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飯田哲也の「エネルギー・デモクラシー」
第2回 自然エネルギーに加速する欧州〜その源流
http://hotwired.goo.ne.jp/ecowire/tetsunari/031209/index.html
●選択肢なき総選挙
もはや旧聞だが、過日の総選挙には、いろいろな疑問を感じた。まず、小選挙区では選びたい候補者が見あたらない。選択肢がないのである。それどころか、2大政党制というフィクションの中に、多様な争点や価値観が埋もれてしまったことこそが重大な問題であった。この連載のテーマであるエネルギー問題は、まさにその「埋もれた争点」の典型である。両党のマニフェストは、日本のエネルギー政策が直面している最大の問題である原子力政策、とりわけ核燃料サイクルの問題を避けている。
とくに自民党を中心とする与党は、今年10月にエネルギー基本計画を閣議決定し、その中で核燃料サイクルの推進を明記しているのだから、今後10兆円を越える負担をもたらすと試算されている六ヶ所村再処理工場の運転開始や、その核燃料サイクルに伴う新たな負担や税の導入、電力自由化における原子力の優遇と構造(発送電)分離を否定していることを明記する責任がある。政治的な争点になっていないと言えばそれまでだが、今後も核燃料サイクル路線を続けるかどうか、より具体的かつ直面する問題では、六ヶ所村再処理工場でアクティブ運転にはいるかどうかは、費用面でも数十兆円規模の問題であり、エネルギー政策としては取り返しのつかない選択になることを考えれば、政治的な争点としない両党の見識の方こそが問われる。
穿ってみれば、政治的な争点とすることを避けたとしか思えない。「新エネルギー」や「原子力の安全強化」などのきれい事だけを前面に出し、やっかいな問題は争点にしないことが両党の「党益」に叶っている。電力会社から送り出した議員や、原発立地県の族議員がエネルギー政策を守旧する自民党は、あらかじめ争点を避けることで、エネルギー基本計画を粛々と遂行することができる。対する民主党も、党内のエネルギー政策を電力総連などの「エネルギー守旧派」に支配されているという党内事情があるために、エネルギー基本計画に添って原子力の優遇や核燃料サイクルへの国の支援を行うことは自民党の既得権益層と「党益」が一致している。そもそもエネルギー政策基本法そのものが、「原子力国策化」という鎧を隠しながら国会での論戦を巧妙に避け、両党の合作で成立した「詐欺的な法律」である。その上、今回の総選挙でも2大政党のマニフェストがいずれも核燃料サイクルの問題を避けているのであるから、これはもう「詐欺的なマニフェスト」と断じざるをえない。
こうした「詐欺的なマニフェスト」を生み出してしまう2大政党制への幻想は、結局、イギリスとアメリカという典型的なアングロサクソン国家が「進んだ国」であると考える、一部知識人の植民地的感性の問題であるように思える。アングロサクソン的な「白黒をつける」という発想は、いかにも20世紀的であるし、日本的な政治文化にも合わないのではないか。多様な価値観を汲み上げながら政治的な規範性を高めていく、欧州大陸的・北欧的な政治システムの方向への成熟が日本でも必要ではないだろうか。
(略)
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