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【社説】2005年04月06日(水曜日)付
「つくる会」 こんな教科書でいいのか
中学生が来年度から使う教科書の検定が終わった。「新しい歴史教科書をつくる会」が主導した歴史と公民の教科書も修正をしたうえで、合格した。
「つくる会」の教科書が初めて登場したのは4年前の検定だった。今回は2度目の検定にあたる。
歴史教科書では、日本武尊(やまとたけるのみこと)の神話に2ページを割いていたが、今回はなくなった。特攻隊員の遺書も消えた。全文を載せていた教育勅語も一部の要約になった。
しかし、天皇の重視は変わらない。実在するかどうかわからない神武天皇の東征が1ページも書かれている。
何よりも問題なのは、光と影のある近現代史を日本に都合よく見ようとする歴史観が貫かれていることだ。
今回、「アジアの人々を奮い立たせた日本の行動」「日本を解放軍としてむかえたインドネシアの人々」という囲み記事が新たに登場した。日本が占領した地域の代表者らを集めた「大東亜会議」もくわしく説明している。
一方で、中国への侵略、朝鮮半島の植民地支配については後ろ向きだ。沖縄戦についても、ひめゆり部隊や集団自決などの悲劇には一言も触れていない。
検定で修正されたものの、当初、満州国は関東軍だけでなく「現地人政治家」も加わって建国された、となっていた。韓国併合についても、一部に併合を受け入れる声もあった、と書かれていた。検定意見を受けて修正された個所は、近代以降の近隣諸国との関係を中心に、124カ所にのぼった。
「つくる会」の会報は今回の歴史教科書の申請本について「旧敵国のプロパガンダから全く自由に書かれている教科書」と自賛している。しかし、アジアの人々に強いた犠牲を「プロパガンダ(宣伝)」で片づけることはできない。
日本を大切に思うなら、他国の人が自分の国を大切にする心にも敬意を抱くべきだ。そうであってこそ、周りの国と互いに理解を深めることができる。
「つくる会」の歴史教科書は、そのバランスを欠いている。4年前、朝日新聞は社説で、教室で使うにはふさわしくないと主張した。今回も同じことを言わざるをえない。
検定についても指摘しておきたい。
竹島について、「つくる会」の公民教科書は当初、「韓国とわが国で領有権をめぐって対立している」と書いていた。それが検定の結果、「韓国が不法占拠している」に修正された。
政府見解の通りにしなければ合格しないからだが、検定でそこまで求める必要があるのだろうか。これでは、国定教科書と差がなくなる。
「検閲」ではなく、事実や通説との違いを直す役割に徹する。検定は、本来そうしたものであるべきだ。
重要なのは、どの教科書で学ぶかである。保護者や教師も目を凝らし、国際社会を生きる子どもにふさわしい教科書をそれぞれの地域で選んでほしい。
http://www.asahi.com/paper/editorial20050406.html
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