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天木直人・メディアを創る ( 4/13) 米国が羨ましい
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投稿者 天木ファン 日時 2005 年 4 月 13 日 15:20:32: 2nLReFHhGZ7P6

4月13日―メデアを創る

◇米国が羨ましい

 ブッシュ大統領が次期国連大使に指名したボルトン国務次官の承認をめぐる上院外交委員会の公聴会が、11日、12日の両日にわたって開かれた。ボルトン国務次官は、かねてから一貫して国連を攻撃してきた。「国連なんてものは存在しない。唯一、超大国の米国が国際社会を率いることができる」などと述べてきた。イラクへの単独攻撃を主張した一人でもある。
 果たして彼は米国の国連大使としてふさわしい人物か。公聴会ではボルトン氏の承認に反対する議員らが、同氏が過去に行った国連や国際条約に対する否定的な発言などを執拗に追及、初日だけでも6時間を超す白熱の議論がなされたという。
 「瀬戸物屋に暴れ牛を送り込むことにならないか」(バイデン民主党議員)、「遠慮会釈なく無神経との批判がある」(ルーガー共和党外交委員長)(4月13日毎日新聞)、「なぜ自分が否定してきた(国連という)組織で働きたがるのか、わからない」(ボクサー民主党議員)(4月13日朝日新聞)などの厳しい追及がなされたという。ボルトン氏にはまた、大量破壊兵器をめぐる情報について、慎重な評価を下そうとした国務省情報担当者に辞任を迫ったという疑惑もある。
 これに対してボルトン氏は、第二期ブッシュ政権の国際協調路線を示すかのように、「国連は米外交の重要な一部」、「国連が決定的な役割を果たすべき時が来た」などと述べたという。また国務省担当官への圧力についても、人事異動を働きかけたことは認めたものの、大量破壊兵器の有無に関する評価を変えようとした疑惑は明確に否定した。
 私がボルトン次官の承認について長々と書いてきた理由は、彼の承認に反対だからではない。共和党優位の議会で彼の指名が承認されることは間違いないだろう。そもそも誰を国連大使に指名するかは米国の決めることである。
私がここで言いたいのは、一人の大使を任命する際に、その適否をめぐってここまでの議論が公開の場でなされるという素晴らしさである。指名される大使が、6時間にもわたって批判的質問に耐え、自分が適任であるということ自らの言葉で説得し、そしてその指名を勝ち取るというシステムが存在する健全さである。このような人事の透明性、民主性を羨ましく思うのである。
 ひるがえって日本の大使任命の実情はどうであろうか。金や女の醜聞でミソをつけようと、任地に関する知見がなかろうと、外務省だけの順送り人事で決められていく。小泉首相や有力政治家の覚えがめでたいだけで決められていく。誰もその人事に口を挟むことはできない。大使は自らの説明責任を一切公の場で語る必要もない。
こんなお手盛りの人事で決められる大使に、よい仕事ができるはずはない。国民のことを思う仕事をするはずがない。時の権力者を喜ばせることを最優先する連中ばかりになる。首相や政治家が外遊すれば必死になってお世話をすることしか関心がなくなる。日本外交が劣化するのも当然だ。

◇各界著名人が推す次の総理

 文芸春秋5月号に、ポスト小泉首相のアンケートを各界著名人64人から聴取した結果が掲載されている。もうそんな時期にきているのか。どんなに小泉さんが総理にしがみついても、任期は来年の9月までである。郵政民営化の後にどのようなサプライズを目論もうとも、先は見えたということだ。
 しかし私が言いたいのは小泉さんの任期のことではない。その後の総理が誰かということでもない。このようなアンケートはくだらないと言いたいのだ。
そもそも選ばれた各界の著名人64名とは何者なのか。彼らがそれぞれの好みで自分の意中の人物を列挙したところで「だからどうした」というのか。しかも彼らが「ポスト小泉」と挙げている名前は、安倍だとか小沢だとか加藤、谷垣、福田、石原、岡田などと、誰もが思いつくかわりばえのない名前ばかりである。
小泉首相が唯一為になることをしてくれたとすれば、それは「総理は誰でも務まる」ということを示してくれたことだ。そして総理という地位にある者がいかに強大な権限を持っているかをも見せつけてくれたことだ。彼がやりたい放題、喋りたい放題にしてこられたのも、総理の権限の大きさ故である。
そういうことを考えると、総理など誰がなってもいいが、そのかわりにその強大な権限が国民によってしっかりとチェック出来るシステムが確立されねばならない事がわかる。
そういう観点からこのアンケートを読んでみると、ただ一人だけ私が感心した意見を述べていた人がいた。神戸女学院大学教授の内田樹(たつる)さんという人である。私はこの人がどんな人であるか勿論まったく存じ上げない。しかし次の彼の答えは私の気持ちにぴったりである。私と違って語ることばが丁寧なのもかえって心に迫る。
「残念ながら思いつきません・・・選挙権を頂いてから三十余、『総理大臣に最もふさわしい政治家』の名が脳裏に浮かんだことは一度もなかったんですから。その間も日本は大過なく生きのびて来られたわけですから今適切な総理候補者の名前が思いつかなくともさしたる不安はありません。むしろ『理想的な政治家などいない』という期待の少なさのおかげで大衆的人気に乗じるデマゴーグ型政治家の出現が阻まれてきた・・・『政治家は有権者より知的にも倫理的にもすぐれているわけではない』ということが常識になったことによって、政治(の役割)は軽減しているのかもしれません・・・」

◇ラムズフェルド国防長官のイラク訪問

 これで9回目の訪問であるという。新聞ではこれを電撃訪問と書いている。しかしラムズフェルド長官のイラク訪問は、人気取りの為にサプライズ訪問を画している小泉首相の場合とは訳が違う。必要があって行う訪問である。明確な目的のある必要な訪問なのである。
 それでは何をしに行ったのか。4月13日の産経新聞を読むとわかる。
ラムズフェルド長官はイラクに向かう機中で、「新政府の組閣は人物の能力を重視し、無用な争いは避けるべきだ。政府内の内紛や腐敗で、政治、経済の進展が妨げられるのは不幸なことだ」と述べた。
ラムズフェルド長官と会談した直後の記者会見で、ジャファリ首相は、「多くの課題はあるが、多様な背景を持つ有能な閣僚を選ぶことになる」と述べた。
要するにラムズフェルド国務長官は、暫定国民選挙が終わってからゴタゴタが続いていたイラクにあって、新執行部がやっと決まったタイミングを見計らって、タラバニ大統領やジャファリ首相に「イラクの民主化プロセスを遅らせるな」とハッパをかけに行ったのだ。
イラクの民主化に向けては、8月の新憲法起草をへて12月に総選挙を行い新生イラク政府をつくるという日程がある。その一方で多国籍軍が相次いで年末までに撤退しようとしている。米国もいつまでも占領軍を駐留させて内外の批判を受けたくない。その為にはイラク自身の治安能力を高めなければならない。そして新生イラクは反米的な政権にする訳にはいかない。
このように米国がイラクの新しい指導部に期待するものは大きい。だからラムズフェルド国務長官が自らイラクへ乗り込んで、新指導部に命令しなければならなかったのである。
米国の思い通りに行くかどうかは不明である。しかし70歳の国防長官自身が9度にわたってイラクに足を運び自ら陣頭指揮をとる、その意気込みは凄い。パフォーマンスに明け暮れる小泉首相や、官僚に振付けられなければ何も出来ない日本の政治家では、とても米国の要人とは太刀打ちできない。妙に感心させられるラムズフェルド長官のイラク電撃訪問である。


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