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これで止めますか?
好業績JTは余裕
「体に悪いのはとっくに承知」と喫煙者は言いそうだが、たばこの包装に書かれた健康に関する警告文の面積が七月一日から全銘柄で30%に拡大される。だが、これで“一服”とはいきそうにない。面積を増やせ、写真を付けろといった意見が出ており、もっと厳しくなる可能性がある。それでも喫煙者が減らなければ…。「値上げが一番効果的」という声が高まりそうだ。 (経済部・池井戸聡、科学部・吉田薫)
■40%?
「資料にある『ルーシア』はタール一ミリで、『ゴールデンバット』は十八ミリ。ニコチンやタールの量は、買った後でないと分からない」
三月末に開かれた財務省の「財政制度等審議会・たばこ事業等分科会」。出席者の一人が「タールやニコチンが多いたばこは、注意文言の占有比率が40%になってもいいのでは」と問題提起した。
これに対し国立病院機構理事長の矢崎義雄・同分科会長は「動物実験ではある程度、タールのミリグラム数と、いろいろ疾患が発症する(ことに)関係がある」とした上で「人の喫煙はなかなか(タールの)ミリグラム数とは合わない」と説明し、タールの量と警告文の面積との議論は、ひとまず終わった。
■写真も
表示面積の拡大は、世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」で規定された。日本たばこ産業(JT)は昨年十一月から取り組んでいる。国立保健医療科学院の望月友美子室長は「これまでの経過を考えると、よくここまできたという思い。財務省が受動喫煙の被害まで認めたのは画期的だ」と言う。
しかし、表示の仕方には疑問が残る。たとえば依存に関する表現は「人により程度は異なりますが」と前置きが付く。肺がんに関しては「疫学的な推計によると危険性が2倍から4倍」とある。「自分は大丈夫だ」と考えるような仕掛けがほどこされているようだ。
大阪府立健康科学センターの中村正和部長は「このメッセージは警告になっていない。カナダでは、パッケージの半分に危険性を示す写真が入り、ふたを開けると、あなたは禁煙できますと書いてある。米国は写真はないが文字はもっとはっきりしている」と話す。
■180億本
警告で止(や)める人がいるのだろうか。
「喫煙は死につながる」などと記載されたフランスでは二〇〇三年、〇四年の二年間で消費量は30%ほど減少した。広告業界関係者は「化粧品や食品も成分表示の規制が厳しいが、たばこほどではない」と同情する。
JTが予想する〇五年度の国内販売本数は千九百五十億本で、前年度を約百八十億本も下回る。だが、JTは警告文の面積拡大は「売り上げに影響しない」と強気。先行的に実施した「ハイライト」では、売り上げは落ちていない。
「警告文の面積拡大で消費者に病気につながるリスクファクター(危険要因)をより理解していただける」というのがJTの公式見解。販売本数が減る理由は「健康意識の高まりと少子高齢化で喫煙者が減ることにある」との見方だ。
■2倍に
余裕のコメントの裏には、好調な業績がある。JTは〇五年度、ロシアや台湾など海外で国内を上回る二千二百二十億本の販売を見込む。リストラ効果もあって、経常利益は過去最高の二千九百三十億円に膨れ上がる見込みだ。
前身が専売公社のJTの株式は現在、50%を財務省が保有。JT会長の座を天下り先としてキープする財務省と、全国の葉タバコ農家を「票田」にする一部国会議員の思惑が絡み、今の体制は当分、続きそうだ。
一方、たばこの害は明らか。最近も、一日二十本、四十年の喫煙で七・四年分寿命が短くなるという研究が英医学誌ランセットに掲載された。「実効性のあるたばこ規制をさらに推進しなくては」と中村部長は言う。
日本医師会などがつくる国民医療推進協議会は五月末、小泉首相らに要望書を出した。その中で「たばこの価格を二倍にすると喫煙者は二、三割減少する。売り上げ総額は増加するので税収も増える」としている。JTは万全でも、喫煙者には厳しい日が続きそうだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050701/mng_____kakushin000.shtml