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東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kur/20050505/ftu_____kur_____000.shtml
思い切った施策で人材確保
次世代法施行から1カ月
子育て支援を狙った次世代育成対策推進法が四月一日に施行されてから一カ月余り。仕事と子育ての両立支援のための具体的な行動計画を立てることが企業に義務づけられ、本腰を入れる所も増えている。思い切った施策で人材確保やイメージアップに役立てたいとの思惑もあるようだ。先進例をチェックした。 (井上 圭子)
両立支援策で定評のある資生堂は、育休を取りたくても経済的な理由であきらめていた男性社員に配慮し、子どもが三歳になるまでに取れる連続二週間の有給育休制度を創設した。即戦力の退職者を再雇用し、子育て中の社員を支援する体制にも力を入れる。介護休業も充実させ、社員同士が「お互いさま」と思える環境をつくる。
「お客さまの立場も価値観も多様。社員がいろんな経験を積み、幅広い価値観を仕事に生かしてもらうことが企業メリットになる。子育て支援は高コストだが、育てた社員に抜けられるのはもっと痛手」と同社広報部。
太っ腹な祝い金を用意したのは育児用品メーカーのコンビ。「遠方から子守に来てくれる祖父母の交通費や気分転換のための旅行費用などさまざまな用途に」と、第一子、第二子誕生時に五十万円、第三子以降は二百万円の出産一時金を支給。出産後早く働きたい人には「職場復帰支援金」として、子が三歳まで月五万円を支給する。子ども誕生から半年以内に連続五日間の有給の育休取得を男性社員に義務づけた「ハローベビーホリデー」は、社員の育児経験を新商品開発に生かす同社ならではの制度だ。
電機メーカーのNECは、保育所に入りやすい地域への引っ越しや、子育てを手伝ってくれる親を呼び寄せるための引っ越し費用を会社が負担。在宅勤務のため自宅に高速通信回線を引く費用も出す。「社員へのニーズ調査で、子育て中もバリバリ働きたい人が結構いることが分かった。社員の意欲に応えることでスキルアップを支援したい」と同社広報部。
味の素は、従来三歳までだった育児短時間勤務を、小学四年進級までに延長。年に十日間の子供看護休暇制度も創設した。「人材の流動化、社員の忠誠心低下が進む社会情勢の中、『人を大事にする』という方針は、豊富な経験と高い技術を持つ人材の確保、生産性の向上につながる」(広報部)という考えからだ。
玩具メーカーのバンダイも、出退勤時間を自由に調節できる育児フレックス制度を三歳の三月末までから小学校就学前までに拡大。自社ビルの一部を都の認証保育所に提供するなど、福利厚生と地域貢献を同時に果たす。育児支援に積極的な企業が商品や広告に掲げられる厚労省の認定マークも、「玩具メーカーとしてはぜひ取得したい」と意欲的だ。
その一方で、「次世代法って何ですか」と聞き返してくる企業もまだ多い。「企業の目的は利潤の追求。国が企業に少子化対策のコストを負担させるのはおかしい」と本音を漏らす管理職もいた。企業の意識や姿勢には大きな差がある。
厚生労働省職業家庭両立課の麻田千穂子課長は「“やりなさい”ではなく、“考えてください”が次世代法の狙い。罰則がないからこそ、各企業の姿勢が問われる」と話す。
また、ニッセイ基礎研究所主任研究員の武石恵美子さんは「『面倒くさい』というのが企業の本音だろうが、少子高齢化の流れの中では子を持ちながら働く人が主流になっていく。従業員の変化に対応するのは企業の責務。短期で見ると収益向上にならなくても、長期的に見れば社員教育の投資を回収でき、イメージ向上にもなる。特に中小企業は行動計画を作る社が少ないので、認定マークが人材確保に効果を発揮するだろう」と話す。