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人権法案を問う
菊田幸一弁護士インタビュー
新たに設置される人権救済機関は、一般社会の差別問題だけでなく、受刑者らへの虐待事件などを監視する役割も担う。刑務所問題の第一人者、菊田幸一弁護士(元明治大教授)は「人権機関は刑務所を管轄する法務省から切り離すべきだ」と力説する。 (社会部・市川隆太)
――政府の人権擁護法案は、人権委員会(仮称)を法務省外局につくるとしています。
政府から独立した人権機関をつくるというパリ原則に反しており、反対だ。法務省の外局とすることについて、日本政府は複数回にわたり、国連から忠告されている。
名古屋刑務所事件を契機に発足した「行刑改革会議」(宮沢弘座長、法相の私的諮問機関)の提言を、よく読んでほしい。公正な救済を図るには法務省から不当な影響を受けない人権機関を置かねばならないと明記してある。刑務所問題を担当する法務省矯正局も納得して明記したのだし、野沢太三・前法相も提言を百パーセント実行すると述べた。人権委を法務省外局につくってしまったら、この約束がほごにされてしまう。
――南野知恵子法相は、人権委に法務省の影響は及ばないと強調しています。
法案には、人権委事務局に「弁護士資格のある者」を入れなければならないと書いてある。うまく書いてあるじゃないですか。弁護士と書かずに「資格」とつけたのは検事を入れるためだ。しかし、これでは仲間内で刑務所不祥事をうやむやにしているんじゃないかと、疑われますよ。せっかく、受刑者の人権を確保する提言が出て、監獄法も改正することになったのに、台無しになる。筋は通すべきだ。
形だけではダメだが、形もないのは、さらに悪い。刑務所など行刑施設の監視は第三者が行う必要がある。誤解を恐れずに言えば、「第三者が監視しても、この程度か」と万人が納得する制度が必要なのだ。
国連規約人権委員会には、何十年間も人権問題に取り組んでいる委員が多いが、話してみると、これが彼らの常識だ。法務省外局に人権委をつくったりしたら、「日本は人権の意味が分かっていない」と、世界の笑いものになってしまうよ。
――信頼される人権機関とは。
やはり、NGO(非政府組織)などさまざまな機関からの推薦者や弁護士を委員にすべきだろう。
人権機関の職員が法務省出身でも、ちゃんとした人々なら構わない、という問題じゃない。制度として信頼される中立な機関でなきゃいけない。そういう機関に監視されることが、行政が信頼を得て、仕事がしやすくなる近道でもあるんです。同じ法務省でも、矯正局は中立的機関の設置を、本気で考えているんだけどね。なぜ、「法務省外局」なんて話になってしまったのか。
――人権擁護法案は「受刑者の人権」という観点から、それほど論じられていませんね。
一般社会での差別問題も、もちろん大事です。だが、身柄拘束され、行き過ぎた懲罰で障害を負わされる者のことも考えてほしい。どんな悪いことをした者にも人権はある。私が受刑者にこだわるのは、刑務所の人権のありようが、その社会の人権レベルに波及するからです。
きくた・こういち 弁護士。1934年、滋賀県生まれ。明治大大学院修了。ことし3月まで明治大教授(犯罪学、刑事法学)。名古屋刑務所の受刑者死傷事件後に発足した法相の私的諮問機関「行刑改革会議」委員を経て、現在「行刑改革推進委員会顧問会議」メンバー。著書に「日本の刑務所」など。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20050407/mng_____kakushin000.shtml
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