（一九三〇）年生まれ。この前の戦争は、売られたけんかを買っただけ」。
■『理性で戦争止まらない』
１８時３５分 茨城県の会社員男性（３６）は「靖国に眠っている御霊（みたま）のおかげで、自分たちも好きなことができる。世界史を見れば理性で戦争は止まらない。一国平和主義ではだめだ。日本の文明を守るにはどうしたらいいか考えるべきだ。独身だから、戦争になった場合は、おれの命でよけりゃ、行きますよという感じ」。
１９時 閉門。靖国神社によれば、この日の参拝者数は約二十万五千人。特報部が定点観測取材を始めて以降最多となった。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20050816/mng_____tokuho__000.shtml
題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。