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【経済】ニート85万人の衝撃
玄田 有史(東大助教授)
先月、内閣府が発表し、私もかかわった「若年無業者に関する調査(中間報告)」についてお話ししたい。
最近、「ニート」という、学校にも通わず、仕事もしておらず、職業訓練も受けていない若者の存在が知られるようになった。今回はニートの実態についての、政府として初めての本格的な調査結果である。
学校に通っておらず、配偶者のいない15〜34歳の無業者が、02年には213万人いた。うち約129万人は、仕事に就こうと就職活動をしている「求職型」の人たちだ。通常、失業者と呼ばれたりする。
それに対し学卒・独身の若年無業者には、就職を希望しながらも職探しはしていない「非求職型」が43万人。さらに就職希望すら表明していない「非希望型」無業者も42万人。この非求職型と非希望型をあわせた85万人が「ニート」だ。
親が裕福で甘やかしているために子どもが働こうとしないのだという意見がある。だがニートのいる世帯は年収が低い場合も多い。非求職型で3割強、非希望型は4割弱が、年収300万円未満の世帯に属する。
ニートの約半分は過去に一度も仕事に就いたことがない。就業経験がないニートは、非求職型でこそ4割程度だが、非希望型では7割にも達する。ニートの多くは親の収入で生活しているが、親と死別した将来に自立した生活を送れる見通しは暗い。過去に働いた経験がないまま中年となったニートに、就業というハードルはとてつもなく高い。
非求職型のニートに就職活動をしない理由をたずねると、「探したけれどみつからなかった」「希望する仕事がありそうにない」など不況やミスマッチの影響や、「知識・能力に自信がない」と不安を抱える場合が多くなっている。コミュニケーション能力に自信が持てないケースも圧倒的に多い。
さらに今回の調査で驚きだったのは、働けない理由として「病気・けがのため」が急増し、非求職型の4人に1人にのぼることだ。病気やけがの内容は不明だが、非求職型の6割は就業経験を持つことを考えると、職場の過大なストレスから心身を病んだケースも多いかもしれない。
陰鬱(いんうつ)とした気分になる。しかしこれが現実なのだ。生活保護やホームレスが急増する前に、今その状況を何とかしなくては。ただそこで、無気力と非難し、「働け」と説教するだけでは、何も変わらない。本人や家族だけで解決しようにも限界がある。親は地域の「ジョブ・カフェ」など支援機関に相談してほしい。所在地は役所やハローワークにきけばわかる。「若者自立塾」という、共同生活を通じて自立を促す事業への行政支援も始まる。
ニートは勇気をもって支援の入り口に向かってほしい。親身となって相談に乗ってくれる大人や、同じ生きづらさを抱えながら励ましあえる仲間が、必ずいるから。
http://www.be.asahi.com/20050409/W12/0023.html