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不当契約から消費者守れ 団体訴訟制度着々、差し止め請求可能に
消費者団体訴訟で差し止められる契約や勧誘
消費者被害の拡大を防ぐため、消費者団体が事業者を相手取って裁判を起こせる「消費者団体訴訟制度」(団体訴権)が、07年度にも導入される。23日の内閣府の検討委員会で概要が決まり、関連法案が来年の通常国会に提出される見通しだ。裁判を起こす資格の取得へ名乗りを上げる消費者団体が相次ぎ、裁判費用を支える基金も、企業などからの寄付を募って設立され始めた。消費者団体の監視役機能が強まりそうだ。(編集委員・辻陽明)
消費者団体訴訟は、消費者全体の利益のため、直接被害を受けていない消費者団体にも裁判を起こす権利を認めるもので、団体訴権とも呼ばれる。日本での制度導入は初めてで、02年の司法制度改革をきっかけに導入論議が進んだ。
今回、法改正の対象になるのは消費者契約法。内閣府が、法人格があることや事業者から独立していることなどを要件に「適格」と認めた消費者団体は、不当な契約条項や勧誘を事業者にやめさせる「差し止め請求」が可能になる。勝訴すれば強制執行も可能で、裁判を前提に「警告」の形で事業者へ改善を申し入れることもできる。
独仏など欧州では団体訴権は消費者保護の有力手段。先行するドイツでは、警告段階で9割が解決しているという。
日本では今回、損害賠償については見送られたが今後、独占禁止法、景品表示法、訪問販売などの特定商取引法でも、必要な法改正が検討される見込みだ。
「これまで消費者団体は、企業や事業者、行政にお願いするのが活動の中心だった。裁判という武器を持てば、対決して問題を解決できる」
内閣府の検討委員会委員、長野浩三弁護士は強調する。
NPO法人(特定非営利活動法人)「京都消費者契約ネットワーク」の事務局長でもある長野弁護士は、「お願い」の限界を痛感してきた。
賃貸マンションで、自然損耗分の回復費用も借り主負担という契約条項を盾に、貸主が敷金・保証金を返さないケースでは、条項が不当だと業界団体に会員への周知を申し入れたが無視された。不当な中途解約の違約金の契約条項について英会話学校に変更を求めると、「何の権限で申し入れているのか」と反撃された。新制度で、事業者側はこうした求めを無視できなくなる。
●進む受け皿の準備
京都ネットワークや「消費者機構日本」(東京)、「消費者ネット関西」(大阪)、「消費者ネット広島」、「埼玉消費者被害をなくす会」などが適格団体を目指している。いずれも弁護士や消費生活相談員、生活協同組合などがかかわり、NPO法人化している。
消費者機構日本は、日本生協連合会などを中心に昨年9月に設立。独自の情報を蓄積して、事業者申し入れなど実績を積む方針で、25、26日には各種学校や塾、予備校などの契約トラブルを対象に、初の電話相談(03・3237・1741)に取り組む。将来は年間40件程度の申し入れ、4件の裁判で約3千万円の活動費が必要になると試算している。
団体の裁判費用を支援する「消費者支援基金」も昨年11月に発足した。企業などから寄付を集め、各消費者団体に配る仕組みで、麗沢大学企業倫理研究センター長の高巌教授が提唱し、企業の社会的責任を研究・啓発するNPO法人が管理する。すでに日本ハムが2千万円、麗沢大学が500万円寄付をしている。
「悪質な業者を排除すれば、良識ある企業にもメリットがある。日本の市場を公正にするコストとして、企業はぜひ寄付をしてほしい」。高教授はこう呼びかける。
国民生活センターや全国の消費生活センターへの苦情・相談件数は04年度で178万件と、5年間で3倍以上に急増。うち8割は消費者契約関係が占める。新訴訟制度の導入で、泣き寝入りになりがちな被害を掘り起こし、不当な契約や勧誘をやめさせるのに、消費者団体の役割の重要性が増しそうだ。
日本経団連は、団体訴権が損害賠償に及ばずに差し止めにとどまり、裁判の乱発を抑える仕組みになればいいという立場で、「抑止力」としての制度の効果には一定の評価をしている。
日本の消費者団体は約2800あり、うち約210が法人格を持つ。新制度が定着するには、消費者団体が組織や財政基盤を安定させることに加え、専門性の高い活動で広く消費者の支持を得ることも課題になる。
http://www.asahi.com/paper/business.html